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RAGの精度はどう高める?GraphRAG・CRAG・Agentic RAGを徹底解説

01|イントロダクション:ただの「検索」で終わらせない

1枚目はタイトルスライドです。テーマは、ただの類似文書検索では終わらない次世代のRAG。この記事ではレコーディングスタジオのメタファーになぞらえながら、検索精度がどこで詰まるのか、それをどう突破するのか、そして実装では何が勘所になるのかを順番に見ていきます。まずは、なぜ素のRAGでは足りないのかという前提から確認しましょう。

02|Naive RAGの限界──精度の天井は63%

最初に押さえておきたいのは、素のRAG(Naive RAG)の精度には天井があるという事実です。CRAG Benchmark 2024では、Naive RAGの正答率は約44%、最先端の手法を積み上げても63%あたりで頭打ちになると報告されています。原因は、膨大な資料から「なんとなく似ているチャンク」を拾ってくるだけの設計にあります。データが散乱して断片化し、前後の文脈も途切れてしまうため、モデルを新しくするだけでは埋まらない差が生まれるのです。

03|Advanced RAGの全体像──検索の前・中・後に品質管理レイヤーを挟む

Advanced RAGの考え方はシンプルで、検索の前・中・後にそれぞれ品質管理のレイヤーを挟み込むことです。検索前(Pre-retrieval)はEQやフィルターの役割で、Query TransformationやHyDEによって質問側のノイズを取り除き、検索に効く形へ書き換えます。検索中(Retrieval-time)はミキサーで、ハイブリッド検索と文脈を保つチャンク分割によって必要な情報源をブレンドします。検索後(Post-retrieval)はマスタリングで、RerankingやCRAG、Self-RAGが最終的な品質チェックと自己補正を担います。この三層構造が、以降のテクニックすべての土台になります。

04|ハイブリッド検索とRRF──「雰囲気」と「固有名詞」を両取りする

実装の第一歩として、いま事実上の標準になっているのがハイブリッド検索とRRF(Reciprocal Rank Fusion)です。ベクトル検索(Dense)は言い換えや同義語に強く、曲の「雰囲気」で探すような意味ベースの検索が得意です。一方のBM25などのキーワード検索(Sparse)は、型番やSKU、略語といった一語一句の一致に強く、ドンピシャの「曲名」を当てるのが得意です。RRFは両者の順位を使って統合するため、スコアのスケール合わせが不要で、実装コストを抑えたまま取りこぼしを減らせます。

05|Parent-Child Chunking──検索は細かく、生成は文脈ごと渡す

次の定番がParent-Child Chunking(マルチベクター・インデックス)です。音源から1音だけ切り出すと前後のリズムが分からなくなるのと同じで、チャンクを小さくすると検索精度は上がる一方、生成時の文脈が失われてしまいます。そこでインデックスは細かく刻んだ子チャンクで作り、ピンポイントにヒットさせたうえで、LLMへ渡すのは前後を含む親ドキュメントにする、という三段構えにします。検索の解像度と回答に必要な文脈量を、同時に満たせる一手です。

06|CRAG──検索結果を採点し、ダメなら即Web検索へ切り替える

CRAG(Corrective RAG)は、取ってきた資料を鵜呑みにせず、本番前にリハーサルを入れるアプローチです。Retrieval Evaluatorが検索結果を採点し、結果を三つに振り分けます。正解(Correct)ならそのまま知識を抽出して生成へ進み、曖昧(Ambiguous)なら足りない分をWeb検索で補って結合し、不正解(Incorrect)なら潔く破棄してWeb検索へ完全にフォールバックします。間違った資料のまま強行突破しない、という判断がハルシネーション抑制に直結します。

07|Self-RAG──リフレクショントークンで生成しながら自己修正する

Self-RAGは、評価のタイミングをさらに前へ持ってきた手法です。生成しながらリフレクショントークン(isREL・isSUP・isUSEなど)を出力させ、そもそも検索が必要か、その主張は資料で裏付けられているか、回答として役に立っているかをモデル自身に判定させます。必要なときだけ検索を呼ぶオンデマンド検索と自己評価がセットになっている点が特徴で、ICLR 2024のOral採択論文として、オープンドメインQAで標準的なRAGを上回る結果が報告されています。

