リハビリはいつまで?終了前に確認したい5つのこと
「リハビリは、いつまで続けられるのだろう」
「終了すると、もう支援を受けられないのだろうか」
リハビリの終了や回数の変更について説明を受けると、ご本人だけでなく、ご家族も不安を感じることがあります。
自宅で安全に生活できるのか
今までの運動を一人で続けられるのか
状態が変わったとき、誰に相談すればよいのか
家族だけで介助を続けられるのか
リハビリの終了時期は、すべての人が一律に同じ時期で決まるわけではありません。
制度上の期間や利用条件が関係する場合はありますが、病気やけがの状態、本人が望む生活、家族の状況、自宅環境なども含めて考える必要があります。
そして、リハビリの卒業は、支援がすべてなくなることではありません。
大切なのは、リハビリで身につけたことを、これからの生活へつなげることです。
この記事では、リハビリの終了前に本人・家族・支援者で確認しておきたい5つのことを、理学療法士の視点から解説します。
ここでいう「支援者」とは、医師やリハビリ専門職、ケアマネジャーなど、医療・介護に関わる担当者を指します。
リハビリを続けること自体が目的ではありません
リハビリでは、筋力や関節の動きを改善することだけを目指しているわけではありません。
その先にある、
自宅の中を安全に移動する
一人で着替える
買い物へ行く
家族と外出する
趣味や地域活動を再開する
といった、その人が望む生活を目指します。
WHOの国際生活機能分類(ICF)では、人の生活機能を「心身機能・身体構造」だけでなく、「活動」「参加」や環境因子を含めて捉えます[1]。
また、WHOはリハビリテーションについて、日常生活での自立や、その人にとって意味のある役割への参加を支えるものと説明しています[2]。
そのため、リハビリを続けること自体が最終的な目的ではありません。
練習によって身につけた動作や工夫を、実際の生活の中で使えるようにすることが重要です。
厚生労働省の2015年の報告書でも、身体機能だけに偏らず、本人の希望に基づく目標を設定し、「活動」や「参加」を含めて生活機能全体を見る方向性が示されています[3]。
状態や目標によっては、完全に終了するだけでなく、
リハビリの回数を減らす
自宅での取り組みを中心にする
通いの場や地域活動へ移行する
必要な支援だけを残す
別の相談先や支援方法につなぐ
という選択肢もあります。
「継続するか、終了するか」という二択ではなく、今後の生活に合わせて支援の形を考えることが大切です。

リハビリの終了後も生活は続きます
リハビリを終了したからといって、それまで取り組んできたことをすべてやめるわけではありません。
自分で続けられる運動や生活動作は、無理のない範囲で日常生活の中へ取り入れていきます。
また、状態や生活に変化があったときは、状況に応じて、
医療機関
ケアマネジャー
地域包括支援センター
介護サービスの担当者
地域の相談窓口
などへ相談できます。
適切な相談先は、病気や生活環境、利用している制度によって異なります。
終了してから慌てるのではなく、終了前に「困ったときは誰へ相談するのか」を確認しておくことが重要です。
個別の状況に合わせて、終了後の生活や支援を事前に整理する考え方は、病院からの退院計画に関する研究でも重視されています[5]。
ただし、この研究は主に病院からの退院を対象にしており、すべてのリハビリ終了場面へそのまま当てはまるものではありません。
終了の時期は人によって異なります
リハビリの終了や変更を考える時期は、次のような要素によって変わります。
病気やけがの状態
リハビリの目標
身体機能や生活動作の変化
本人の希望
家族の状況
自宅や地域の環境
利用している医療・介護制度
医師やリハビリ専門職などの評価
身体機能が改善していても、自宅での生活に不安が残る場合があります。
反対に、痛みや動きにくさが少し残っていても、自分で対処しながら生活できる方もいます。
そのため、期間や検査の数値だけで判断するのではなく、終了後の生活を具体的に想像しながら考える必要があります。
医療保険・介護保険上の期間や回数、終了後に利用できる支援は、病気や利用中のサービス、個別の状況によって異なります。
詳しい制度上の扱いは、現在の担当者へ確認してください。
リハビリ終了前に確認したい5つのこと
リハビリの終了や回数の変更を考えるときは、ご本人だけで判断するのではなく、ご家族や支援者も含めて話し合うことが大切です。
リハビリテーションの目標設定では、支援者が一方的に決めるのではなく、本人の希望を共有して一緒に考えることの重要性が報告されています[4]。
