死亡診断書・死体検案書は「公文書」か「私文書」か?
SNS(特にX)では「死亡診断書や死体検案書は公文書なのか、私文書なのか」という議論がしばしば起こります。
結論だけを見ると「公文書だ」「いや私文書だ」と真逆の主張が並び、混乱の原因になっています。
本記事では、法律上の整理と実務上の扱いを分けて解説します。


結論
死亡診断書・死体検案書は、原則として私文書
ただし、公立病院などの公務員医師が職務として作成し虚偽があった場合、刑法上は公文書として扱われる。
その結果、適用される罪名が変わる
この「文書の性質」と「刑法上の評価」を混同すると、議論が噛み合わなくなります。
文書としての性質:原則は「私文書」
死亡診断書・死体検案書は、
医師が
医学的判断に基づいて
個別の死亡事例について記載する文書
であり、行政機関が意思表示として作成する文書ではありません。
そのため、行政法・文書管理・一般的な法学整理においては、原則として私文書と理解されています。この点は、民間病院・公立病院を問わず共通です。
ではなぜ「公文書」と言われることがあるのか?
混乱の原因は、刑法の世界にあります。
刑法には以下の規定があります。
刑法160条:虚偽診断書等作成罪
刑法156条:虚偽公文書作成罪
ここで重要なのは、刑法は「文書の名前」ではなく「誰が・どの立場で作成したか」を重視するという点です。
公務員医師が書いた場合の扱い
公立病院(市立病院・県立病院など)の医師は、地方公務員あるいは「みなし公務員」として扱われます。この公務員医師が、
職務として
行使の目的で
虚偽内容の死亡診断書・死体検案書を作成した場合
その文書は、刑法上「公文書」に該当すると評価されます。
この点については、最高裁判例(昭和51年5月6日決定)もあり、実務上は確立した理解といってよいでしょう。
つまり、文書一般としては私文書。しかし刑法156条の適用場面では「公文書」として扱われるという整理になります。
「書いた人で変わるのはおかしい?」という疑問について
「同じ死亡診断書なのに、民間医師だと私文書、公立病院医師だと公文書扱いになるのはおかしい」という疑問はもっともに見えます。
しかし刑法は、
国家・自治体の信用を背景に
公務として作成される文書
を特に重く保護します。
公務員医師が職務として作成した診断書は、社会から「公的機関が作成したもの」と受け取られるため、虚偽があった場合の法的責任も重く設定されているようです。
実務的な使い分け
整理すると、次のようになります。
一般論・説明用
死亡診断書・死体検案書は原則として私文書
刑事責任の話
民間医師:刑法160条(虚偽診断書等作成罪)
公務員医師:刑法156条(虚偽公文書作成罪)
この2つを分けて理解することが重要です。
死体検案書:変な誤解が生まれる言い方
死体検案書→ 原則は私文書
これは犯罪死、司法解剖案件、警察介入があっても変わりません。
「事件性があるから公文書」❌
「警察が絡んだら公文書」❌
「司法案件だから最初から公文書」❌
まとめ
死亡診断書・死体検案書は文書としては原則「私文書」
ただし、公立病院などの公務員医師が職務として作成し虚偽があった場合、刑法上は公文書として扱われる。
議論が荒れる原因は「文書の性質」と「刑法上の評価」を混同することにある
おまけ(笑)
病院のカルテが公文書っていう人ははじめて・・

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