見出し画像

人は、事実を見ているようで「見たい事実」を見ている

こんにちは!皆さん。

今日は「確証バイアス」について書きたいと思います。

少し難しそうな言葉ですが、飲食の仕事をしている人には、ぜひ知っておいてほしい考え方です。

むしろ僕は、料理の知識やサービス技術と同じくらい、マネジメントをする人には必要な知識ではないかと思っています。

なぜなら、飲食の現場は毎日が「判断」の連続だからです。

この料理は売れるのか。

このスタッフは成長するのか。

この店長は任せられるのか。

このクレームはお客様側の問題なのか。

この企画は続けるべきなのか。

売上が落ちた理由は何なのか。

僕たちは毎日、無数の判断をしています。

ところが、その判断をしている「自分の頭」が、いつも公平とは限りません。

ここが面白いところです。

確証バイアスとは、ものすごくざっくり言うと、

「自分が正しいと思っていることを証明する情報ばかり集めてしまう」

という人間の思考のクセです。

心理学では、自分がもともと持っている期待や考えを支持する証拠を重視し、それに反する証拠を軽く扱ってしまう傾向として説明されています。

意思決定を扱う行動経済学でも、とても重要な認知バイアスの一つとして考えられています。

難しく考える必要はありません。

日常にも山ほどあります。

「あの人、なんとなく感じが悪いな」

と、第一印象で思ったとします。

すると次の日、その人が挨拶をしなかっただけで、

「やっぱり感じが悪い人だった」

と思います。

ところが、その人がお客様の荷物をさりげなく持ってあげていても、それはあまり記憶に残りません。

自分の最初の印象と合わないからです。

逆もあります。

「あの人はいい人だ」

と思っていると、多少ミスをしても、

「今日は疲れていたんだろうな」

と優しく解釈します。

人間とは、なかなか都合よくできています。

もちろん、僕も含めてです。

#行動経済学 #確証バイアスとは #飲食店経営 #マネジメントの基本 #意思決定の心理学

僕たちは「事実」より先に答えを決めてしまう


確証バイアスの怖いところは、嘘をついているわけではないことです。

本人は、本当に事実を見ているつもりです。

ここが厄介です。

例えば、店長があるスタッフについて、

「あいつはやる気がない」

と思ったとします。

一度そう思うと、その後は「やる気がない証拠」ばかりが目につき始めます。

出勤時間ギリギリに来た。

メモを取らなかった。

返事が少し小さかった。

休憩から戻るのが遅かった。

ほら、やっぱりやる気がない。

証拠がどんどん集まってきます。

ところが、そのスタッフが忙しい時間に誰よりも皿を下げていたことや、お客様の忘れ物にすぐ気づいたこと、新人に仕事を教えていたことは、なぜか評価に入りません。

見えていないわけではありません。

重要な情報として扱われなくなるのです。

僕は、ここがマネジメントでは非常に怖いと思っています。

最初に、

「この人はダメだ」

という答えを出してしまう。

その後に行われるのは、正しい評価ではありません。

単なる答え合わせになってしまいます。

目の前の人を見るのではなく、

「自分の判断が正しかった証拠」

を探し始めるのです。

そして証拠が見つかれば、

「ほらね」

となります。

この「ほらね」が危ないのです。

#思い込みの罠 #人事評価の課題 #リーダーの視点 #バイアスの影響 #事実と解釈の違い

飲食店は確証バイアスだらけです


僕は30年以上、飲食の現場を見てきました。

振り返ってみると、確証バイアスが入り込みやすい場面は驚くほど多いです。

例えば新メニューの導入です。

料理長が、

「これは絶対に売れる」

と言って新しいメニューを作ったとします。

販売初日。

10食売れました。

「ほら、売れたでしょう」

となります。

翌日も8食売れました。

「やっぱり、この商品はいける」

となります。

しかし、少し立ち止まって考えてみてください。

その日は土曜日で、全体のお客様が多かっただけかもしれません。