特に、次の5つを確認しておきましょう。

1.望んでいた生活に近づいているか
まず確認したいのは、リハビリを始めたときに望んでいた生活へ近づいているかです。
例えば、
一人でトイレへ行きたい
家の中を安全に歩きたい
買い物へ行きたい
家族と外食したい
趣味を再開したい
など、目標は人によって異なります。
筋力や歩行速度などの数値が改善していても、本人が望んでいた生活につながっていなければ、目標を改めて確認する必要があります。
一方で、病気の状態や生活環境が変わり、最初に設定した目標が現在の生活に合わなくなることもあります。
その場合は、今の本人にとって大切な生活を考え直しても構いません。
確認したいのは、単に「身体が良くなったか」ではなく、
今の自分が望む生活に、どの程度近づいているか
という点です。
2.自宅で無理なく続けられることがあるか
リハビリ中に行えていた運動でも、自宅では続けにくいことがあります。
必要な道具がない
やり方を忘れてしまう
運動の種類や回数が多すぎる
痛みが出たときの判断が難しい
一人で行うことに不安がある
こうした状態で「毎日続けてください」と伝えるだけでは、継続は難しくなります。
終了前には、次の点を具体的に整理しておきましょう。
何を続けるのか
どのくらい行うのか
生活のどこへ取り入れるのか
どのような状態なら休むのか
困ったときは誰へ確認するのか
特別な運動だけが、身体を動かす方法ではありません。
家の中を歩く
自分で着替える
家事の一部を行う
定期的に外出する
趣味や地域活動へ参加する
といった日常生活そのものが、身体を動かす機会になります。
たくさんの運動を課すよりも、本人の生活に合った方法を無理なく続けられることが重要です。
3.本人と家族が安心して生活できるか
本人が動作をできるかどうかだけでは、終了後の生活を十分に判断できません。
実際の生活では、次のような点も確認する必要があります。
自宅内に転倒しやすい場所がないか
夜間も安全に移動できるか
入浴や階段に不安がないか
必要な介助方法を家族が理解しているか
家族が無理を続けていないか
本人が「自分でできる」と思っていても、家族は転倒や体調変化を心配していることがあります。
反対に、本人が不安を感じていても、動作方法を工夫したり、生活環境を整えたりすることで、安全に行える場合もあります。
本人と家族の認識が異なるときは、どちらかの意見を否定するのではなく、それぞれが感じている不安を共有することが大切です。

家族の負担も大切な確認項目です
家族については、介助できるかどうかだけでなく、
身体的な負担が大きくないか
疲れや不安を抱えていないか
一人で頑張りすぎていないか
困りごとを相談できているか
も確認したいポイントです。
家族が「自分がやらなければ」と抱え込むと、介助する側も、介助を受ける側も無理を続けることになります。
家族の困りごとや負担は、家族だけで解決しなければならない問題ではありません。
介助方法を見直す
家具の配置や動線を整える
福祉用具を検討する
本人が自分で行える方法を増やす
必要に応じて地域の相談先やサービスを検討する
ことで、負担を減らせる可能性があります。
高齢者の退院計画を扱った研究では、家族を計画段階から含めることの意義が示されています[6]。
ただし、この研究も病院などから地域へ移行する高齢者が中心であり、すべてのリハビリ終了場面における効果を直接示したものではありません。
本人の自立と家族の安心は、どちらか一方だけを優先するものではありません。
本人と家族の両方が、無理なく生活を続けられる方法を考えることが大切です。
4.困ったときの相談先が決まっているか
終了後に体調や生活が変化したとき、どこへ相談すればよいか分からないと、不安を抱えたまま過ごすことになります。
終了前には、例えば次のような変化が起こったときに、誰へ相談するのかを確認しておきましょう。
痛みが強くなった
転倒した
以前より歩きにくくなった
必要な介助が増えた
外出する機会が減った
家族の負担が大きくなった
相談先は一つとは限りません。
症状や治療については医療機関、介護サービスについてはケアマネジャー、地域生活については地域包括支援センターなど、困りごとによって相談先が変わることもあります。
大切なのは、すべてを本人や家族だけで判断しようとしないことです。
また、明らかに悪くなってからだけでなく、
最近、外出が減ってきた
少し歩きにくくなった
介助が大変になってきた
という小さな変化の段階で相談することも大切です。
