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愛は盗むものじゃない、二人で選ぶもの/ 💐 名前のない花束 / ♪ あなただけは盗めない


短編恋愛小説と歌を創作しました。

自分は男性ですが、感性と想像と創造とで、女性側の視点で表現してみました。

小説と歌の本質的なテーマはおなじです。
それは、「愛は盗むものじゃない、二人で選ぶもの」。





/ 💐 名前のない花束 /


金曜日の夜、閉店間際の花屋に、その人はいつも現れた。

私の店は、駅裏の小さな路地にある。

看板の灯りを落とす直前、いつも同じ時間に、彼はガラス扉を押して入ってくる。

「白いのを、少し」

それだけ言って、彼は棚の奥の、名前も知らないような小さな白い花を選ぶ。

白いカーネーションの日もあれば、かすみ草の日もある。

共通しているのは、いつも白いということだけ。


 


 

包装するあいだ、彼はいつも黙っている。

誰宛かは、一度も聞いたことがなかった。

聞けば、その静けさが壊れてしまう気がして、私はずっと、代わりに天気の話をしていた。

半年ほど、その金曜日は続いていた。

花を買う人には、大抵、理由がある。

恋人の誕生日、母の日、詫びの気持ち。

けれど彼の花には、行き先がなかった。

少なくとも、彼の口からは、一度も語られたことがなかった。

私は、彼のことを何も知らない。

仕事も、住んでいる場所も、名字さえも。

それでも、毎週金曜、彼が扉を開ける瞬間だけを、一週間のどこかで、待っている自分がいた。

これは、恋と呼んでいいものなのか。

それとも、ただの習慣に、勝手に意味を見出しているだけなのか。

自分でも、分からなくなっていた。

ある金曜日、彼はいつもより三十分遅れて現れた。

雨に濡れた肩。

いつもの白い花を選ぶ手が、その日は、少し迷っていた。

「今日は、いい」

そう言いかけて、彼は結局、一番小さな白い花を一輪だけ、選んだ。

「どなたかに?」

初めて、私は聞いてしまった。

彼は、少し驚いた顔をしたあと、静かに笑った。

今まで見たことのない笑い方だった。

「誰にも。自分の部屋に、飾るだけです」

そのひと言で、半年間の謎が、少しだけ解けた気がした。

「毎週、白い花を買って、誰にも見せずに、自分の部屋にだけ飾ってるんですか」

「そうです。おかしいですよね」

「おかしくは、ないです。でも」

続きを、言葉にするのに、少し時間がかかった。

「でも、それって、誰かを想い続けるための、儀式みたいなものに見えます。前に進むことから、逃げるための」

彼は、何も答えなかった。

ただ、レジの前で、白い花を見つめていた。

「大切な人を、亡くされたんですか」

「……三年前に」

それだけ言うと、彼は花を受け取り、代金を置いて、逃げるように店を出ていった。

次の金曜日、彼は来なかった。

その次の週も。

三週間目、私は迷ったすえ、彼が来ないなら、それでいいと決めていた。

もし現れたら、今度はこちらから、伝えようと。

四週間目の金曜、彼はまた現れた。

少し痩せたように見えた。

「白いのを」

いつもの言葉。

私は、頷かなかった。

「今日は、白は、やめませんか」

彼が、私を見た。

「亡くなった方のために、白い花を買い続けることを、責めるつもりはないです。ただ、それが、生きてる人を見ないための言い訳になってるなら、それは、少し違うと思う」

彼からは、何の反応もなかった。

私は、続けた。

「私は、あなたが誰のために花を買っているか、知りたいわけじゃないです。ただ、いつか、私のために、何かを選んでもらえたら、って、思うようになりました」

長い沈黙のあと、彼は、棚の隅に置いてあった、小さな一輪の、黄色い花に目を留めた。

白ではない、色のある花。

彼が、白以外の花に触れたのは、それが初めてだった。

「これは、誰のために?」

私は、聞いた。

彼は、まだ、答えていない。

ただ、その花を、レジの上に、そっと置いた。

答えの代わりなのか、それとも、まだ迷いの途中で、手が止まっただけなのか。

今の私には、判断がつかなかった。

分からないまま、私はその花に、リボンを結んだ。

彼が、それを、誰かのために選ぶ日が、来るように。









  

\ ♪ あなただけは盗めない \

 

今夜だけの優しさなら
いらない
私はあなたに
選ばれたい

午前零時のホテルのバー
氷がグラスで 静かに鳴った
緩めたネクタイ 曖昧な笑顔
あなたは今夜も 本音を隠す

会えば優しく 名前を呼ぶのに
朝が近づけば 他人に戻る
触れれば消える 幻みたいに
近づくたびに 遠くなる

寂しさを埋める
相手ならいらない
都合のいい夜に
私を呼ばないで

あなただけは盗めない
どんな鍵も役に立たない
抱きしめても 口づけても
心はまだ あなたのもの

あなただけは奪えない
愛は力じゃ動かせない
ただ会いたいんじゃない
あなたの未来に
選ばれたい

雨に濡れてる 黒いジャケット
タクシーの窓に 街が流れる
「深入りするな」と あなたは言うけど
離すその手が 震えていた

誰かを愛して 傷ついたこと
聞かなくても 分かってしまう
守るふりして 閉ざした扉
私は壊したいわけじゃない

夜だけじゃなく
朝にも会いたい
秘密じゃなくて
名前のある恋がしたい

甘い言葉より
ひとつの答えがほしい
あなたの孤独を
慰めるだけじゃ嫌

あなただけは盗めない
涙さえも 私には触れない
名前を呼び 手を伸ばしても
心はまだ 夜の中

あなただけは奪えない
愛は勝ち負けじゃ測れない
忘れられないだけじゃない
私を本気で
選んでほしい

会えない時間に
私を想ってほしい
誰にも見えない場所だけで
愛されたくはない

永遠なんて
約束はいらない
逃げずに私を
見つめてほしい

あなたの過去も
弱さも受け止める
だから私を
仮の居場所にしないで

あなただけは盗めない
だからあなたを愛してしまった
思い通りにならないほど
この胸はあなたを求める

あなただけは奪えない
あなたが選ばなきゃ意味がない
遊びの恋なら もういらない
あなたの隣で
明日を迎えたい

あなただけは盗めない
どんな夜も どんな嘘も
最後にあなたが 差し出す手を
私は本気で
待っている

今夜だけじゃない
言葉だけじゃない

あなたの明日に
私を選んで

愛は盗むものじゃない
二人で選ぶものだから











 






 






 

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