#37-2 働き方、人生、そしてAI─小さな成功体験から始める「自走」の仕組みづくり ー松田 直人さん
「働き方改革」「ワーク・ライフバランス」と聞くと、制度や残業削減を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、その本質は「誰もが自分の人生を主体的に選べるようになること」にあります。後編も、株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタント・松田直人さんをお迎えし、海外旅行で培った価値観や、企業の「自走」を支える対話のあり方について伺いました。さらに、AI時代だからこそ大切にしたい「まずは自分でつくってみる」という実践のヒントも紹介しています。
🔽プロフィール
松田 直人(まつだ なおと)さん
株式会社ワーク・ライフバランス 社員
ワーク・ライフバランスコンサルタント
東京都在住。横浜市立大学卒業。
前職では、小さく速く回し改善を繰り返す”アジャイル型”のシステム開発に従事。働き方を変えるために必要不可欠なITの力を感じつつ、より根本的な働き方への意識や文化を変えるためには、チームの関係性や人との関わり方が重要であると考え、株式会社ワーク・ライフバランスに参画。入社後は、クライアントの課題や感じていることを言語化するコミュニケーションを重視し、1人1人が主体的に関わりたいと思う取り組みを目指す。自社内の生産性向上プロジェクトに多数関わり、入社直後から社内システムの改修に着手。手作業で行っていた分析結果の出力作業を50%削減するなど、日々社内の業務効率化も推進。
小学2年生から野球に打ち込み、チームで結果を出す喜びと難しさを体感。
趣味の海外旅行では35カ国以上を訪れ、多様な価値観に触れることで、自己と他者の違いを発見する面白さに魅了されている。お勧めの国は、コスタリカ、ナミビア、ブータン。
*資格*
kintone認定資格 カイゼンマネジメントエキスパート
🔽前編
ワーク・ライフバランスの取り組み
前川 前半に続き、本日も東京都からのお届けです。株式会社ワーク・ライフバランスから、コンサルタントの松田直人さんをお迎えし、お話を伺います。松田さん、本日もどうぞよろしくお願いいたします。
松田さん こんにちは。松田直人です。よろしくお願いします。
前川 先週は、松田さんが残業を知らない世代でありながら、なぜワーク・ライフバランスに参画したのか、その原点である大学時代のベビーシッターのリアルな体験や、同世代に向けた「本当に価値を感じる時間に、人生を投資しよう」というメッセージを伺いました。
その柔軟な視点は、ライフの時間を大切にする中で続けてきた海外旅行とも深くつながっているように感じます。これまでに、46か国を巡られているのですよね。
海外旅行で培われた「違いを受け入れ、消化する力」
──よく仕事とプライベートは別物と切り離して考えがちですけれども、松田さんにとってこの「旅」というライフは、日々のコンサルティングや仕事のスタンスにどんなふうに繋がっているのか、ぜひお伺いできればと思います。
松田さん 私自身、海外旅行は本当に趣味で、「仕事に繋げよう」とか、「仕事に活かせたらいいな」という気持ちは一切なくて、本当に楽しくてやっているだけです。
ただ、いろいろな国々を旅している中で、仕事に限らず、人生に大きな影響を与えていると思うのは、「自分のマインドとしての、許容範囲が広がったこと」だと思っています。自分と違う価値観に出会った時に、それを受け入れたり、あるいは受け入れ切れなくても自分の中で消化したりする力が、とても広がったと感じています。
よく言われる「日本での当たり前」や、「自分の中での当たり前」はたくさんあるかと思います。わかりやすく言うと、「電車は時間どおりに来て当たり前」や、「朝は時間までに出社して当たり前」、もしかしたら「残業するのも当たり前」という価値観があるのかもしれません。
大小問わず、そうした日々の「当たり前」に対して、そうではない現実や、異なる価値観を持つ人たちと出会うことがあります。海外で旅していると、あまりにも自分の常識とかけ離れたことがたくさんあります。
日々、仕事で起きることに対して、目くじらを立てることなく「自分が理解できないことなんて、あの旅の時に比べたら、だいぶ許容範囲だ」と思えることが、海外旅行を経験して得られた変化だと思います。
──具体的にそう思えた海外での経験を、ぜひお伺いしたいです。
松田さん 現在は、治安上行きにくくなったミャンマーでの話です。当時は日本企業が、どんどん進出していた頃で、私もボランティアとして、現地の受け入れ団体の場所に向かいました。舗装されていない道路をバイク一台で、ある村に向かいました。