新商品としてスタッフが積極的におすすめしていたから、売れたのかもしれません。

通常より原価をかけていたから、お客様がお得に感じて注文しただけかもしれません。

あるいは、SNSで紹介した直後だった可能性もあります。

それでも、僕たちはつい、

「料理がおいしいから売れたのだ」

と考えてしまいます。

もちろん、本当においしかった可能性もあります。

僕が言いたいのは、それ以外の可能性を見なくなることが問題だということです。

逆に、売れなかった場合も同じです。

「この地域のお客様には、この料理の良さがわからない」

なんて、少し乱暴な結論を出してしまうことがあります。

いやいや。

ちょっと待ってください。

値段が高すぎたのかもしれません。

料理名が分かりにくかったのかもしれません。

メニューの写真が暗かったのかもしれません。

メニューの置かれている位置が悪かったのかもしれません。

スタッフがおすすめしていないだけかもしれません。

提供時間が長すぎるのが敬遠されたのかもしれません。

そもそも料理の良さが、まったく伝わっていないのかもしれません。

一つの結果には、たくさんの原因が絡み合っています。

しかし人間は、自分が最初に立てた仮説と一致する原因を、とても選びやすいのです。

だからこそ、確証バイアスを知っているかどうかで、お店の改善の精度はかなり変わると僕は考えています。

#新メニュー開発 #売上分析のやり方 #飲食店の課題解決 #店舗改善 #マーケティングの失敗例

「最近のお客様は〇〇だ」も少し疑ったほうがいい


飲食の現場では、こんな会話もよく耳にします。

「最近のお客様は、本当に価格に厳しいですよね」

「最近の若い人は、全然お酒を飲まないですよね」

「この地域では、高い料理は絶対に売れないですよ」
「外国人のお客様は、こういう料理が好きですよ」

こういう言葉を聞くと、僕は少しだけ立ち止まるようにしています。

本当にそうでしょうか。

もちろん、全体的な傾向として存在する場合はあります。

ただ、人間は一度そう思い込んでしまうと、それを証明するお客様ばかりを見始めます。

800円と1000円の商品を比べて、800円を選んだお客様を見ると、

「やっぱり価格に厳しくなった」

と確信します。

ところが、同じ日に3000円のワインを追加注文したお客様については、あまり深く考えません。

ノンアルコールを注文した20代のお客様を見ると、

「やっぱり若い人は飲まないな」

と思います。

でも、隣のテーブルでワインを一本空けた25歳のお客様のことは、すぐに忘れてしまいます。

人間の頭は、本当に便利にできています。

自分の説に合うデータだけを、きれいに拾い集めてくれます。

頼んでもいないのに、自動的にやってくれるのです。

#顧客分析のコツ #ターゲティング戦略 #消費者の心理 #客層の多様化 #データに騙されない方法

接客でも「思い込み」は静かに始まります


確証バイアスはマネジメントだけの話ではありません。

サービスの最前線でも、静かに起こっています。

例えば、よく来てくださる常連のお客様がいます。

以前、シャルドネを注文されました。

次にご来店された時も、シャルドネを飲みました。

するとスタッフの頭の中に、

「このお客様はシャルドネが好きだ」

という強固な情報ができあがります。

次回来店された時、スタッフは笑顔で、

「シャルドネがお好きでしたよね」

とおすすめします。

お客様も、悪い気はしないので、

「じゃあ、それでお願いします」

と言います。

さらにスタッフは、

「やっぱりシャルドネが好きなんだな」

と確信を深めます。

でも、これ。

少し冷静に考えると、とても不思議な現象です。

本当は、今日は赤ワインを飲みたかったのかもしれません。

スタッフに笑顔ですすめられたから、断りきれずにそのままシャルドネを頼んだだけかもしれません。

つまり、

「この人はシャルドネが好きだ」

というスタッフの思い込みが、お客様の注文をシャルドネに誘導しています。