急な体調変化や強い痛み、転倒によるけがなどがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。
5.終了後の方針を共有できているか
最後に、終了後に何を続けるのかを、本人・家族・支援者で共有します。
例えば、
自宅で続ける運動や生活動作
日常生活で意識すること
外出や地域活動の予定
家族が見守る場面
相談する目安と相談先
状態が変わったときの対応
今後検討する可能性のある支援
などです。
支援者が一方的に方針を決めるのではなく、本人の希望や家族の状況を確認しながら考えることが大切です[4]。
本人は「できるだけ自分で続けたい」と考え、家族は「安全のために支援を増やしたい」と考える場合もあります。
意見が異なること自体は問題ではありません。
それぞれの希望や不安を言葉にし、終了後の生活について共通の見通しを持つことが重要です。
終了後の生活を具体的に考えておく
リハビリの終了前には、運動方法だけでなく、終了後の生活全体を確認しておきます。
主に整理したいのは、次の3つです。
自宅で続けること
日常生活や運動の中から、本人が無理なく続けられることを選びます。
すべてを完璧に行う必要はありません。
毎日の生活の中で自然に続けられる方法を考えましょう。
困ったときの相談先
体調や生活に変化があったとき、誰へ相談するのかを確認します。
本人と家族が、相談先の名称や連絡方法を分かる状態にしておくことが大切です。
必要に応じた支援
身体の状態や生活環境が変われば、必要な支援も変化します。
終了後も、状態や生活の変化に応じて、医療機関や地域の相談窓口へ相談できます。
その時の状況に合わせて、必要な支援方法を改めて検討します。

「まだ不安がある」と伝えても構いません
終了や回数変更の話が出たときに、不安を感じるのは自然なことです。
「終了と言われたから、何も言えない」
「迷惑をかけたくないので、不安を我慢しよう」
と考える必要はありません。
自宅で本当に続けられるか不安
家族の介助が大変
転倒が心配
相談先が分からない
もう少し確認したい生活動作がある
といった気持ちは、終了前に支援者へ伝えてください。
ただし、不安があるから必ずリハビリを継続する、ということでもありません。
不安の内容を具体的に整理することで、
動作方法をもう一度確認する
自宅環境を調整する
家族へ介助方法を説明する
自宅で行う内容を絞る
相談先を明確にする
別の支援方法を検討する
といった対応が考えられます。
「継続か終了か」だけでなく、不安を減らす方法を一緒に探すことが大切です。
リハビリの卒業は、次の生活への一歩
リハビリの成果は、訓練室の中だけで完結するものではありません。
自宅での生活や外出、家族との時間、趣味や地域での活動につながってこそ、その人にとって意味のあるものになります[1][2]。
終了後は、
できることを生活の中で続ける
困ったときには相談する
必要に応じて支援につながる
という準備が大切です。
終了前に、本人・家族・支援者で今後の生活を確認し、安心して生活を続ける方法を一緒に考えておきましょう。

まとめ
リハビリの終了前には、次の5つを確認しましょう。
望んでいた生活に近づいているか
自宅で無理なく続けられることがあるか
本人と家族が安心して生活できるか
困ったときの相談先が決まっているか
終了後の方針を共有できているか
終了の判断は、期間や身体機能だけで決めるものではありません。
本人が望む生活、家族の負担、自宅の環境、相談先、終了後の過ごし方まで含めて考える必要があります。
リハビリで身につけたことを、その人らしい生活へつなげていく。
そのための準備をすることが、終了前の大切な役割です。
自宅での生活に不安が残る方へ
リハビリの終了や回数の変更後も、
自宅で安全に動けるか確認したい
転倒しやすい場所がないか見てほしい
家族の介助方法を見直したい
外出や日常生活の動作に不安がある
自宅で続ける運動や動作を整理したい
という不安が残ることがあります。
私は理学療法士としてご自宅へ伺い、実際の生活環境や動作を確認する、**「理学療法士による自宅動作サポート」**を行っています。
対象としているのは、主に次のような方です。
退院後の自宅生活に不安がある方
訪問リハや通所リハが終了、または減った後に不安がある方
転倒・介助・外出に不安があるご本人やご家族
自宅動作サポート3回プラン
1回目|自宅環境と生活動作の確認
自宅内の移動、立ち上がり、階段、入浴、外出など、現在困っている生活動作と自宅環境を確認します。