到着してみると、そこには電気・水道・ガスがないような集落でした。おそらく、日本も昔こんな感じだったのだろうなと思いました。村の真ん中には、公民館のような、人が集まるところがあり、そこにテレビが1台だけ置いてありました。自家発電があって、そこだけ電気がついている状態でした。
宿泊は、コンクリートの地べたで、当時、本当に辛かったです。水も真水ではなく、飲み水も少し濁っていました。食べ物も何を食べているかわからないし、寝ていると虫が体をよじ登ってくるという生活をしていました。毎日、「あと何日寝れば、ここを出られるのだろう」と思っていました。
8日目に大雨が降り、床が水浸しの状態になったことがありました。そのときに、村の少年たちがサッカーを始めたのです。雨が上がった後、手を引っ張られて、「一緒にサッカーをしようよ」と誘われました。畑でやっているので、走り出すと全員転んでしまう状態の中で、スライディングをすると、10〜20メートルくらい滑っていくような状態でした。
それがとても楽しくて、小学生に戻ったようでした。終わった後は、井戸水を被って泥を流し、そのあとは疲れて、みんなで爆睡でした。そのときに、今まで日本で感じていた幸せとは全く違う幸せを感じられたと思います。
今振り返っても、あの村に戻って生活するのは、嫌ですが、あのときのような幸せを思い出すと、もし嫌なことがあって生きていけないと感じたときに、「今自分がいるところで幸せを感じなくなり、辛いと思っても、他の場所に行けばいい」と思えたのです。場所が変われば、価値観も変わり、その中できっと幸せを感じられるのだと思えました。それが、自分の今までの常識や、当たり前だと思っていたことが、一気にひっくり返された経験です。


前川 エピソードを聞いて、その様子が頭の中に思い浮かんできました。「自分の当たり前を疑う」という視点を体感されて、それが「働き方改革の原点」になっていると思いました。
答えを急がず、対話を通じて企業の「自走」を支える
──その旅で培われていったマインドから、お客様との対話をとても大事にされているとお伺いしましたが、現場では、どのように活かされているのか、ぜひお伺いしたいです。
松田さん 対話は、お互いのことを知ることだと思っています。さっきの「当たり前を疑う」ということもですが、対話をしていくことによって、自分と相手の違いを実感して、自分の状況を相手に知ってもらったり、相手の状況もしっかり把握したりすることで、押しつけ合いになることがないのではないかと思います。これが対話の土台かと思います。
その中で、コンサルタントとして目指していることは、「これが正解」、「絶対にこうした方がいい」と思うようなことがあっても、すぐに答えを出すのではなく、対話によって、相手が自分自身で考えて、正解を導き出して動けることを意識しています。いわゆる「自走」ができるようになるために、「問い」や、「対話」の中で、「自分の言葉」として話せるようになることが、とても大事だと思っています。
──対話を通して企業の自走につなげていったというお話がありましたが、具体的な事例があれば、お伺いしたいです。
松田さん 栃木県内の企業を伴走支援する事業を、担当していたことがありました。そのとき、3社の企業を担当させていただきましたが、はじめは「意味があることなのだろうか」「やってどうなるのだろう」とお話しされていました。
何度も訪問し、たくさんの対話を重ねていった結果、支援が終わった後に、3社とも「どうやって、自分たちで働き方を良くしていこうか」「どうすれば、自分たちのチームが気持ちよく働ける組織になるだろうか」「お互いを思い合える組織を作るためにはどうしたらよいか」「ワクワクする会社にするには、どうしたらよいか」を考える時間を取るようにして、それを今でも継続しているというのを、お聞きしました。
今でも、連絡を取り合っています。私としても、嬉しく思っています。大袈裟かもしれませんが、1つの成果として、対話を大切にした結果だと思っています。
前川 働き方改革で一番大切にしているのが、「自走」できるようになるまで、伴走されているのが、御社の素晴らしいところだなと思います。
働き方改革の本質は「誰もが自分の人生を主体的に選べること」
──松田さんが、現在「働き方改革」のコンサルティングをしている企業や、これから「働き方改革」をしようとしている企業に向けて、ぜひメッセージをいただけたらなと思います。
松田さん 「働き方改革」とか「ワーク・ライフバランス」という言葉を使うと、どうしても女性メインの施策や、あまり働きたくない最近の若手向けの施策だと思われることが多いです。
