見出し画像

大型収益物件の売却交渉。買主候補が「検討します」と言って消える本当の理由

私たちは日々、一棟マンションや収益ビル、旅館・ホテルのオーナー様からご相談を受け、サービサー(債権回収会社)や買主との間で債権者対応型の任意売却を進めています。

大型案件の実務現場で、非常によく目にする光景があります。 それは、ようやく現れた買主候補が「前向きに検討します」と言っていたにもかかわらず、しばらくするとパタリと連絡が途絶え、交渉がストップしてしまうケースです。

「やっぱり価格が高かったのだろうか…」 売主様はそう不安に思われます。しかし、実務上、買主が引いてしまう理由の多くは「価格」そのものではありません。

最大の原因は「判断するための資料が不足していること(デューデリジェンスの行き詰まり)」にあります。

「見えないリスク」は、価格交渉の最大の敵

一般的な住宅の売却と、大型収益不動産や宿泊施設の売却は、まったく別物です。 買主は「土地と建物」だけを買うわけではありません。その裏にある収益性、契約関係、そして「引き継いだ後に爆発するかもしれないリスク」を極度に警戒しています。

たとえば、私が過去に見てきた旅館やホテルの案件では、以下のような資料がパッと出てこないことがよくありました。

  • 直近の稼働率やADR(客室平均単価)、RevPARがわかる売上データ

  • ボイラーや空調など、高額な設備(FF&E)の修繕履歴

  • OTA(宿泊予約サイト)との契約内容や、営業許可の状況

買主からすれば、数億円の投資をする際に「設備の老朽化具合がわからない」「本当に今の売上が継続する根拠が見えない」というのは恐怖でしかありません。 ビジネスにおいて、不明点はすべて「最悪のケース(保守的)」に見積もられます。 その結果、修繕リスクなどを過大に引かれ、大幅な指値(減額要求)が入るか、あるいは「リスクが見えないので見送ります」と交渉自体が消滅してしまうのです。

債権者(サービサー)も「資料」を見ている

さらに、任意売却の現場では「債権者の同意」というもう一つの高い壁があります。

サービサーや保証会社との協議において、「この価格で売りたいです」と希望を伝えるだけでは、話は前に進みません。債権の取得価格や回収目線は外部からは断定できませんが、実務上、彼らは「担保評価」「競売になった場合の回収見込みと時間」「任意売却の経済合理性」、そして「この買主は本当に決済できるのか(確度)」をシビアに見ています。

買主が資料不足でモタモタしている(=デューデリジェンスが進まない)と、債権者側も「この案件は本当にまとまるのか?」と疑心暗鬼になり、限られた任売期限の中で競売の手続きを進められてしまうリスクが高まります。

逆に言えば、「買主用と債権者用の資料を、先回りしてきっちり整理しておくこと」が、交渉を有利に進め、価格を維持するための最強の武器になるのです。

実務からお伝えしたい「最初の一歩」

複数の債権者が絡む案件や、資料が散逸してしまっている老舗旅館などの売却では、「何から手をつければいいか分からない」と立ち止まってしまうお気持ちは痛いほど分かります。

しかし、資料は「あるもの」から整理し、足りないものは管理会社や税理士などの専門家と連携しながら段階的に集めていけば大丈夫です。一番もったいないのは、焦って「口頭説明」だけで買主探しに走ってしまい、後から信用を失うことです。

「検討します」で終わらせないために。そして、債権者に任意売却の合理性を納得してもらうために。 まずは、手元にある権利関係の書類と、直近の収益資料を机の上に並べることから始めてみてください。

■ より詳しい「実務の裏側」を知りたい経営者・オーナー様へ

本記事でお伝えしたような、複数抵当やサービサーが絡む大型収益物件の任意売却について、より具体的な「買主DDに必要な資料リスト」や「交渉を止めないためのロードマップ」を公式サイトの実務コラムで詳しく解説しています。

👉 大型収益物件の任意売却で買主DDに必要な資料とは(詳細リスト・解説へ)

また、ご相談の前に自社の状況を整理したい方向けに、現場のノウハウを詰め込んだチェックシート付きの資料をご用意しています。

👉 経営者向け:一棟・旅館・ホテルの売却整理ガイドブック(無料ダウンロード。コラムから進んでください)


※守秘義務および個別案件保護のため、コラム内の事例は物件名等を伏せて再構成しています。 ※任意売却や抵当権抹消は必ず実現できるものではありません。債権者の同意や個別事情により結果は異なります。専門判断が必要な論点は、弁護士・司法書士等と連携しながら進めてまいります。

■ 記事を書いた人
堤 誠之(つつみ まさゆき) ジャパンリアルター株式会社 代表取締役

20歳で不動産業界に入り、33歳で独立しジャパンリアルター株式会社を設立。不動産業界一筋21年目となり、これまでの累計成約数は1,000件を超える。

主に一棟収益不動産、旅館・ホテルの再生事業および運営と、サービサー(債権回収会社)とのハードな交渉を伴う不動産売却(任意売却)の最前線に立ち続けている。また、2015年頃からは中国で不動産投資セミナーを実施するなど、海外投資家向けの不動産取引にも多数対応。

「元サービサー役員」を顧問として迎えているほか、弁護士、税理士、司法書士等との強固な連携体制を構築。複数抵当、差押え、抵当権抹消など、複雑な権利関係と専門確認が必要な論点を、一つの窓口で整理・解決に導くことを得意としている。

・著書:『儲かる川上物件投資』 (監修)
・資格:遺品整理士  / 空き家相談士など

【ジャパンリアルター株式会社】
〒160-0022 東京都新宿区新宿1-32-4 NSビル3階
東京都知事(2)第104145号
公式サイト:https://japanrealtor.jp/

いいなと思ったら応援しよう!