大塚達宜は大塚達宜
「私にはできない。」
彼を初めて見たとき、そう思った。
バレーボール選手・大塚達宜。
彼は、いわゆるエリートだ。強豪校で育ち、大学在学中から日の丸を背負ってきた。
その経歴だけでも十分にすごい。
けれど、当時も今も、同世代でひときわスポットライトを浴びているのは髙橋藍だ。
髙橋藍には、実力はもちろん、人を惹きつける華がある。プレーだけでなく、インタビューでの受け答えも巧みで、その場で求められる言葉を自然に返すことができる。
多くの人の目を引くのも当然だろう。
では、大塚はどうだろう。
真面目で、寡黙。そして何より、自分から目立とうとしない。
そんな彼らしさを感じた出来事が二つある。どちらも、彼が大学生の時の出来事だ。
一つは、雑誌で日本代表メンバーそれぞれの大会への意気込みが掲載されたときだった。
他の選手たちは、無難だったり、少し笑えるようなコメントだったりと、読みやすい内容が並んでいた。
一方、大塚の文章は、まるで論文だった。大学のレポートを間違えて提出したのではないかと思うほど、一つひとつの言葉を真面目に積み重ねていた。
もう一つは、彼のサインを当てたときのことだ。
やはり当時はまだ大学生だったこともあるのだろう。
彼のサインは、サインというより署名だった。
どちらの出来事にも、彼の真面目な人柄がよく表れていたように思う。
現在の彼は、日本代表には選ばれ続けているものの、主な役割は途中出場だ。
私は時々思う。
もし彼が少し違う時代に代表入りしていたなら、日本代表のエースと呼ばれる存在になっていても不思議ではなかったのではないか、と。
それほど今の日本代表は層が厚い。
強豪校でエースを務めてきた彼ですら、スタメンを勝ち取ることは簡単ではない。
それでも、大塚は腐らない。
彼は職人肌だ。
爆発的に試合をひっくり返すタイプではない。
けれど、流れを崩さない。
途中から入っても、まるで最初からコートに立っていたかのように自然と試合に溶け込む。
しかも彼が送り出されるのは、強豪相手の苦しい場面が少なくない。
勝てない試合だってある。
それでも彼は崩れない。
自分のリズムを失わず、どんなタイミングでもコートに立つことができる。
私も学生時代、似たような立場だった。
基本は控え。
強豪相手になると途中から出場する。
よくある役回りだった。
でも、私にはできなかった。
調子が良い日はできても、それを続けることはできなかった。
負ければ悔しかったし、その感情は態度にも出てしまった。
だからこそ、彼の凄さが分かる。
彼は、逆転が難しい場面で出場しても、一切崩れない。
どんな時でも、大塚達宜なのだ。
昨日、私はそんな彼が途中出場から試合の流れを変え、大逆転の立役者になる姿を見た。
試合後のインタビューで彼は言った。
「自分の役割を果たしただけです。」
そんな趣旨の言葉だった。
本当に彼らしいと思った。
そこで、ふと思った。
もし彼が日本代表のエースだったなら、今の彼の良さは少し違って見えていたのかもしれない。
エースには、結果だけでなく、注目を集めることも求められる。
プレーだけでなく、言葉でも期待に応えなければならない。
もちろん、彼ならそれも器用にこなしただろう。
それでも私は、今のポジションだからこそ輝く彼の魅力があるように思う。
だからこそ、途中出場で試合の流れを変え、主役になった彼の姿を見て、私は思わず「ああ、良かった」と思わずにはいられなかった。
