今の「承認」と未来の「成長」の矛盾をどう乗り越えるか
管理職になってから、ずっと抱えている矛盾がある。
部下を成長させたいと思えば思うほど、「今のあなたでは足りない」というメッセージを送り続けてしまうことだ。
一方で、人は承認されることで安心し、挑戦する勇気を持つ。
この二つは矛盾するのだろうか。
最近、自分なりにこの問いに、一つの答えが見え始めた。
私は毎日のように、自分の行動を反省している。
「今日はあの言い方で良かったのだろうか。」
「もっと違う伝え方があったのではないか。」
そんな振り返りを繰り返している。
その中でも、なかなか直せない癖がある。
私は、人を成長させたいという欲求が強い。
部下には、今よりももっと使える武器を身につけてほしい。
もっと仕事を楽しめるようになってほしい。
もっと活躍できるようになってほしい。
そう考えることは、管理職として自然なことだと思っていた。
しかし、ある日ふと気づいた。
私は「成長してほしい」という思いを伝えれば伝えるほど、相手には「今のあなたでは足りない」と伝えてしまっているのではないか。
改善点を伝える。
次の課題を伝える。
もっとできると期待を伝える。
一つひとつは善意である。
しかし、それを繰り返すほど、「今のあなたには価値がある」という承認のメッセージは減っていく。
このことに気づいてからは、意識的に承認を増やそうと努力してきた。
それでも無意識になると、また成長を促す言葉ばかりを口にしてしまう。
なぜ直らないのだろう。
その理由を考えているうちに、一つの矛盾に気づいた。
「今よりもっと成長してほしい。」
この言葉は、今を否定することにつながる。
一方で、
「今のあなたを認めたい。」
これは今を肯定することである。
私は、この二つは両立しないものだと思っていた。
だから行動を変えられなかった。
しかし最近、この矛盾の見え方が少し変わってきた。
承認と成長は、対立ではなく時間軸が違う
私は、「承認」と「成長」を対立概念として考えていた。
でも本当は違った。
この二つは時間軸が違うだけだったのである。
承認とは、
「今のあなたには、今の価値がある。」
という現在へのメッセージ。
一方、成長とは、
「あなたには、もっと可能性がある。」
という未来へのメッセージである。
今を認めることと、
未来の可能性を信じることは、本来矛盾しない。
矛盾していたのは、自分の認知だったのである。
成長とは「不足を埋めること」ではない
さらにもう一つ、自分の中にある前提にも気づいた。
私は無意識のうちに、
「成長とは不足を埋めること」
だと考えていた。
だから改善点を探してしまう。
できていないところが先に見える。
しかし別の見方もある。
「成長とは可能性を広げること」
である。
不足ではなく、すでに持っている価値をもっと大きくすること。
この認知に変わると、部下への声掛けも変わる。
「ここが足りない。」
ではなく、
「この強みはもっと活かせそう。」
になる。
同じ成長を促していても、相手が受け取るメッセージは大きく変わる。
私自身の存在意義も、そこに重ねていた
そして、今回もう一つ気づかされたことがある。
私は、人を成長させることで、自分自身の存在意義を感じていた。
もちろん悪意ではない。
誰かが成長してくれることは、本当に嬉しい。
ただ、その思いが強すぎると、自分でも気づかないうちに「成長させたい」という力みになる。
相手からすると、それは期待ではなく圧力として伝わることもある。
だから最近は、自分自身に一つの問いを置くようにしている。
「私は今日、この人の価値を一つ見つけただろうか。」
その問いに答えられた後で、
「その価値をもっと伸ばす提案ができただろうか。」
と考える。
順番が逆だったのだ。
承認してから成長させるのではない。
承認したからこそ、人は安心して成長できる。
矛盾をなくすのではなく、抱えながら進む
今回の気づきで、矛盾が完全になくなったわけではない。
それでも以前より、この矛盾を抱えたまま前に進めそうな気がしている。
最近思う。
世の中は矛盾だらけである。
リーダーは、
「優しさ」と「厳しさ」
「任せる」と「管理する」
「承認」と「成長」
そんな相反するものを、どちらか一方ではなく、両方抱えながら意思決定をしている。
成熟とは、矛盾を消す能力ではない。
矛盾を抱えたまま、より良い答えを探し続ける能力なのだと思う。
私もまだ、その途中である。
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