08|RAPTOR──ツリー構造の要約で文書全体を俯瞰する

RAPTORは、分厚い仕様書やマニュアルのように、全体を俯瞰しないと答えられない質問への打ち手です。チャンクをクラスタリングして要約し、その要約をさらに要約する形で木構造を再帰的に積み上げ、検索時には葉(原文)から幹(全体像)までを横断して参照します。曲をAメロ・Bメロ・サビという構成で捉えるイメージです。QuALITYの読解ベンチマークでは、絶対値で+20%の精度改善が報告されています。

09|GraphRAG──点と点を線で結ぶマルチホップ推論

GraphRAGが扱うのは、類似度ではなく関係性です。文書からエンティティと関係を抽出してナレッジグラフを構築し、Leidenアルゴリズムなどのコミュニティ検出で話題のまとまりを作り、点と点を線でたどるマルチホップ推論で答えを導きます。ギターとベースが和音を補完し、ベースとドラムがリズム基盤を共有する、という構造そのものを理解するイメージです。人物の相関や組織構造、要因の連鎖といった問いに強く、ベクトル検索が苦手な領域を補完します。

10|Adaptive RAG──質問の難易度で処理ルートを切り替える

ここまでの機材をすべての質問にフル投入するのは、コストもレイテンシも見合いません。Adaptive RAGは、まずComplexity Classifierで質問の難易度を判定し、処理ルートを自動で切り替えます。挨拶のような簡単な質問は検索をスキップして直接回答、標準的な質問はシングルステップのRAG、難問はマルチステップで反復するRAGへ。重い処理を必要な場面にだけ割り当てる、敏腕ディレクターのような役割です。

11|Agentic RAG──ReActループによる自律的なツール活用

Agentic RAGでは、検索は固定パイプラインの一部ではなく、AIが自分で選んで使う道具になります。質問をサブタスクへ分解(Query Decomposition)し、Web検索・ベクトルストア・データベースといった複数のツールをオーケストレーションしながら、ReActループ(Reason → Act → Observe)で、この情報が足りないから次はこのDBを叩く、と判断を重ねていきます。自律性が上がるぶん、コスト管理と停止条件の設計が実装上の勘所になります。

12|LlamaIndex と LangChain/LangGraph──使い分けの指針

フレームワーク選定では、LlamaIndexとLangChain/LangGraphの性格の違いを押さえておくと迷いません。LlamaIndexはRetrieval-first、つまり検索品質を最優先する設計で、ドキュメントの構造化や自動マージ、高度なチャンク分割に強く、オーバーヘッドは6ms程度。ドキュメント中心の高精度なRAGに向きます。LangChain/LangGraphはOrchestration-first、つまりワークフロー優先で、マルチステップ処理やエージェントループ、500以上のツール連携が強み。オーバーヘッドは14ms程度で、複雑なロジックと状態管理を伴うシステムに向きます。検索層をLlamaIndex、制御層をLangGraphに任せるハイブリッド構成が、現在のトレンドです。

13|導入ロードマップ──3ステップで段階的に育てる

最後は導入の順番です。いきなり全部を盛り込むとシステムが破綻するので、三段階で育てるのが安全です。Step 1は即効性のある基本セットで、ハイブリッド検索とParent-Child Chunking。Step 2は信頼性を担保するQuality Gatesで、Cross-EncoderによるリランキングとCRAGの導入。Step 3は自律的な進化のフェーズで、GraphRAGとAgentic Routingへ踏み込みます。用途に合わせて後からエフェクトを足していく、という順序が失敗しないコツです。

14|まとめ──アルゴリズムとデータ基盤の両輪で最高のAIステージへ

まとめです。ここまでの12のテクニックは、あくまでアルゴリズム層(機材)にあたるものです。どれだけ良い機材を揃えても、演奏スキルにあたるクリーンなデータ基盤(Governed Knowledge Foundation)が伴わなければ、最高の生成AIステージは完成しません。まずはStep 1のハイブリッド検索とチャンク最適化から着手し、自分のユースケースに合う組み合わせを見つけていきましょう。

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