【福祉LTV論(顧客)第1回】「集客」を止めてください。定着率(LTV)1.5倍の「穴のないバケツ」を作る、科学的優しさの話。
バケツの穴に気づいていますか?
前回の記事で「インテーク成約率66%」という数字を出しました。
実は、経営においてインテークよりも重要な数字があります。
それは「LTV(顧客生涯価値)」です。私の事業所は、業界平均と比較して約1.5倍のLTV(定着期間)を維持しています。
なぜ、この数字が重要なのか。 それは、いくらインテークで人を集めても、定着しなければそれは「穴の空いたバケツに水を注ぐ作業」でしかないからです。
福祉業界ではよく「集客」が叫ばれますが、私はあえて言います。 穴を塞ぐ前に、集客をしてはいけません。 なぜなら、準備不足の事業所に勧誘され、早期離脱することは、利用者にとって「失敗体験」という深い傷を残すからです。
今日は、私が実践している「辞めない環境設定(科学的な優しさ)」についてお話しします。
第1章:精神論で引き止めるな。「構造」で守れ
利用者が「辞めたい」と言い出した時、多くの支援員はこう言います。 「一緒に頑張りましょう」「寂しいです」
これは「感情」による引き止めです。しかし、効果は一時的です。私が推奨するのは、「構造」による定着です。
私の事業所では、利用者が「辞めたい」と思うトリガー(不安要素)を、最初のインテークの段階で徹底的に排除します。これを「初期設定の深さ」と呼んでいます。
• 役所の手続きへの不安
• 通所ルートの物理的なしんどさ
• 「もし失敗したら」という予期不安
これらを「頑張りましょう」で片付けるのではなく、代理代行や環境調整によって、物理的に取り除きます。 精神論ではなく、物理的な障害物を取り除くこと。これを福祉の専門用語で「ソーシャルアクション(環境調整)」と言いますが、私はこれを「愛」だと解釈しています。
第2章:依存は悪ではない。「安全な依存」を作れ
「自立支援」という言葉を、「誰にも頼らず一人で立つこと」だと誤解していませんか? 科学的には逆です。 「安心して依存できる先を増やすこと」こそが、自立の基盤です。
私の事業所がLTV1.5倍(自社従来比)を叩き出せる理由は、徹底して「制度の番人」として振る舞うからです。 複雑な障害福祉制度や申請手続きを、プロとして完璧にサポートする。 すると、利用者はこう感じます。 「ここを辞めたら、またあの面倒な手続きを一人でやらなければならない。ここにいれば安心だ」
これは悪い依存ではありません。「心理的安全性」に基づいた信頼関係(ラポール)です。 この「命綱」としての信頼があるからこそ、彼らは安心して訓練に没頭でき、結果として長く定着するのです。
第3章:赤字は「裏切り」である
少し厳しい話をします。 「うちは利用者が少ないけれど、一人ひとりに寄り添っているからいいんだ」という経営者や管理者がいます。
私は、それは違うと思います。 利用者が少ない(赤字である)ということは、明日、その事業所が潰れるリスクがあるということです。 慣れ親しんだ場所がある日突然なくなること。 それが、利用者にとってどれほどの恐怖か想像できているでしょうか?
赤字は、利用者への最大の裏切りです。
私は冷徹に数字を追います。集客し、定着させ、利益を出します。 それは、私腹を肥やすためではありません。 「この安全基地を、絶対に潰さない」 その責任を果たすための、経営者としての公正さ(Fairness)への渇望です。
結び:優しさとは「予後」を設計すること
インテークで66%を成約させる「攻め」の技術。 LTVを1.5倍にする「守り」の技術。
この2つはセットです。 車で言えば、強力なエンジン(集客)と、頑丈な車体(定着)の両方が揃って初めて、利用者を遠くの目的地(就労)まで運ぶことができます。
「優しさ」を、感情論で語るのは終わりにしませんか。 本当の優しさとは、利用者が転ばないように、論理と科学で先回りして石ころを退けておくこと。 つまり、「予後を設計すること」です。
私のnoteでは、こうした「感情論抜きの福祉経営」について、実証データに基づいたノウハウを公開していきます。 次回の記事では、具体的な「インテークの技術」に踏み込みたいと思います。
(執筆者紹介)
Welfare Growth Architect(福祉事業成長設計士)
• 経歴: 精神保健福祉士・社会福祉士。元・理系専門商社営業(13年)× 現・福祉系企業本部管理職。
• 実績: インテーク成約率 66%(業界平均の2〜3倍)、LTV(定着率)1.5倍。開設5ヶ月で満員を実現。
• Style: 「マニュアルを作らない」を信条とし、臨床的対話と科学的営業を融合させた独自の支援を行う。Neuro-Strategic Advisorとして、個と組織の「真の生存戦略」を設計する。
Xでも日々役に立つ発信を行っています。よろしければフォローいただければ嬉しいです。👇