そして、その注文を見たスタッフが、

「やっぱりシャルドネが好きだ」

と自らの思い込みを証明するわけです。

なかなか見事な一人芝居が完成しています。

だから僕は、常連のお客様ほど決めつけないほうがいいと思っています。

「前回はシャルドネでしたが、今日はどのようにされますか?」

これでいいのです。

過去の情報は、しっかり使います。

でも、過去の情報で現在のお客様を決めつけないようにします。

この少しの違いが、サービスの質を大きく変えます。

お客様の好みも、その日の気分で変わります。

僕たちと同じ人間なのですから。

#接客のコツ #常連客への対応 #顧客満足度アップ #ホスピタリティ精神 #サービスの質を上げる

クレーム対応にも確証バイアスは入り込みます


クレームが起きた時でも、まったく同じことが起こります。

例えば、普段から少し細かいことを指摘されるお客様がいたとします。

そのお客様から、

「今日は料理が来るのが遅かった」

とお叱りを受けました。

すると裏に下がったスタッフ同士で、

「あのお客様、いつも細かいからね」

という話で終わってしまうことがあります。

これも非常に危険です。

「あのお客様は細かい」

という先入観があると、

料理が本当に遅かったのかどうかを、客観的に確認しなくなるからです。

キッチンの伝票をちゃんと確認したら、注文から30分もかかっていたかもしれません。

同じ時間帯に、他のお客様も長く待っていたかもしれません。

つまり、クレームの「内容」ではなく、

「誰が言ったか」

で事実を判断してしまっています。

逆のパターンもあります。

いつも感じのいい常連のお客様から、

「今日もおいしかったよ」

と褒められると、

「やっぱりうちのサービスは素晴らしい」

と安心します。

でも、お店として本当に知りたいのは、いつもの常連のお客様の優しい評価だけではありません。

初めて来た人は、どう感じたのでしょうか。

予約なしでふらっと来た人は、どうだったのでしょうか。

子ども連れのお客様は、居心地が良かったでしょうか。

外国人のお客様は、言葉の壁を感じなかったでしょうか。

一人で来店した人は、寂しい思いをしなかったでしょうか。

僕たちが見るべきなのは、自分を褒めてくれる情報だけではありません。

むしろ、ちょっと耳が痛い情報の中にこそ、お店を良くするためのヒントが隠れていることがあります。

#クレーム対応の基本 #先入観を捨てる #顧客の声の活かし方 #問題解決のスキル #サイレントクレーマー対策

口コミを見る時も、自分の答えを持たないほうがいい


Googleの口コミやSNSを見る時にも、確証バイアスは鮮やかに起こります。

例えば店長が、

「最近、うちのサービスレベルが落ちている気がする」

と悩んでいたとします。

その気持ちのまま、口コミサイトを開きます。

すると、

「スタッフの対応が少し残念でした」

という投稿がパッと目に入ります。

「やっぱりな」

と思います。

さらに探します。

もう一件ありました。

「料理はおいしかったですが、接客が少し事務的でした」

ほら。

やっぱりサービスが落ちている。

店長はそう確信します。

ところが、冷静に数えてみると、100件の口コミのうち、接客について悪く書かれていたのがその2件だけだったとしたらどうでしょう。

逆に30件の口コミが、

「スタッフが親切で感動した」

と書いていたかもしれません。

もちろん、悪い2件を無視していいわけではありません。

大切なのは、

「自分が何を証明しようとして口コミを読んでいるのか」

に気づくことです。

サービスが悪くなった証拠を探せば、悪い口コミばかりが目に入ります。

サービスが良くなった証拠を探せば、良い口コミばかりが目に入ります。

同じお店です。
同じ口コミのページです。

でも、見る側の仮説によって、見えている景色がまったく変わってしまいます。

人間の目は、事実をそのまま写すカメラではありません。

脳という、とても優秀な編集者が間に入っています。

