ビジネスモデルは放置すれば劣化する 「PPM分析」 #78
起業と経営に共通するリスクの本質
起業経営の難しさは、とてもシンプルです。
それは、起業した事業が、ひとつであることです。
会社員であれば、所属する企業が複数の事業を持ち、
どこかが不調でも他が支える構造になっています。
しかし起業は違います。
もし、事業が失敗すれば即終了です。
これは何もスタートアップに限った話ではありません。
大企業であっても、収益の大半を一つの事業に依存している場合、
本質的には同じリスクを抱えています。
安定とは「分散」である
では、安定した経営とは何か。
答えはシンプルです。
複数の収益源を持つこと。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、
単に数を増やせばいいわけではないということです。
重要なのは、
異なる時間軸・成長段階の事業を持つこと です。
この視点を理解するために、ひとつの有名な寓話があります。
「木こりのジレンマ」が示すもの
森の中で、木こりが刃のこぼれた斧で必死に木を切っていました。
通りかかった旅人が言います。
「斧を研げば、もっと早く切れるのに」
しかし木こりは答えます。
「そんな暇はない。木を切るのに忙しいんだ」
この話はよく、
「目先に追われるな」「長期視点を持て」
という教訓として語られます。
ただ、経営の視点で見ると、もう一歩踏み込めます。
目先か将来か、ではなく“両方をどう成立させるか”
そのために分析するためのフレームワークが、
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)です。
PPMで分析する「事業の役割」
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM:Product Portfolio Management)では、
製品や事業を
市場成長率 × 市場シェアで4つに分類します。

① スター(花形)
成長市場でシェアも高い。
売上も伸びるが、投資も必要。
✅ 未来の柱
② 金のなる木
成熟市場で安定したシェア。
大きな投資なしに利益を生む。
✅ 現在の収益源
③ 問題児
成長の可能性はあるが、まだ弱い。
投資するか、撤退するかの判断が必要。
✅ 次のスター候補
④ 負け犬
収益性が低く、将来性も乏しい。
かつては、「スター」であり、「金のなる木」だったのかもしれません。
✅ 撤退対象
多くの企業が失敗するポイント
理論はシンプルですが、実務ではここでつまずきます。
それは、
「金のなる木」への依存です。
今、利益を生んでいる事業に依存しすぎるとどうなるか。
• 投資が止まる
• 新規事業が育たない
• 環境変化に対応できない
結果として、
“突然死”のリスクが高まる ことです。
これは、まさに自販機ビジネスのように、
かつての成功モデルが環境変化で崩れる構図と同じです。
ポートフォリオの本質は「時間の分散」
そもそも「ポートフォリオ」という言葉は、
金融・投資の世界から来ています。
一つの銘柄に集中投資するのではなく、
複数に分散することでリスクを抑える。
これを事業に置き換えると、
現在・未来・挑戦を同時に持つこと
になります。
• 今を稼ぐ「金のなる木」
• 未来を担う「スター」
• 可能性を探る「問題児」
そして
• 不要なものは切る「負け犬」
です。

経営の核心は「転換力」
最終的に問われるのは、これです。
• 拡大依存から「収益性」へ
• 現状維持から「選択と集中」へ
• 成功体験から「データと戦略」へ
そして何より重要なのは、
“今うまくいっているもの”を疑えるかどうか
ビジネスモデルは、放置すれば必ず劣化します。
だからこそ必要なのは、
単なる努力ではなく、客観的に分析した上での構造の設計です。
あなたの事業には、
• 金のなる木はあるか
• 次のスターは育っているか
• 問題児に投資できているか
• 負け犬を放置していないか
一度、冷静に見直してみる価値はあるはずです。
