我が家の小さな魔界
私の部屋の窓の外に、大きな蜘蛛が巣を張っている。
お風呂の窓には、蛾がたくさん飛んでいる。
灯りを目指して、集まっているのだ。
大丈夫?
蛾を思う。
入浴後、蛾の確認のために窓を見る。
今度はカエルが張り付いていた。
やられたな。
うまく逃げ延びているものもいるだろうけれど、あのカエルのお腹に入ってしまった蛾もいるだろうに。
家の中では、姫ちゃんが暴れている。
家の中に入り込んだ蛾を追いかけて、真剣に狩りの最中だ。
田舎の家は隙間だらけだから、蛾もカエルもこちらの都合などお構いなしに、勝手に侵入してくる。
夜中、みんなが寝静まった頃。
――パタパタ、ドタバタ。
暗闇から、姫ちゃんの「第2回戦」の音が聞こえてくる。
今度の相手は、きっとカエルだ。
蛾を食べたカエルが、今度は姫ちゃんの相手になっている。
姫ちゃんはカエルを食べるわけではない。あくまで「狩り(お遊び)」なのだ。
次の朝、部屋の隅を見に行くと、ホコリにまみれてすっかり力のなくなったカエルが、コロンと転がっている。
我が家の食物連鎖。
蛾 → カエル → 姫ちゃん
恐ろしい世界が、この小さな家の中で静かに広がっている。
普段は優しくて可愛い姫ちゃん。しかし、彼女のなかに眠る、容赦のない野生を私は知っている。
……いや、そういう私も同じだ。
自分の部屋の窓を開けて、あの大きな蜘蛛の巣を、遠慮なくバリバリと壊す。
これでもかというほどひっついて離れない、蜘蛛が命がけで張った芸術を、容赦なく引き裂く。
生きるためではなく、ただ「邪魔だから」という人間の都合で。
蛾 → 蜘蛛 → 私
我が家の食物連鎖は、
今日もこんな形で、平然と回っている。