しかも、この編集者は、なかなか自分好みに事実を編集してしまうのです。

#口コミ対策 #レビュー分析 #ネットの評判管理 #客観的な視点を持つ #SNSマーケティングの注意点

「最近の若いスタッフは続かない」も本当なのか


僕が飲食業界に長くいて、特に気になるのが「人材」についての思い込みです。

「最近の若い子は、本当に我慢ができない」

「すぐに辞めてしまう」

「僕たちが若い頃とは、根性が違う」

こういう話は、昔からずっとあります。

おそらく、20年前の40代も、まったく同じことを言っていたと思います。

50年前にも、似たような話がきっとあったはずです。

ある若いスタッフが、3カ月で辞めてしまったとします。

すると、

「ほら、やっぱり最近の若い子は続かない」

となります。

でも、同じお店で3年間もしっかり働いている24歳のスタッフについては、

「この子は特別だから」

と、例外として処理してしまいます。

これは少し、論理が変です。

辞めた一人のことは「若者全体」の証拠にするのに、

続いている一人のことは「例外」にしてしまうからです。

自分の説に合う人は、世代の代表選手。

自分の説に合わない人は、たまたまの例外扱いです。

この方法を使えば、どんな理屈でも証明できてしまいます。

僕なら、

「若い人が続かない」

という仮説が頭に浮かんだ瞬間に、

あえて逆のことを考えます。

「では、長く続いている若い人には、何か共通点があるのだろうか?」

こちらを徹底的に調べます。

店長とのコミュニケーションがうまくいっているのかもしれません。

希望する勤務時間が、きちんと守られているのかもしれません。

仕事を覚えるための、分かりやすい仕組みがあるのかもしれません。

日々、少しずつ成長を実感できる環境があるのかもしれません。

本人の真面目な性格だけが理由かもしれません。

そこまで全体を見て初めて、少しだけ事実に近づける気がします。

辞めた理由ばかりを集めるより、

続いている理由もフラットに集めたほうがいい。

僕はそのほうが、お店にとってずっと建設的だと思っています。

#人材育成の悩み #離職率低下 #若手社員の育て方 #従業員エンゲージメント #Z世代の働き方

経験が長い人ほど注意したほうがいいかもしれません


ここは、僕自身も本当に気をつけたいと思っているところです。

経験が増えると、判断がどんどん速くなります。

これは仕事をする上で、とても大きな武器です。

30年以上飲食をやっていると、

「ああ、このトラブルはこういうパターンだな」

と、直感的にわかることがたくさんあります。

経験の浅い新人には見えないものが、瞬時に見えるようになります。

これは間違いなく経験の価値です。

ただし、その強さには、怖い裏側もあります。

「前も同じようなことがあった」

「だいたい、最後はこうなる」

「このタイプの人は、こういう行動をする」

経験によって仮説を立てるスピードが速くなる分、答えを決めるスピードまで速くなってしまうことがあります。

経験は、間違いなく判断力を高めてくれます。

しかし同時に、自分の思い込みに対しても、立派な根拠を与えてくれます。

だから僕は、

「30年やっているから、絶対にわかる」

と自分で言いたくなった瞬間ほど、自分を疑ったほうがいいと思っています。

30年やっているからこそ、30年前の古い常識で測っている可能性もあるからです。

経験は、何物にも代えがたい資産です。

でも、その知識の賞味期限は、定期的に確認する必要があります。

#経験の罠 #アンラーニング #ベテランマネージャーの悩み #変化への適応 #自己認知を高める

数字を見ているから公平とは限りません


では、人間の感覚ではなく、客観的な数字を見ればいいのでしょうか。

実は、ここにも落とし穴が潜んでいます。

「数字は嘘をつかない」

と、ビジネスの現場ではよく言われます。

僕も、数字で管理することはとても大切だと思っています。

しかし、

「数字そのものは嘘をつかなくても、数字を選ぶ人間は間違える」

ということは、頻繁に起こると思います。