その結果、「企業としてぬるい」、「福利厚生だ」と捉えられることが、まだまだ多いです。本来、「特定の事情がある誰か」ではなくて、「誰もが働きやすい会社、そしてチームを作ること」が、働き方改革の本質だと思います。「もっとバリバリ働きたい」と思っている人も、働き方改革がどんどん進んでいくと、おそらく、もっと自分がやりたいと思っていることができると思います。
「もっとたくさん働きたい」と思っている人も、ただ仕事での時間を過ごしたいわけではなくて、「自分のやりたいことに時間を使いたい」と思っているのだと思います。働き方改革が進むと、業務が効率化されて、無駄な業務が省かれるようになると、もっとやりたいことに時間を使えるようになると思います。
例えば、早く帰ることができると、副業もできますし、勉強して資格を取得することもできます。人脈をつくるために、いろいろな場に行くこともできます。そう考えると、「誰かのために、やらなければいけない働き方改革」ではなく、「誰もが自分の人生を、主体的に選べるようにするための働き方改革」だということをしっかり伝えていきたいと思っています。
前川 「誰もが働きやすい社会の中で、自分の人生を主体的に選べることが働き方改革の本質」というとても素敵なメッセージを受け取りました。では最後に、松田さんから、「今日からできる!一つのアイデア」のメッセージをお願いします。
「今日からできる!一つのアイデア」

AI・ITツールを「レゴブロック」のように楽しむ
松田さん さっきの「自走」に絡んできますが、「AIやITツールを、もっと使って、自走していく」ことが、できるといいなと思っています。AIとチャットで、やり取りしている人は増えてきたと思います。そこから一歩進んでみて、「ある仕組みをつくれないか」と質問をしてみます。
今だと、Claude CodeやCodexなどが有名ですが、そこまで出来なくても、例えば、「Slackに自動通知をしたい」とか、「Gmailに何かが届いたら、通知して、それを要約してほしい」とか、「半自動化、もしくは自動化できるようなプログラミングコードを書いて」とAIにお願いして、それを単に貼り付けるだけで動くのです。
そのように、AIを使って自分でつくってみます。その出来上がったものは、エンジニアや、AIを駆使している人から見たら、全然業務に使えないと思われることが多いと思いますが、まずは、「自分でつくってみた」という成功体験を積んで、実際に面倒だと思っていた業務が自動化できると、それが自信に繋がっていくと思いますので、AIを駆使して、一歩先に進んで使ってみるとよいかと思います。
前川 私の勤めている会社で自動通知を活用しているメンバーがいたので、それを見て、自分でもスプレッドシートを使って、簡単な自動入力をやってみました。小さいことなのですが、「自分でできた」ということが、とても嬉しかったのを覚えています。
──実際に自分でコードをつくったり、仕組みをつくったりするのは、とてもいいなと思っているのですが、苦手意識を持っている人が多いかと思います。ぜひ、自分でつくってみるときのコツや、大切なスタンスなど、ぜひ、お伺いしたいです。
松田さん 「レゴブロック」や「積み木」を思い浮かべてみてください。子どもの頃に、一度は遊んだ経験があると思います。例えば、お城をつくるときに、他の人がつくったすごいお城に、キャラクターを持ってきて遊ぶのも、楽しいと思いますが、自分で設計してお城をつくっていくのも、また別の楽しさがあると思います。
プロがつくったようなお城よりは、見た目なども綺麗ではないと思いますが、自然と愛着が湧いたり、レゴブロックの使い方が分かったり、「次回は、この辺を工夫しよう」と自分で考えたりすることができると思います。それと同じだと思っています。
昔に比べて、ITを使う学習コストは低くなっていて、以前はブロックをつくるためのプラスチックから、自分でつくらないといけなかったのが、今だとブロックはできていて、それをどう積み上げるかを考えればよいという感じです。
今はAIやノーコード、ローコードツールというのがあって、ハードルが低くなっています。一度、騙されたと思って、お城をつくってみるといいかなと思っています。お城をつくることが、とても大事なスタンスだと思っています。
前川 なるほど。レゴブロックの例えが、とてもわかりやすいなと思いました。
──実際にお城をつくってみたときの、問いかけや、問いかけるための着目点についても、お伺いしたいです。
松田さん よくIT等で、業務効率化をするときに言われますが、「面倒くさがり屋の人の方が、業務効率化が進む」と言われることがあります。「この業務、とてもやりたくない」「本当に、やる必要があるのか」と考える人の方が、「どうやってこれを解決しようか」というマインドになりやすいです。
