なぜ、現場に置いたマニュアルはゴミになるのか
属人化は、3つに分解できる
── 認知・判断・実行、どこに依存しているのか
これまでの記事で、
属人化がなぜ生まれるのか、現場で何が起きているのかを書いてきました。
今回は、少し視点を変えます。
「属人化している仕事」を、
構造として分解してみる、という話です。
なぜ属人化の議論は、いつも噛み合わないのか
属人化の話になると、だいたいこうなります。
若手が育たない
管理が弱い
意識が低い
でも、この議論は、ほとんど前に進みません。
理由はシンプルで、
属人化を“ひとつの塊”として扱っているからです。
実際の現場では、
属人化している仕事の中身は、もっと細かく分解できます。
仕事は「3つのフェーズ」でできている
私が現場で仕事を見てきて、
エラー分析や改善を行うとき、必ず分解していた視点があります。
それが、
認知 → 判断 → 実行
という流れです。
これは精神論ではありません。
実際に「どこでミスが起きているのか」を特定するための、
ごく実務的な分解です。
認知:そもそも気づけているか
認知とは、
正常か異常かに気づけるかどうかです。
ここには、必ず「知識」が関わります。
何を見るべきか
どこが重要か
どの状態が異常なのか
これを知らなければ、
人は異常を異常として認知できません。
経験豊富な人ほど、この認知を無意識に行っています。
そのため、自分が「何を見て判断しているのか」を説明できません。
だからこそ、
言語化するのが難しいのです。
でも、それは
分かる人にしか分からない認知です。
判断:基準があるか、感覚か
次が判断です。
判断とは、
認知した情報をもとに、どうするかを決めることです。
ここで重要なのは、
明確な判断基準があるかどうか。
数値で決まっている
条件で分岐する
手順として定義されている
こうした基準があれば、
判断は人に依存しません。
逆に、
なんとなく
いつもの感じ
自分の経験では
といった判断が行われている場合、
そこは構造的に属人化せざるを得ない状態です。
数値化できるのに、
アーティストの創作活動のように個人が感覚で判断している現場も、実際にあります。
これは、
「優秀だから」ではなく、
構造が用意されていないだけです。
実行:正しく判断しても、失敗することがある
最後が実行です。
実行フェーズでは、
判断は合っている
やるべきことも分かっている
それでも、行動でエラーが起きます。
これは、
作業が複雑
手順が多い
注意点が多すぎる
など、行動そのものが失敗しやすい構造になっている場合です。
ここを「注意不足」で片付けると、
改善は二度と進みません。
属人化は「場所」が違うだけで、性質が変わる
ここまで見てきたように、属人化は、
認知に依存しているのか
判断に依存しているのか
実行に依存しているのか
によって、性質がまったく違います。
にもかかわらず、
マニュアルを作ろう
教育を強化しよう
と一律の対策を打つから、
「やっても変わらない」状態になります。
まずやるべきなのは、
どこが人に依存しているのかを見極めることです。
標準化は、分解できてから初めて意味を持つ
標準化は、
ルールを作ることではありません。
仕事を分解し、
何が見えていないのか
何が判断できていないのか
何が実行できていないのか
を整理した先に、初めて形になります。
分解できないまま標準化を進めれば、
現場が拒否反応を示すのは当然です。
次回予告
次回は、
この 「認知・判断・実行」 の分解を使って、
なぜ判断が個人に集まり続けるのか
なぜ基準が作られないのか
その構造を、もう一段深く掘ります。
属人化は、人の問題ではありません。
構造の問題です。
