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【掌編私小説】第一印象の処理速度

高校時代によくつるんだ友達が働くバーに行った。

目と鼻の先にあるがあまり行き慣れないエリア。
新規開拓するいい機会だ。

ガラス張りドアの先には淡い青とセピアの
間接照明が居心地のよい明るさ加減を演出する
シーシャバーだった。
入って正面にバーカウンターがあったため、
そいつとすぐに目が合った。久し振り。

ふと右に目をやるとボックス席、一番奥に居たのが
同じく高校時代、空手部で主将を務めて共に
切磋琢磨したTが居た。
マジかよ、7〜8年以上会ってないぞ…!
声を掛けたかったが、取り巻きの男女が数人
同席していたため、右手を挙げながらの
表情の豊かさだけで留めておいた。

カウンター席についてからハイボールを
つつきながら話していると、アイツはどうやら
そこの経営コンサルを担当しているという。
少しよろしくない状況の中、ノリのよい男前で
酒の腕の立つコイツに少し手伝ってほしいと
白羽の矢が立ったらしい。なるほどね。

カウンターの他の客が居なくなったところで、
ボックスの方でテーブルを2つ使って同席できる
ことになった。Tと少しは話せるといいなぁ。

あああ、どうも初めまして、高校時代一緒で…
などと、グラスと灰皿をまだ手に持ちながら
とりあえず目の前の取り巻きの女に話していると、その5秒後には帰りたくなった。
帰るか、横っ面をハリ倒すか。

「へぇー!何なん、Tの友達クセ凄いなー!」

……俺は、“クセが凄い” と “クセが強い” という
言葉が嫌いなのだ。

自分の脳や感覚で処理し切れないものをそう言って
一括りにするという、言語野というか、語彙力を
放棄する行為がどうも嫌いである。
ましてや、他人の容姿にそれを言う。
悪気のないディスにしか聞こえない。
語彙力と他人への配慮の容量を足しても
フロッピーディスク1枚程度しか無いのかお前は。

カラオケ採点機能を使った二人組でのゲームを
させられた。

……お前のいる文化圏には存在しないだろうな。
ルードファッションって。な。

会計を済ませてビル内共用トイレに行った。
久々に見るタイプの詰まり方をしていた。


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