真面目に「この業務は、こういう風に決まっているから」と考えると、なかなかそのマインドになりにくいと思います。おそらく、日本人は、そういう方が多いかと思います。「この業務が本当に必要かどうか」や「面倒くさい」と思う感情を、持ち続けることも大事だと思います。
毎日・毎週・毎月、同じ業務を繰り返しているなと思うことがあったら、まずはそれを、「どうにかできないだろうか」とChatGPTでもGemini(ジェミニ)でもClaude(クロード)でも、AIにそのまま聞いてみることをお勧めします。
「毎月、請求書の発行でこういう作業をしていて、これが面倒くさいのだけど、こういう状況を解決する方法はないか」と聞くと、何かアイデアをくれたりするかもしれません。
簡単であれば、ちょっとやってみて、すべてはできなくても、最初の集約をする作業だけは、もしかするとできるかもしれません。もちろん、各社のセキュリティなど、注意点はあると思いますので、実際にできるかどうかはさておき、議論したり、考えてみたりすることは大事かと思います。
前川 日々の業務に、面倒くさいことは、とてもたくさんあると思いますので、まずは、それを「どうしたらいいの」とそのまま聞いてしまうことからスタートするといいのですね。
松田さん そうですね。
前川 私もそうでしたが、やっている人を見て、自分もやろうと思ったので、それが広がっていくと、みんなで効率化したり、「これ、やってみたらいいよ」とシェアをし合ったりすることが、働き方改革にもつながっていくのではないかと、今のお話を聞いて感じました。
小さな成功体験が、チームを変え、社会を変える
松田さん 今、前川さんがおっしゃっていた「働き方改革」と「AIやITを使う」ことは、密接に絡んでいると思います。
どちらか片方だけでは、絶対実現しないと思っているので、どちらも同じように小さな成功体験を積んで、それを周りにシェアして、「楽しい」、「いいな」と思ってもらうと、「真似してみよう」とか、「同じようなことを、考えていたよ」というような会話が生まれてくると思います。
さらにそこから、小さな一歩一歩が積み重なっていって、結果的にはチームを変え、企業を変え、日本社会全体、そして世界が変わっていくというような形になると思います。
「働き方改革によって、チームの雰囲気を変える」「業務効率化するために、AIをこう駆使してみる」「やってみたことを、シェアしていく」というのは、大事だと思っています。
前川 小さな成功体験を得ることで、マインドが変わって、働き方改革に繋がっていく。そして、松田さんが前編でもお話ししていた「価値ある時間を投資していける」ような、第一歩につながっていくのだと感じました。素敵なアイデアを、ぜひ今日から実践してみたいと思います。素晴らしいアイデア、ありがとうございました。
松田さん ありがとうございました。
🔽お便りフォーム
ワーク・ライフチャレンジではリスナーの皆さんからのお便りをお待ちしております。お便りフォームをご用意しておりますので、感想やゲストの方への質問などお気軽にお寄せください。
お便りフォームはこちら
🔽応援
株式会社ワーク・ライフバランス
経営戦略としてのワーク・ライフバランス福利厚生の一環ではなく、企業業績向上のために。 現代の社会構造に適応し人材が結果を出し続ける環境を構築する「サスティナブルな働き方改革」のプロフェッショナル集団です。
🔽似顔絵イラスト
大家 三佳
東京在住、京都造形芸術大学卒。子育てをしながら、水彩画、ドローイングを中心に人、食べ物、動物を描くイラストレーター。パッケージやポスター、グッズなど幅広い分野で活躍中。透明感のある優しいタッチで、日常の風景や人物を描く。ペーターズギャラリーコンペ2014 宮古美智代さん賞受賞など。

編集、プロデュース、インタビュー:前川美紀(ワーク・ライフチャレンジ プロジェクト代表/ブランディングディレクター/認定ワーク・ライフバランス認定上級コンサルタント)
note編集:松本美奈子(次世代こども教育コンサルタント/保育士/認定ワーク・ライフバランス認定上級コンサルタント)
note校正:岩下宏文(一般社団法人LIFEイノベーション代表理事/ワーク・ライフバランス認定上級コンサルタント)
#ワーク・ライフチャレンジ #未来をひらく私たちの働き方 #Podcast #ワーク・ライフバランス #ワーク・ライフバランスコンサルタント #WLBC養成講座 #働き方改革 #未来の働き方 #企業 #株式会社ワーク・ライフバランス #長時間労働 #AI #IT #レゴブロック #Claudcode #Codex #海外旅行 #ミャンマー #許容範囲 #積み木 #対話 #まずはやってみる #効率化 #自動化 #仕組み #半自動化
