見出し画像

縁の下のたぬきちさんと、私の庭仕事。


予期せぬ来客。怪我をした「たぬきちさん」と私の数分間。

庭仕事と、三度の落下

今年も私の庭仕事が始まった。
先日はイチジク、そして白木蓮。
剪定(せんてい)は、私の大好きな庭仕事だ。
木に梯子をかけ、時には高い場所へも登る。
これまでに三回ほど落ちたけれど、それでもやめられない魅力がある。
今日は天気がいいので、椿とイロハモミジの剪定に挑戦することにした。


2メートルの距離にいた、先客

道具を持って裏庭へ向かい、
よしと気合を入れて梯子に登った。


しばらく作業をして、
梯子を降りた時、
視線の先に、彼がいた。

それは「たぬき」だった。
たぬきがちょこんと座り、 
じっとこちらを見つめていた。
その距離、わずか2メートル。

しばらくそこへ留まったあと、彼はすうっと縁の下へ消えていった。

「たぬきちさん」との対話

わが家では、たぬきを「たぬきちさん」と呼ぶ。

昔流行ったゲーム『どうぶつの森』のキャラクターの1人だ。

田舎なので、たぬきはもちろんのこと、猿が庭を横切ったこともある。
あれっ?
と思ったけれど、特に驚きはしなかった。


ひと通り剪定を済ませ、
木から降りて片付けをしていた時のこと。

先ほどのたぬきちさんが、
また同じ場所に戻って
座っていた。

「どうしたのかな」
「お腹が空いたの?」
「どこか痛いのかな」

何かを訴えかけるような
その瞳に、
ゆっくりと声をかけた。

はじめは身構えていた
たぬきちさんだったが、
そのうち座り直し、
とうとうその場に伏せてしまった。

瞳の奥に見えたもの

私は動かず、小さな声で近くにいた夫に「何か食べ物を持ってきて」と頼んだ。

差し出された食パンをちぎって、彼の近くへ投げた。
ゆるゆると起き上がり、
パンをひとつ、口に運ぶ 
たぬきちさん。
でも、なぜか元気がない。

「これは、お腹が空いているだけじゃない。怪我だ」
直感的にそう感じた。

優しく声をかけ続けると、
不思議なことに、
彼は少しだけこちらに
近づいてきた。

そして見てほしいとばかりに、さっきとは反対側を出して
伏せた彼の右後ろ脚には、
かなりひどい傷があった。

罠にかかったのか、
それとも何かに噛まれたのか。

命の尊さに触れて

野生の世界では、
自力で治すか、
そのまま命を落とすか。
そのどちらかしかない。

今の私にできることは、
あの足では満足に探せないで
あろう「食糧」を届けることだけ。

そっと立ち上がって
帰ろうとした私に驚いたのか、
慌てて縁の下に入ってしまったたぬきちさん。

明日からも、縁の下の近くに
食べ物を運ぼうと決めた嫁。

人間と動物。
言葉は通じなくても、
心は通じ合う。

どんな命も尊い。
そう再確認した、
春の日の出来事だった。


次の日は暴風雨で、
たぬきちさんの姿を見ることも、できませんでした。
パンも残ったままあったので、心配しています。
たぬきちさん、
どうか姿を現してください。
待ってます。
     8代目の夫婦より



#エッセイ
#日常
#庭仕事
#たぬき
#命の尊さ
#ガーデニング
#田舎暮らしの8代目夫婦

いいなと思ったら応援しよう!