変化の時代に問われる「レジリエンス」という力 #101
現代は、先行きが不透明で将来の予測が困難なVUCA時代といわれます。
VUCAとは、変動(Volatility)、不確実(Uncertainty)、複雑(Complexity)、曖昧(Ambiguity)の頭文字を取った言葉です。
つまり、そもそも「過去の延長で未来が読めないこと」を前提とした時代です。
これまで有効だった経験則や成功体験が、そのまま通用しないことも珍しくありません。
しかし、経営はそれで終わらせるわけにはいきません。
この矛盾こそが、VUCAの本質です。
■ 環境に適応するレジリエンス
もちろん、大局的な長期戦略は重要です。
しかし、それだけでは先行きの見えない変化に柔軟に対応することは難しいといえます。
これから必要なのは、
• 現状を正しく捉える力
• 短期的な変化を見据える視点
• 機動的に意思決定を行う実行力
そして、この時代においては、企業だけでなく、個人一人ひとりにも「環境に適応する力=レジリエンス」が強く求められています。
レジリエンス(resilience)とは、外的な衝撃に対する「しなやかな強さ」や「回復力」を意味します。
例えば、
• 柳の枝のように、折れずにしなる強さ
• 干上がった大地から芽吹く植物の生命力
単に耐えるのではなく、受け止め、立て直し、次に活かす力とも言えます。

■ BCPだけでは足りない理由
企業は不測の事態に備えて、BCP(事業継続計画)を策定します。
これは非常に重要な取り組みです。
しかし、どれだけ備えても、想定外は必ず起こるという前提に立たなければなりません。
だからこそ必要なのが、
• BCPで“備える”
• レジリエンスで“乗り越える”
この2つの考え方です。
レジリエンスがなければ、計画は機能しません。
■ レジリエンスの高い人材とは
企業は人の集合体です。
つまり、組織のレジリエンスは個人から生まれます。
私が考える「レジリエンスの高い人材」の要素は次の5つです。
1. 柔軟な対応力
既成概念にとらわれず、状況に応じて考え方を変えられる。
2. 感情のコントロール
不安や焦りに支配されず、冷静さを保てる。
3. 現実的なポジティブ思考
論理に基づき前向きに捉え、不必要に悲観しない。
4. やり抜く力(GRIT)
困難な状況でも、最後までやり切る粘り強さ。
5. コミュニケーション力
周囲と協力し、支え合える関係を築ける。

■ 危機がレジリエンスを引き出す
2020年のコロナ禍は、多くの企業にとって想定外の危機でした。
私の会社でも、もともとは「3年で生産性を高める」計画を立てていました。
しかし、この危機をきっかけに、社員一人ひとりがレジリエンスを発揮しました。
結果として――
3年計画は、わずか3ヶ月でカタチになりました。
これは単なる効率化ではありません。
組織全体が“折れずに立て直し、前に進む力”を発揮した結果です。
危機は、組織を弱くも強くもします。
その差を分けるのが、レジリエンスです。
■ レジリエンスを高める経営という視点
では、どうすればレジリエンスを高められるのか。
その一つの考え方の一つが、「スマートシュリンク(賢く縮む)」です。
人口減少により市場が縮小していく中で、無理に規模を追い続ける経営は、かえってリスクになります。
だからこそ、
• 選択と集中を行う
• 無駄を削ぎ落とす
• 利益の質を高める
といった意思決定が重要になります。
これは単なる縮小ではなく、環境変化に強い体質をつくる=レジリエンスを高める経営です。

■ 逆境を、成長の起点に変える
これからの時代において重要なのは、
単に成長することではありません。
• 変化に耐えられるか
• 立て直せるか
• そこからさらに前進できるか
つまり、“しなやかに強い状態”をつくれるかどうかです。
レジリエンスの高い組織には、自然とレジリエンスの高い人材が育ちます。
そしてその連鎖が、企業の本当の強さになります。
不測の事態や逆境は、避けることができません。
しかし、それをどう捉えるかは選ぶことができます。
• 単なる危機で終わらせるのか
• 進化のきっかけにするのか
その分岐点にあるのが、レジリエンスです。
折れにくいだけではなく、
折れても立ち上がる。
そして、前よりも強くなる。
それこそが、これからの企業に求められる力なのだと思います。
