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「自分らしく働く」に100万円?SNSに広がるワーママの世界は、まだ続いていた。

数年前、私のインスタには「自分らしく働くママ」がたくさんいた。

会社員を辞めて、好きなことを仕事にする。子どもとの時間を大切にしながら、自宅で働く。満員電車に乗らず、嫌な上司にも振り回されず、自分の力でお金を稼ぐ。

インスタに映る彼女たちは、いつも自由で楽しそうだった。明るい部屋で、パソコンに向き合う女性の後ろ姿。「今日もお仕事♡」と書かれた、ホテルラウンジの写真。

当時の私は、それを見て思っていた。

「いいなあ」

会社員を続けながら、「好きなことを仕事にしたい」「自分らしく働きたい」と思い、高額な講座やセッションを受けたこともある。

SNS発信も頑張った。インスタだけでなく、そういう働き方をしているワーママの音声配信もよく聴いていた。

だから私は、この世界を最初から「怪しい」と思っていた側ではない。むしろ片足を突っ込んでいた。


でも今は、すっかり普通の会社員に戻った。

起業したいとも思わなくなったし、「本当にやりたいことを見つけなければ」という焦りも、いつの間にかなくなった。

仕事をして、子どもを迎えに行って、ご飯を作って、宿題を見て、寝る。華やかでもなんでもない。でも最近は、それでいいと思っている。

ある日、久しぶりに昔よく聴いていたワーママ起業家の音声配信を開いた。

懐かしいなあ、今どうしてるんだろう。
軽い気持ちだった。

すると、その人が、嬉しそうに話していた。

「次のステージに進むために、100万円のコンサルに申し込みました!」


え、まだ払ってるの?


私の中ではとっくに終わっていた世界が、まだ普通に続いていた。

その人自身も、ワーママ向けにコンサルをしている。教わった人が教える人になり、その人がまた誰かに教わる。ぐるぐると、お金と「学び」がこの小さな世界を回っている。

なんとも不思議な経済圏だ。


気になったら止まらなくなり、久しぶりにインスタで「自分らしい働き方」周辺のアカウントを見てみた。

「育休中に月5万円」「手帳で理想の人生を叶える」「自己理解コーチ」「ママでも自分らしく」。

数年前なら、「素敵!」と思っていたかもしれない。

一人、インスタのプロフについていたURLを開いてみる。

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もう一人。またLINE。

登録すると、無料動画やPDFが届く。「こんなお悩みありませんか?」「実は私も以前はそうでした」「でも人生が変わりました」。そして「もっと詳しく知りたい方へ」と個別相談の案内。ここから講座につながるのだ。

フォロー欄も開いてみた。

AさんがBさんをフォローし、BさんがCさんをフォローし、CさんがDさんをフォロー。そしてDさんがAさんをフォローしている。

みーんな、つながっている。
プロフィールまで似ている。

「〇〇|自分らしく働く|2児ママ」
「〇〇|好きを仕事に|元会社員」。

名前と肩書きを「|」でつなぎ、アイコンはおしゃれな後ろ姿。発信している言葉も似ている。

みんな同じようなところで学んでるんだな。

「自分らしく生きる」を教えている人たちが、びっくりするほど同じ。まったく″自分らしさ″はない。


でも昔はそこに惹かれていた。

「あなたにはもっと可能性がある」「まだ見つけていない本当の自分がいる」と言われたら、心は動く。

会社と家を往復するだけの毎日に、別の人生があるような気がした。

この世界が何年経ってもなくならないのは、ワーママのモヤモヤがなくならないからなんだと思う。

仕事はこのままでいいの?
母親になっても何かしたい!
私ももっとできるんじゃないか?

私も子どもを産んでから、ずっとそんなことを考えていた。

その「このままでいいのかな」という、ごく普通のモヤモヤが、SNSの中では商品になる。


数年前の私にはキラキラして見えた世界が、今はずいぶん違って見える。

もし今、「私、このままでいいのかな」「もっと何かしなきゃ」と焦っている人がいたら、考えて欲しい。

その「足りない」は、誰に植えつけられた?

仕事をして、子どもを育てて、毎日なんとか回している今は、本当に足りない?


私は明日も会社に行く。「本当の自分」が何なのかは、相変わらずよく分からない。

でも少なくとも今は、その答えを100万円払って誰かに教えてもらおうとは思わない。

SNSを開けば、これからもきっと「もっと自分らしく」「もっと輝ける」「本当のあなたは別にいる」と言う言葉は流れてくる。


だけど、もう前ほど心は動かない。

「足りないものを埋めたい」と思って飛び込んだ先で、また新しい「足りない」を見つけてしまう。

その繰り返しに、終わりがないと気づいたから。

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