例えば、新しいランチメニューを始めた翌月、ランチの売上が10%上がったとします。

「やっぱり新メニューが大成功した」

と、嬉しくなって言いたくなります。

でも、同じ月に、お店の近くで大型のイベントが開催されていたらどうでしょう。

街全体の人出が増えていて、来客数そのものが底上げされていたかもしれません。

カレンダーの巡り合わせで、前年同月より営業日が1日多かった可能性もあります。

あるいは、少し前に値上げをした直後だったかもしれません。

客数は減っているのに、客単価だけが上がって売上が伸びた可能性すらあります。

売上が10%アップした。

この数字は、紛れもない事実です。

しかし、

「新メニューのおかげで売上が上がった」

というのは、あくまで人間の解釈です。

ここを混ぜてしまわないことが大切です。

僕は飲食のマネジメントでは、

「事実」と「解釈」をはっきりと分けるだけでも、判断の質がかなり変わると思っています。

事実は、

「売上が10%増えた」です。

解釈は、
「新メニューが成功した」です。

似ているように見えますが、まったく違うものです。

この二つの間に、一本の明確な線を引くだけで、お店は少し冷静さを取り戻せます。

#データ分析の落とし穴 #売上管理の視点 #KPI設定のコツ #仮説思考の鍛え方 #ロジカルシンキング入門

会議で「どう思う?」と聞く前にも注意が必要です


確証バイアスは、個人の頭の中だけでなく、組織全体にも広がっていきます。

店長がミーティングで、

「最近、ランチの料理提供が遅くなっていると思うんだけど、みんどう思う?」

とスタッフに聞いたとします。

一見すると、みんなの意見を優しく聞いているように見えます。

しかし、この質問の中には、すでに答えが入ってしまっています。

「料理提供が遅くなっている」

という強い前提です。

するとスタッフも、無意識のうちにそれに合わせて、

「確かに、最近遅いと感じていました」

と答えやすくなります。

そして店長は、

「やっぱり、みんなもそう思っているんだな」

と確信します。

これも、組織ぐるみでの一種の答え合わせです。

僕なら、このようには聞きません。

「最近のランチ営業で、何か気になっていることはありますか?」

これくらい、フラットな質問から始めます。

もしかするとスタッフは、
「料理の提供よりも、お会計のレジが詰まってしまっています」

と言うかもしれません。

「事前の予約の取り方に、少し無理があります」

と言うかもしれません。

「そもそも、ホールの人数が絶対的に足りません」

と言うかもしれません。

リーダーが自分の仮説を先に出してしまうと、みんなの視線が自然とその一点へ集まってしまいます。

リーダーの言葉には、それくらい周囲を巻き込む力があるのです。

だからこそ、問いかけ方には気をつける必要があります。

#会議の進め方 #チームビルディング #心理的安全性 #ファシリテーションスキル #リーダーシップのあり方

「おすすめは?」と聞かれた時にも使える考え方です


もう一つ、僕がサービスの現場でとても面白いと思う場面があります。

お客様から、

「今日のおすすめは何ですか?」

と聞かれた時です。

サービスマンとしては、一番の腕の見せどころです。

でもここで、自分の大好きな料理を、息を吸うようにすぐ説明してしまう人がいます。

「絶対これです。うちの自慢のスペシャリテです」

もちろん、情熱があるのは決して悪くありません。

ただ、

「おすすめは何ですか?」

という言葉を、

「あなたが一番好きなものを教えてください」

と、勝手に解釈していないでしょうか。

お客様は、

今は少し軽いものが食べたい気分なのかもしれません。

今日はお昼にがっつり食べたので、肉を避けたいのかもしれません。

これから頼むワインに合わせたいのかもしれません。

二軒目なので、量をあまり食べられないのかもしれません。

初めて来たので、その店らしい定番の料理を知りたいだけかもしれません。

だったら僕は、答える前に少しだけ質問をします。

