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【AI時代の「推進者」ノート ⑧】抵抗する人を、敵にしない 〜 抵抗と戦わない技術

「絶対に反対」という人が、現れる

かなり大事な話なので、少し長めに書く。

推進を進めていくと、無関心や冷ややかさとは、また別の壁が出てくる。

明確に、反対してくる人がいる。「これは違うと思う」「やめた方がいい」「うちには合わない」—面と向かっては言わないが、はっきり伝わってくる。組織の中で発言力がある人だと、その一言で、周囲も身構える。空気が、一気に固くなる。

推進者として、ここでカチンと来ない方が、難しい。
自分がこれだけ動いて、慎重に進めてきたことを、頭ごなしに否定された気がする。「いや、それは違います。なぜなら—」と、つい反論したくなる。論理で、勝ちにいきたくなる。

僕も、最初は、はっきりとは言わないが、よくこれをやった。そして、たいてい、関係が悪くなった。

なぜ、反論すると関係が悪くなるのか

反論は、相手にとって「敵」だと宣言することに、近いからだ。

論理的に正しいかどうかは、関係ない。「あなたが間違っている、私がそれを証明する」という構図そのものが、相手を硬化させる。そして、人と人の関係が一度「敵対」モードに入ると、戻すのがものすごく難しい。次に何を提案しても、相手は「あの人がまた何か言ってきた」というフィルターを通してしか受け取らなくなる。(お互い様ではあるが)

そして、推進者にとって、いちばん厄介なのが、これだ。

明確に反対しきたり、協力しない人ほど、組織の中で影響力があることが多い。発言する人だから、目立つ。そういう人を敵に回すと、推進そのものが、その人の影響範囲から進まなくなる。一人を論破した代わりに、その人の周りの何人もを、まとめて失う。短期的には勝ったように見えて、長期では大きく負ける。

そして、もう一つ。反論する側の推進者も、消耗する。一度敵対した相手とは、その後ずっと、心の中で身構えながら付き合うことになる。会議で顔を合わせるたびに、少し緊張する。その消耗は、長く効いてくる。

では、どうするか

いちばん大事なのは、「論破しないこと」だ。

正面衝突を避ける。これは、推進者にとって、逃げではない。むしろ、推進を前に進めるための、戦略だ。

具体的には、こうする。反対の言葉が来たとき、すぐに反論しない。まず、「そう思われるんですね」と受け止める。賛成しなくていい。同意もしなくていい。ただ、「あなたの意見は、聞こえました」と、相手に伝わる形にする。それだけで、相手の硬さがかなり和らぐ。

そして、その場で説得しようとしない。「次に話す機会があれば、もう少し詳しく聞かせてください」「ご懸念のところ、よく考えてみます」と、一旦持ち帰る。これも、逃げではない。間を置くことで、相手の感情が落ち着くし、こちらも冷静になれる。即決即断の場では、たいてい、関係が壊れる。

長期で見たとき、反対者にも、いくつかタイプがある。本気で組織のためを思って反対している人。新しいことが単に怖い人。自分の権威がゆらぐのを恐れている人。単純にやる気がない人。それぞれ、効くアプローチが違う。共通しているのは、「論破では動かない」ということだけ。

そして、推進者として持っておきたい構えが、もう一つある。

反対する人を、敵だと思わないこと。

相手は、悪意で反対しているわけではない。その人なりの正しさがあって、そう言っている。たとえ的外れに見えても、その人の中では筋が通っていることも多い。これを「敵」と認定した瞬間、推進者の頭の中で、その人がずっと敵であり続ける。そして、その「敵がいる」という感覚こそ、推進者を消耗させる。

敵にしない。これは、相手のためというより、推進者自身のためだ。

今日の一言

明確に反対する人が出ても、論破しない。
受け止めて、持ち帰る。論理で勝つより、関係を悪くしない方が、推進を前に進める。目的が何かを忘れないように。

敵を作らないことは、相手のためでなく、自分のため。

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