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ファインダー越しの花火|エッセイ

社会人になり色々な趣味にハマった。その中にカメラがある。友人にカメラに詳しい人がいて、一緒に人生で初めての一眼レフを買いに行ったことをきっかけに、日常に一眼レフカメラがある生活が始まった。

はじめは、風景や花を撮影することが多かったが、夜景や夜空を撮りたいと思ったことをきっかけに、三脚とケーブルレリーズを買った。

実家のベランダに三脚を立てて、夜空の写真を撮ってみた。

夜は光が少ないので、普通に撮影すると真っ暗な写真が撮れるだけなのだが、カメラを三脚に固定してシャッターを長めに開いて長い時間光を集めると、幻想的な夜空の撮影が出来る。

友人に教えて貰った設定を試しながら、マニュアルで数値を設定して何度か撮影してみる。

人間の目には真っ暗な空に星がぽつぽつ光っているだけの空が、長時間露光で撮影すると、空は藍色だったり少し赤らんでいたりするし、星もはっきりと写真に写る。

もっと長い時間シャッターを開いておけば、星の軌跡を撮影することだってできる。人間の目とは違った世界を切り取ることができるのが、なんともいえない達成感があった。


今夜は町で一番大きな花火大会がある。我が家からは花火会場が遠いので、音は微かに聞こえるが花火は見えない。

私は写真の本を眺めながら、花火の撮影方法のページを見ていた。夜空の撮影同様、花火もマニュアルで細かく設定しないと撮影は難しいらしい。でもちょっと挑戦してみたい。

夕飯を食べ終えたあと、私は外着に着替えて機材を担いで車へ運んだ。花火大会の会場は混雑して撮影が難しいだろうから、少し離れた田んぼの中の道に車を停めて撮影しようと思ったのだ。

「兄ちゃん、どこいくの?」
一番下の小学生の弟が尋ねてきた。

「花火の写真を撮りに行くんだよ」
私がそう答えると、「えー、いいな、行きたい」と弟は言った。

私はお祭りに行くわけじゃなくて、写真を撮るだけだから、たぶんつまらないよと説得したが、弟は「行きたい!」と言って譲らなかった。

「連れてってあげたら?」
最後は母の一言で、助手席に弟を乗せて撮影に行くことになった。

真っ直ぐ伸びる田んぼ道の途中に車を停めて、三脚とカメラの用意をする。もうすぐ花火大会の時間だ。真っ暗な空にレンズを向けて、花火を想像しながら画角の調整やピントを合わせた。

ちょうど準備が終わったところで、最初の花火が空へと上がった。

ひゅーーー、ばーーーん!

左右に針葉樹林が広がる真っ直ぐな道の先に、闇を彩る花火が咲いた。

私はファインダーを確認しながら微修正して、次の花火が上がるタイミングに合わせて、ケーブルレリーズでシャッターを開いた。

ひゅーーー、ばーーーん!

赤、青、黄色。ちかちかと花火の光が空を染め上げる。私は夢中になって撮影した。

写真を見返すと、露光時間が長かったのか、花火が明るすぎて目が痛くなるような写真になってしまった。

ひゅーーー、ばばばばばん!

連続で花火が上がる。今度は露光時間をカウントしながら、祈るようにシャッターを開けた。

「にいちゃん、すごいねー」
車の前で初めての花火撮影に四苦八苦している私に、弟は無邪気に声を掛けた。

田んぼの真ん中には、私たち以外誰もいないし、出店もないし、辺りは真っ暗だ。でも、弟はけらけら笑いながら、次々に夜空に上がる花火に大盛り上がりだ。

私はまたファインダーを覗きながら、空を見上げる弟の背中と花火が画角に入るように調整してシャッターを切った。

露光時間が短かったので花火は薄っすらとしか映っていなかったが、花火の光が弟の頬を照らす思い出に残る写真が撮れた夜だった。

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