「しっかりとお食事を召し上がりたいですか?」

「それとも、お酒のお供に軽めがよろしいですか?」

「お飲み物は、ワインに合わせますか?」

たった一つ質問をするだけで、本当に提案すべきおすすめはガラリと変わります。

良いサービスとは、

自分の持っている答えを一方的に押し付けることではなく、

お客様の本当の答えを、一緒に探していくことなのかもしれません。

ここにも、自分の中の確証バイアスを知り、それを引き算していく意味があります。

#提案営業のコツ #ヒアリング力を鍛える #潜在ニーズの引き出し方 #レストランサービス #顧客体験価値の向上

確証バイアスを「引き算」してみる


サービスのデザインにおいて、僕は「引き算」がとても大切だと考えています。

これは、確証バイアスにも同じことが言えます。

僕たちはつい、新しい情報や知識を「足し算」しようとします。

もっとメニューの知識を足そう。

もっとサービスのテクニックを足そう。

でも、それより前に、自分の中にある「思い込み」を引いてみるのです。
「このお客様は、きっとこうだろう」

「このスタッフは、こういう性格だろう」

「この料理は、こういう理由で売れるだろう」

こうした思い込みを、一度頭の中から取り払ってみます。

すると、今まで見えなかったお客様の小さなサインや、スタッフの意外な長所が見えてくることがあります。

足すのではなく、引くこと。

思い込みを減らすだけで、視界はずっとクリアになります。

#引き算のサービス #サービスデザイン #思考の整理術 #本質を見極める #接客の極意

確証バイアスそのものを悪者にしなくてもいい


とはいえ、

「では、思い込みやバイアスを全部なくしてしまいましょう」

と言っても、それは少し無理があります。

僕は、そこまで人間の頭は器用にできていないと思っています。

毎回すべての情報を、ゼロから客観的に検討していたら、忙しいランチ営業なんて絶対に終わりません。

「この時間帯なら、絶対に混んでくる」

「このご年配のお客様なら、奥の静かな席がいい」

「このベテランスタッフなら、この持ち場を任せられる」

これまでの経験から瞬時に予測するからこそ、僕たちは素早く、的確に動くことができます。

だから、バイアスそのものを、

「排除すべき悪いもの」

として扱う必要はないと思っています。

一番の問題なのは、

「自分にはバイアスなんて一切ない」
と思い込んでしまうことです。

自分だけは常に公平に見ている。

自分だけはいつも冷静に判断している。

自分は十分な経験があるから、絶対に間違えない。

この境地に入ってしまうと、本当に危なくなります。

僕にもバイアスはあります。

皆さんにもあります。

社長にもあります。

優秀な店長にもあります。

熟練の料理長にもあります。

入ったばかりの新人にもあります。

人間として生きている以上、必ずあるのです。

だから本当に必要なのは、

バイアスを完璧になくすことではなく、

「もしかして今、自分は見たいものだけを見ていないだろうか?」

と、ふと気づける柔らかさを持つことです。

これだけでも、十分すぎるほど素晴らしいと僕は思います。

#直感と論理 #経験則の活かし方 #ヒューリスティクス #メタ認知を鍛える #自分を疑う勇気

僕なら「反対の証拠」を一度だけ探します


では、日常の業務でどうすればいいのでしょうか。

僕は、特別なトレーニングや難しい仕組みにする必要はないと思っています。

自分が何かを強く確信した時に、一回だけ、意図的に反対側を探してみるのです。

例えば、

「この新商品は絶対に売れる」

と思った瞬間に、

「もし売れないとしたら、何が原因になるだろう?」

と、あえて考えます。

「あのスタッフは本当にやる気がないな」

と思ったら、

「今日一日で、少しでもやる気があるように見えた行動はなかっただろうか?」

と、意識して探してみます。

「最近のお客様は、本当に価格に敏感だ」

と思ったら、

「逆に、一番高い商品を選んでいる人たちには、どんな共通点があるだろう?」

