【第22回】ビジネス書との出会い:「シズル」を売れ。100年読み継がれるセールスの原点
この**【ビジネス書との出会い】**シリーズでは、私が出会い、人生やビジネスの視点を変えるきっかけとなったビジネス書を、毎回1冊ずつレビュー形式でご紹介していきます。
書籍と著者
本日ご紹介する書籍は、伝説のセールスマン、エルマー・ホイラー氏による『ステーキを売るなシズルを売れ --ホイラーの公式』です。
導入:あなたの「ステーキ」を売ろうとしていないか?
「マーケティングの例え話で、なぜか“ステーキ”がよく出てくる」 そう思ったことはありませんか?
その影響力の源泉こそが、1937年に出版されたこの本です。
前回まで、私たちは行動経済学で「人は理屈(システム2)ではなく、直感(システム1)で動く」という現代の理論を学びました。
エルマー・ホイラーは、その理論が生まれる何十年も前に、10万5000回以上のセールストークをテストし、「売れる言葉」と「売れない言葉」を科学しました。
そして、彼が導き出した「売れる言葉」の法則こそが、この有名なタイトル「ステーキを売るな、シズルを売れ」なのです。
本書の核:「ステーキ」ではなく「シズル」を売るとは?
この有名な言葉の意味は、セールスとマーケティングのすべてを表しています。
ステーキ = 商品そのもの、特徴、スペック(WHAT)
例:「このステーキは200gのサーロインです」
シズル = 顧客が五感で感じる「体験」や「期待感」(HOW, WHY)
例:「鉄板の上で**ジュージュー(=シズル)**と音を立て、香ばしい匂いを漂わせる、熱々のステーキです」
お客様は、「200gの肉(モノ)」が欲しいのではありません。 その肉がもたらす「美味しそうな音と匂い、熱々の体験(=シズル)」、そして「それを食べて満足する自分(ベネフィット)」にお金を払うのです。
これは、シュガーマンが説いた「コンセプト」であり、ホイットマンが説いた「感情」であり、行動経済学が解明した「直感(システム1)への訴えかけ」そのものです。
実践:ホイラーの「5つの公式」
この本がすごいのは、単なる精神論ではなく、テストに基づいた「売るための公式」を明確に示している点です。その中でも特に重要な2つをご紹介します。
第1の公式:「ステーキを売るな、シズルを売れ」
原則: あなたのセールストーク(あるいはnoteの見出し)は、「シズル」から始まっているか?
教え: 商品の説明(ステーキ)から入ってはいけません。顧客の五感と感情を刺激する「シズル」を、真っ先に提示しなくてはなりません。
第2の公式:「手紙を書くな、電報を打て」
原則: 簡潔に、核心を突け。
教え: 1937年当時の表現ですが、意味は「ダラダラ書くな」です。顧客は忙しい。あなたの言葉が**最初の10秒(最初の10語)**でシズルを伝え、興味を引けなければ、そのセールスは負けです。
応用: これは、ケープルズが説いた「見出しの重要性」と全く同じです。
まとめ
『ステーキを売るなシズルを売れ』は、1937年に書かれたとは思えないほど現代的であり、マーケティングの「ベネフィットを語れ」という教えの、まさに原点です。
私たちが行動経済学(理論)で学んだ「人は感情で買う」という事実を、ホイラーは「シズル」という言葉で、何十年も前に**「実践」**から導き出していました。
あなたの文章は、「ステーキ(商品の特徴)」ばかりを説明していませんか? 読者の五感を刺激する「シズル(体験)」を語れているか?
この視点を持つだけで、あなたの言葉は「売る力」を持ち始めます。
▼ 合わせて読みたい(過去の連載より)
『ステーキを売るなシズルを売れ』で学んだ「商品のスペック(事実)ではなく、感情と体験(シズル)を売る」という原則を、具体的な文章術や営業トークへと落とし込むための必読リストです。
【第3回】『ザ・コピーライティング――心の琴線にふれる言葉の法則』 [選定理由:電報(見出し)の技術] ホイラーの第2の公式「手紙を書くな、電報を打て」を、広告コピーの分野で極限まで体系化したのが本作の著者ジョン・ケープルズです。顧客の目を最初の数秒で釘付けにする「見出し(電報)」の作り方を、膨大なテスト結果から導き出しています。
【第4回】『現代広告の心理技術101――お客が買わずにいられなくなる心のカラクリとは』 [選定理由:感情(シズル)の解剖] なぜ「ジュージューという音(シズル)」が人の財布の紐を緩めるのか。人間が根源的に持っている欲求や恐怖(生命の8つの躍動)を解き明かし、顧客の感情に直接語りかける「シズルの作り方」を心理学の側面から徹底解剖した一冊です。
【第1回】『全米NO.1のセールス・ライターが教える 10倍売る人の文章術』 [選定理由:コンセプトを売る] 記事内でも触れた通り、シュガーマンが提唱する「商品を売るな、コンセプトを売れ」という教えは、まさに「ステーキではなくシズルを売れ」と同義です。ただのモノを、顧客が喉から手が出るほど欲しい「体験」へと変換するセールスライティングの基礎が学べます。
【第140回】『ずばり、どう言えばいいのか あなたの会話力を向上させる「魔法の言葉」』 [選定理由:検証されたセールストーク] ホイラーが10万回以上のテストから「売れる言葉の公式」を導き出したように、現代の営業現場において「どう言えば、相手の抵抗をなくし、イエスを引き出せるか」を具体的なフレーズ(魔法の言葉)としてまとめた超実践的なトークスクリプト集です。
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