飛行機嫌いの代わりに人生を飛びたい
飛行機が目的地な人間
世の中には「飛行機が苦手」という人が、驚くほど多い。
離陸が怖い、揺れるのが怖い、閉じ込められるのが怖い、隣の人の肘が怖い。
わかる、わかるよ。
でも私は違う。
私は、飛行機が好きすぎる。
私はたぶん、旅が好きというより、飛行機に乗る言い訳を探している人間だ。
目的地?正直、二の次である。
「どこに行きたいか」よりも、「どれくらい長く飛べるか」の方が重要だ。
周囲に話すと、だいたいこう言われる。
「え、長距離しんどくない?」
「飛行機って疲れない?」
「修行僧なの?」
ちがう。
私はただ、空の上が落ち着くだけだ。
好きすぎて、目的地よりも「そこに行くまでの機内」に気分が高まるタイプだ。
できれば少しでも長く乗っていたい。
可能なら「直行便?それはちょっと…」と断り、
「一回、いや二回くらい乗り継ぎません?」と提案したいくらいだ。
長距離路線?
むしろご褒美である。
搭乗代行という天職を夢見る
飛行機嫌いな人があまりにも多いので、
最近本気で思っていることがある。
「搭乗代行業」という職業があればいいのに。
依頼者は空港で私にパスポートを渡す。
私はその人の代わりに飛行機に乗る。
依頼者はというと、どこでもドア方式で一瞬で目的地に到着。
一方の私は、機内で映画を観て、機内食を食べて、ワインを飲み、
「到着まで、あと10時間か…最高だな」と思っている。
誰も不幸にならない。
むしろ、世界平和に一歩近づく気がする。
社会的な有用性は怪しいが、精神的には誰かを救っているはずだ。
機内は、私の映画館であり食堂であり居酒屋
飛行機に乗ったら、まずやること。
それは「映画、何観よっかな〜」という至福の悩み。
だいたい離陸前に決めきれず、
離陸してからも迷う。
この時間だけで、すでにちょっと楽しい。
ヘッドフォンを装着し、トレイを倒し、
機内食が運ばれてきたら、もうここは空の上のシネコンだ。
しかも映画を観ながら、
・機内食
・おつまみ
・お酒
が合法的に同時進行できる。
最高すぎないか。
味の評価はしない。
なぜなら「空の上で出てくるご飯」は、
それだけで2割増しで美味しいからだ。
「気圧で体調が〜」と言われることもあるけれど、
私は気圧なんて気にしたことがない。
最近は、787みたいに機内環境の快適性をかなり改善した機体もあって、地上に近い感覚で過ごせるらしい。
つまり私は、地上にいる気分で空を飛んでいる。
冷静に考えると意味がわからないが、最高なので問題ない。
窓の外を見て、そして寝る
映画に少し飽きたら、窓の外を見る。
雲。
雲。
また雲。
それを見て、「あ、地球だな」と謎の感慨にふける…前に、私は寝る。
いつでも、どこでも、どんな体勢でも寝られる。
これは私の特技だが、
たぶんもっと別のところで使うべき能力でもある。
座席が多少狭くても、
首が微妙な角度でも、
前の人が全力でリクライニングしてきても、関係ない。
気づいたら寝ている。
そして起きたら、まだ飛んでいる。
最高すぎる。
長時間?むしろ短い
「そんなに長時間、退屈しない?」と聞かれることがある。
答えは明確だ。
しない。まったく。
映画を観て、食べて、飲んで、寝て、
また映画を観て、食べて、飲んで、寝る。
これを繰り返しているうちに、
「え、もう到着?」となる。
むしろ私は思う。
もう少し飛んでくれてもよかったのに、と。
地上で同じことをしていたら、
たぶん「生活、大丈夫?」と心配されるが、
空の上ではすべてが許される。
飛行機は、ただの移動手段じゃない。
私にとっては、
空に浮かぶ、長時間いていい秘密基地だ。
そして私は、
目的地に着いた瞬間よりも、
シートに座った瞬間がピークの人間である。
今日もまた、
「目的地?まあ、そこも楽しみだけどさ」
と心の中でつぶやきながら、
私は搭乗ゲートへ向かう。
本当は、もう少し飛んでいたいと思いながら、機体を降りる。
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