『土の下のひかり』
秋の入り口、空気が少し澄んできた頃。
朝の空はうっすらと白くて、土の匂いがやわらかく香っていた。
山あいの、ぽつんとした村にふゆちゃんという女の子が住んでいる。
ふゆちゃんは、しゃべるのが苦手なわけじゃないけど、
たくさん話すよりも、静かにしてる時間が好きだった。
おばあちゃんとふたり暮らしで、朝はいつも一緒にお味噌汁を作る。
そのお味噌汁が、なんともいえないやさしい味で、
なんでかっていうと、たぶんおばあちゃんが、いつもふゆちゃんのことを思いながら作ってるからだと思う。
ある日、畑に一緒に出かけたとき。
ふゆちゃんは土をじっと見つめてた。
「この中にね、まだ見えないけど、小さな命が眠ってるのよ」
そう言って、おばあちゃんはしゃがみこんで、手で土をなでた。
「芽はね、あわてないの。
寒くても、光が見えなくても、
自分のリズムで、ちゃんと準備してるのよ」
その言葉に、ふゆちゃんは、ふっと肩の力が抜けた気がした。
そうだね、って声に出せなくても、
心のどこかで「うん」ってうなずけた。
たぶん、ふゆちゃん自身も、
まだ芽吹いてないだけで、
土の下で、ちゃんと生きてるんだと思う。
それは目には見えないけど、
でも、ちゃんとそこにある。
夜、布団に入って目を閉じたとき、
ふゆちゃんはお腹の奥で、ちいさく温かいものを感じた。
それは、まだ言葉にならない光だったけど、
きっとそれでいいのだと思う。
言葉にできなくても、
進めなくても、
止まっているように見えても、
ちゃんと土の下では、生きてるものがあるんだね。
あなたの中の芽も、
今日もそっと、生きてるよ。
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