2回目|動作練習と環境調整
ご本人に合った動作方法を一緒に練習します。
必要に応じて、家具の配置や生活動線、福祉用具、家族の介助方法についても助言します。
3回目|再確認と今後の方針
動作や生活の変化を再確認し、自宅で続けることや、今後の方針を整理します。
ご家族への助言や、必要に応じた地域の相談先・支援方法についても一緒に考えます。
このサービスは、医療保険・介護保険を使用しない自費サービスです。
すべての方に自費サービスが必要なわけではありません。
まずは現在の担当者やケアマネジャー、地域包括支援センターなどへ相談することも大切です。
そのうえで、
実際の自宅環境を見てほしい
生活の中で困っている動作を確認してほしい
本人と家族に合った方法を一緒に考えてほしい
という方は、サービス内容をご覧ください。
料金や対象地域などの詳細は、サービスページでご確認いただけます。
▶ 理学療法士による自宅動作サポートの詳細はこちら
ご本人だけでなく、ご家族からの相談にも対応しています。
※急な体調変化、強い痛み、転倒によるけがなどがある場合は、本サービスの利用を検討する前に、まず医療機関へご相談ください。
参考文献
[1]World Health Organization. International Classification of Functioning, Disability and Health: ICF. Geneva: World Health Organization; 2001.
https://iris.who.int/items/ffa4b5b5-378c-46a1-acdc-7ef20506a3f8
[2]World Health Organization. Rehabilitation. Fact sheet; 2024.
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/rehabilitation
[3]厚生労働省.高齢者の地域における新たなリハビリテーションの在り方検討会報告書.2015.
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000081900.pdf
[4]Rose A, Rosewilliam S, Soundy A. Shared decision making within goal setting in rehabilitation settings: A systematic review. Patient Education and Counseling. 2017;100(1):65–75.
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0738399116303251
[5]Gonçalves-Bradley DC, Lannin NA, Clemson L, Cameron ID, Shepperd S. Discharge planning from hospital. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2022;(2):CD000313.
https://www.cochrane.org/evidence/CD000313_discharge-planning-hospital
[6]Rodakowski J, Rocco PB, Ortiz M, et al. Caregiver Integration During Discharge Planning for Older Adults to Reduce Resource Use: A Meta-Analysis. Journal of the American Geriatrics Society. 2017;65(8):1748–1755.
https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jgs.14873
参考文献について
[3]は、生活期リハビリテーションの方向性を整理した2015年の報告書です。現在の医療保険・介護保険制度における終了基準や利用条件を示すものではありません。
[5][6]は、主に病院などから地域生活へ移行する際の退院計画を扱った研究です。個別の計画や家族との共有を考える参考にはなりますが、すべてのリハビリ終了場面で同じ効果が得られることを直接示したものではありません。