と考えます。

「この厳しい口コミは、いくらなんでも理不尽だ」

と腹が立ったら、

「もし、この口コミに10%だけ正しい部分があるとしたら、それはどこだろう?」

と考えます。

たった、これだけのことです。

自分を否定する必要はまったくありません。

せっかく立てた仮説を捨てる必要もありません。

ただ、反対側にも一度だけ目を向けてみるのです。

僕はこれを、

「自分の仮説に、疑問符をつける」

くらいの軽い感覚で考えています。

「この料理は売れる。」

と言い切るのではなく、

「この料理は売れる?」

と問いに変えてみる。

たった「?」という一文字の違いです。

でも、この一文字が頭の中にあるだけで、人は少しだけ立ち止まり、周りを広く見るようになります。

#クリティカルシンキング #多角的な視点を持つ #反対意見を受け入れる #思考のクセを直す #意思決定の質を上げる

店を強くするのは「正しい人」ではなく「修正できる人」です


飲食の仕事を長く真剣にやっていると、

周りから正解を求められる場面がどんどん増えていきます。

店長なら、早く判断してください。

料理長なら、メニューを決めてください。

マネージャーなら、正しい答えを出してください。

毎日のように、そう求められます。

だから経験を積めば積むほど、

「ちょっと今はわからない」

とは、言いにくくなることがあります。

でも僕は最近、

本当に強いリーダーとは、いつも絶対に正しい人ではないと思っています。

間違った時に、素直に、

「ごめん、僕の考えが違ったね」

と言える人です。

昨日までは、

「絶対にAの方針で行くぞ」

と熱く語っていても、新しいデータや事実を見て、

「いや、どうやらBのほうが正しいかもしれない」

と、軽やかに方向転換できる。

僕は、こちらのほうが圧倒的に強い組織を作れると思っています。

意見を変えると、

「あの人はブレている」

「一貫性がない」

と批判されることがあります。

でも、まったく新しい情報が入ってきたのに、自分の意見を頑なに変えないほうが、僕にはよっぽど不思議に思えます。

天気予報が晴れから大雨に変わったのに、

「昨日の夜は晴れって言っていたから」

と意地を張って、傘を持たずに出かける必要はありません。

普通にずぶ濡れになるだけです。

お店の経営やマネジメントも、まったく同じです。

自分なりの仮説は、しっかり持つ。

でも、その仮説に執着しすぎない。

スピード感を持って決める。

でも、間違っていたらすぐに修正する。

この思考の柔らかさは、これからの変化の激しい飲食業界には、ますます必要になると思っています。

#柔軟な組織作り #アジャイルな経営 #変化に強いチーム #失敗から学ぶ組織 #マネージャーの役割とは

答えを探すより、「自分の答えを疑う」ほうが難しい


行動経済学や心理学を学ぶ本当の面白さは、

お客様の心を操り、動かすテクニックを知ることだけではありません。

僕はむしろ、
「自分自身も、想像以上に合理的ではない生き物なのだ」

と知るところに、最大の面白さがあると思っています。

アンカリング効果。

損失回避の法則。

現状維持バイアス。

バンドワゴン効果。

そして、今日お話しした確証バイアス。

こうした専門的な言葉を知ると、僕たちはつい、

「なるほど、お客様はこういう心理で動くのか」

と、他人の分析に使いたくなります。

でも、他人の分析をする前に、

「自分もまったく同じように、バイアスに影響されて動いている」

と考えたほうが、世界はずっと面白く見えてきます。

心理学の対象になるのは、お客様だけではありません。

一緒に働くスタッフもそうです。

指示を出す上司もそうです。

そして何より、僕自身もそうなのです。

飲食店で一番扱いが難しいものは、温度管理の難しい高価な食材でも、使い方の複雑な最新の厨房機器でもないのかもしれません。

人間の頭です。

もちろん、そこには自分の頭もしっかりと含まれています。

#心理学を仕事に活かす #人間の非合理性 #自己成長のヒント #感情のコントロール #経営者のマインドセット

