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【ショートショート私小説】吸い殻を瓶に落とす②

俺達を煙たがる大家のもとから近所に引っ越し、
彼女は就職した後、しばらく一緒にいる生活をしていたけど、二人して仕事のストレスやらで体調を
崩し、俺達は仕事を一旦辞めて実家に戻り、
落ち着いた暮らしをしてみることにした。

だけどいつもラブラブなメールのやり取りだけは
相変わらずしていて、どちらかが冗談半分に
“万が一、無いと思うけど、お互いに好きな人
出来ちゃったら、言いっこ無しにしようよ”って
いつか言ってたけど、まさかだった。

凍りついた。

おもしろ映像100連発の番組なんか、
一切頭に入って来やしなかった。

ある人の生き方に憧れて好きになってしまった、
君は悪くない、って送られてきた。
少し思う事はあったけど、あのやり取りが頭を
かすめて俺は責める気持ちにどうしてもなれずに
むしろ、ごめんね、って長く打って伝えた。

数日後に、ふと一人カラオケを初めてしてみた。
嫉妬深かった彼女にキレて険悪なムードの中で
その怒りを歌にぶつけたことがあるな、とかが
頭をよぎりつつ、GOING STEADYの佳代という曲を歌っていると、一番のサビで一滴、だけどそれは
勢いよく目から出て下りていった。
歌い終わると、もう出なくなるのを確認してから
ドリンクバーにコーラをおかわりしに行った。
俺を見た店員さんは心なしか早歩きだった。

なにも嫌い合って別れた訳じゃない俺達は、
23歳の頃に再会した。それから31歳になり、Instagramのストーリーを夕方の起き抜けに見ると、結婚の報告があった。
優しそうな男の人がいる投稿が過去にあったな…
シャワーを浴びて仕事に向かった。

ライチの酒をトニックウォーターで割る。
俺はたまに、彼女が好きだった味を思い出す。
お待たせしました。お味はいかがですか。

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