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#24|君との夏 (五七五七七)


戻りたい  夢見て逃げた  青い夏
同じ未来は  歩めなくても





元彼の歌です。
皆さんは戻りたい時ってありますか?



元彼と出会ったのは大学5年生の実習中でした。
(6年制の大学に通っていました。)
実習のお疲れさま会の後に意気投合し、仲良くなりました。
ちゃんと付き合おうと言われたことはなく、お互いになんとなく好きで、居心地がよくて、いつの間にか体を許していました。
しばらくして私達ってそう言う関係だよね…?みたいな感じで関係が始まりでした。
7月でした。


彼と出会ってからの毎日は本当に楽しく、特に夏はとても楽しくなって幸せでした。
昔から自分の誕生日がある夏はあまり好きではなく、暑いし、それに大学生の夏休みは長く退屈で、嫌でした。
(再試があると地獄ですが)


特に彼は、1人しか知らない私に、誰かと何かをやる楽しさを教えてくれました。
一つは勉強、二つは料理、他にもあったと思いますが忘れてしまいました。


付き合いはじめて、彼の事いろいろ聞くうちに、私は彼の苦悩を知る事になりした。


彼の母親はいわゆる毒親というやつでした。
しかもお金持ち、権力もそれなりにあり、細かく書くと簡単に特定出来てしまうので書けませんが、彼を常に所有物扱いしていました。


幼い頃から勉強や音楽をやらされていたようですが、彼自身自は音楽が好きで嬉しかったようです。幼いながらに作曲もしていたようです。しかし、才能があると認められて音楽の道を目指してみないかとスカウトをされた瞬間、母親は彼に音楽を辞めさせました。


音楽をやっても将来仕方がない、と。


彼が好きだったエレクトーンは、彼の実家で、いらない紙や本、荷物を置くテーブルのようになっていました。
彼のエレクトーンを一度でも良いから聴いてみたかった。

音楽を辞めさせられてからの彼は塾漬けだったようです。
塾は3ヶ所?くらい掛け持ちしていたようで、放課後は友達と遊べず、塾の先生が友達のようなものだったそうです。


母親の言う事を聞かなければ、怒られ、責められ。
人格を否定する言葉を投げつけられ、暴れ出し、最終的に警察沙汰にして、彼をコントロールしたのです。


友達から借りた漫画が母親に見つかってしまった時は、窓から投げ捨てられたそうです。
新品を買って返したと言っていましたが、彼はどんな気持ちで友達に返したのでしょうか。

ちなみに私の服も、彼の母親に捨てられた事があります。またすぐ来るからと、彼の家にワンピースを置いて自宅に帰ってしまったのです。
お気に入りのワンピースだったことを彼も知っていたので、彼は何度も謝りました。彼のせいではないのに。
同じもの売ってないかな?なければ新しいもの買いに行こう、と言ってくれました。
彼の焦りと申し訳なさそうな顔と、母親への怒りすらわかない何もかも諦め切ったその顔が、全てを物語っていました。
私のワンピースが見つかって、母親にいろいろと責められただろうに。


母親の買い物にも付き合わされ、荷物持ち、運転。
そのために前から約束していた私とのデートもおあずけ。
デート中に呼び出されてバイバイしたことも何度もありました。
デートの待ち合わせに時間通りに来られた時なんてほとんどありません。
彼に会えるかどうかは母親次第なのです。


毒親なら縁を切ってしまえばいいとか、毒親と言えど親だろとか、甘い言葉や、綺麗事を言う人がいますが、現実的に無理なのです。



だから私たちは逃げました。嫌な事から逃げられる範囲で。
お互いに研究室も居心地が悪く浮いていたので、セミナーと卒業研究以外は研究室にも行かず遊び回りました。


今までの自分たちを取り戻すように。
今まで出来なかったことをやろうと。
私と会っている間だけは、親のことを忘れて楽しい時間を彼には過ごして欲しいと、思ったのです。





私は今までの人生で、戻りたい時なんてありませんでした。
戻ってまで体験したい楽しい嬉しい出来事なんてなかったからです。

今、過去に戻れるならいつに戻りたい?と聞かれたら、私は迷わず、あの頃の彼との夏、と答えるでしょう。

それほどに彼が好きでしたし、生きてて良かったと初めて思えた瞬間があったからです。




毒親ですし、私の家はお金持ちでもなんでもないので、結婚なんて出来るわけない事も最初から分かっていました。
それでも好きでした。
彼が親の決めた女性と結婚する事になっても、私はそれで良いのです。


彼の実家は大きな地主で、母親の実家も相当な大地主なので、ひとりっ子の彼がこれから背負って歩んでいくものの大きさを、私は想像できません。
あの頃の私は何も分かっていないバカな子供だったので、一緒に背負ってあげたいとさえ思っていました。

私はただ無力だというのに。



そんな彼とも9年目になる前くらいから、自然消滅状態です。
私のこの約9年間は無力なままで終わったのでしょうか。
私の役割はもう終わったのでしょうか。
そもそも彼を癒したい、少しでも彼が楽しい時間を過ごせたら、なんて思ってしまった事が、おこがましく、間違いだったのでしょうか。



いずれにしても、もう私の中で彼はもう過去の人になりつつあります。
少しずつ折り合いをつけて、前に進めたらと思います。



最後まで読んでくださりありがとうございました🧸

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