というわけで


というわけで、今日は行動経済学や心理学でよく知られる「確証バイアス」について、飲食の現場からの視点で考えてみました。

僕たちは毎日、本当にお店の中でたくさんのものを見ています。

毎日の売上データ。

忙しく動くスタッフ。

楽しそうなお客様。

ネット上の口コミ。

仕上がった料理。

提供するサービス。

さまざまな数字。

そして、現場の空気。

でも、僕たちが本当に見ているのは、ありのままの事実だけなのでしょうか。

もしかすると、その膨大な情報の中から、

「自分が正しいと思える都合のいいもの」

だけを、無意識に拾い集めていることがあるかもしれません。

「あのスタッフはダメだ」

「この料理は絶対に売れる」

「最近のお客様はこうだ」

「この地域では絶対に無理だ」

「若い人はすぐに辞める」

そう心の中でつぶやいた瞬間に、

頭の中で小さな確証バイアスが、静かに動き始めているかもしれません。

だから僕は、強く何かを確信してしまった時ほど、

意図的に、一度だけ反対側の景色を見てみたいと思っています。

「本当にそうかな?」

この、自分への小さな一言です。

飲食の世界では、長く培った経験がとてつもなく大きな武器になります。

でも、昨日まで正しかった経験が、明日も同じように正しいとは限りません。

お客様の好みは変わります。

働く人の価値観も変わります。

お店のある街の雰囲気も変わります。

社会の常識も変わります。

飲食というビジネスそのものも、常に変化していきます。

だったら、僕たち自身の考え方だって、それに合わせて変わっていっていいはずです。

正しい答えを一つだけ持ち続けることより、

新しい事実や情報が入ってきた時に、自分の持っていた答えを素直に書き換えられること。

僕は、そのほうが今の時代にはずっと大切だと思っています。

お店を本当に強くするのは、

「過去の考えは絶対に正しかった」

という、強すぎる確信ではありません。

「もしかすると、根本から間違っているかもしれない」

と笑って言えるような、心の中の小さな余白なのではないでしょうか。

確証バイアスという言葉を知るということは、

誰かの考えを否定したり、疑うための知識ではありません。

自分の頭の中にある「当たり前」を、ときどき優しく疑ってみるための知識です。

そして飲食という、人と人がどこまでも真っ直ぐに向き合う仕事だからこそ、
こういう人間についての知識を、もっと学んだほうがいいと思っています。

おいしい料理を学ぶ。

素晴らしいワインを学ぶ。

心地よいサービスを学ぶ。

経営のための数字を学ぶ。

そして、不完全な人間を学ぶ。

その学びの中には、当然のように、

「自分自身について深く学ぶこと」

も入っています。

そこにこそ、飲食という現場で行動経済学を学ぶ、本当の面白さと価値があると思っています。

#飲食業界の未来 #学び続けること #ビジネスのヒント #サービス業の面白さ #行動経済学の応用

----------------------------------

【メンバーシップのご案内】

飲食業に関わるすべての方へ。
そして、食を愛し、その未来を一緒に考えたい方へ。

このメンバーシップは、飲食業の価値を高め、未来につなげるための場です。業界のリアルな課題、現場で役立つノウハウ、そしてこれからの可能性を、共に考え、学び、発信していきます。

メンバー限定の深掘り記事、交流の場、時にはリアルなイベントも企画予定です。あなたの経験や想いが、このコミュニティをより豊かにしていくはず。

飲食業の未来を一緒に描いていきませんか?

皆さんの参加をお待ちしています。
詳細・登録はこちら

👇

いいなと思ったら応援しよう!

菅野 大輔 (ワインテイスター/食クリエーター:かんの だいすけ) よろしければ、サポートお願いします。 自分のモチベーションアップのためと、今後のためにインプットに使わせて頂き、またアウトプットできればと。サポート頂いた方へはちゃんと返信させて頂きます。

この記事が参加している募集