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🌟 なぜアート・オブ・ノイズ『Who's Afraid of the Art of Noise?』はUKロック史に残る名盤なのか? 🌟

🎧 まずはこの一曲!『Who's Afraid of the Art of Noise?』を象徴する、サンプリングが音楽になった瞬間 🎧

このアルバムを象徴する一曲は「Close (to the Edit)」です。車のエンジンがかからない音、電動ノコギリの唸り、切り刻まれた人の声、そして強靭なベースライン。楽器の演奏というより、身のまわりの物音を切り貼りして組み上げられたこの曲は、1984年当時としてはあまりに異様で、あまりに刺激的でした。しかもそれが、頭で理解する前に体が動いてしまうダンス・トラックとして成立している。ここには、20世紀初頭の未来派やミュージック・コンクレートの精神と、最新のサンプラーが持つ可能性が、まったく無理なく同居しています。ピアノを破壊する少女が登場するミュージック・ビデオも含めて、当時の音楽の常識を鮮やかに更新した一曲です。サンプリングという手法が“実験”から“ポップ”へと踏み出した瞬間が、ここに記録されています。


「Close (to the Edit)」


アート・オブ・ノイズとは?:スタジオそのものを楽器にした、顔の見えない集団


アート・オブ・ノイズ(Art of Noise)は、1983年にZTTレコードの制作現場から生まれた英国のグループです。メンバーは、キーボードと編曲を担うアン・ダドリー、フェアライトCMIというサンプラーを操るプログラマーのJ.J.ジェザリック、エンジニアのゲイリー・ラングラン、プロデューサーのトレヴァー・ホーン、そしてコンセプトと言葉を担当した音楽ジャーナリストのポール・モーリー。前回取り上げたフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドと同じZTTの所属で、実はこのアート・オブ・ノイズこそが、ZTT第1号のアーティストでした。グループ名は、イタリア未来派の芸術家ルイジ・ルッソロが1913年に著した宣言『騒音芸術』に由来します。日常の騒音こそが新しい音楽なのだ、というその思想を、彼らは70年後のサンプリング技術によって現実のものにしました。顔を出さず、メンバーの個性を前面に出さず、あくまで“スタジオという装置”そのものを主役にする。1984年6月にZTTから発表された本作『Who's Afraid of the Art of Noise?』は、その姿勢が最も鮮烈に結実したデビュー・アルバムです。


1. フェアライトが切り開いた、音の切り貼りという方法


本作の中心にあるのは、当時最先端のサンプラー、フェアライトCMIです。あらゆる音を録り込み、鍵盤で自在に操れるこの機械を、J.J.ジェザリックは楽器としてではなく、素材を刻むための道具として使いました。オーケストラの一撃、人の吐息、工事現場の物音、テレビの断片。それらが等価に並べられ、リズムとして組み直されていきます。そこにアン・ダドリーのクラシックの素養に裏打ちされた旋律と和声が乗ることで、単なる実験ではなく、美しい音楽として立ち上がるのです。ポール・モーリーによる、あえて意味をずらしていくような言葉遊びとパッケージも含め、このアルバムは“音楽とは何か”を問う仕掛けそのものでした。ちなみに、ジャケットや内袋に印刷された曲順が実際の収録順と食い違っているという逸話もあり、そんなところにも彼らの人を食った姿勢が表れています。


2. 実験でありながら、確かに踊れて、確かに美しい


このアルバムが今も愛されている理由は、前衛的な手法を使いながら、聴き手を突き放さないところにあります。冒頭の「A Time for Fear (Who's Afraid)」は、重々しいビートと不穏なシンセの層で、いきなり異世界の扉を開きます。「Beat Box (Diversion One)」は、ミニマルでありながら圧倒的な迫力を持つビートの塊で、この曲のドラム・サウンドは後のヒップホップやダンス・ミュージックの作り手たちに深い影響を与えました。そして「Moments In Love」。10分にわたって漂う、この上なく美しいシンセのまどろみは、アン・ダドリーの最良の仕事のひとつであり、後年アンビエントやチルアウトの古典として広く親しまれることになります。破壊と美しさ、騒音と旋律。その振れ幅の大きさこそが、このアルバムの魅力です。


3. アルバム内の主要楽曲紹介


  • 「A Time for Fear (Who's Afraid)」 アルバムの冒頭を飾る楽曲。重厚なビートと不穏な電子音の層が、聴き手をいきなり緊張感のある空間へ引きずり込みます。

  • 「Beat Box (Diversion One)」 グループの最初のシングル曲を本作用に再構成したもの。切れ味鋭いビートの組み立てだけで最後まで聴かせてしまう、ミニマルにして最大級のダンス・トラックです。

  • 「Moments In Love」 10分を超える、夢のように美しいシンセの叙情詩。1985年にシングルとしても発表され、アート・オブ・ノイズのもうひとつの顔——静謐で優美な側面を代表する名曲となりました。


結論


『Who's Afraid of the Art of Noise?』は、音楽の作り方そのものを書き換えたアルバムです。演奏することではなく、音を選び、切り、並べ直すこと。その手法は、当時こそ奇異に映ったかもしれませんが、いまや当たり前の音楽制作の風景になりました。前回のフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドが、ZTTの過剰なポップの祝祭だったとすれば、こちらは同じレーベルの、より実験的で理知的な顔です。しかも面白いのは、その実験がきちんと快感として届くこと。踊れて、美しくて、なおかつ挑発的。ルッソロが夢見た“騒音の芸術”は、1984年のロンドンで、確かにポップ・ミュージックとして実現しました。『Who's Afraid of the Art of Noise?』は、サンプリング時代の幕開けを告げた、記念碑的な名盤です。


本記事で紹介したアルバム

アーティスト名:アート・オブ・ノイズ(Art of Noise) /アルバム名: Who's Afraid of the Art of Noise?

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