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INTERVIEW|ユアサ工機株式会社 代表取締役社長 湯浅 博文 氏

「最後の1社」まで加工メーカー
人の和を大切に技術磨き続ける

ユアサ工機㈱(岡山市北区久米6)は、自動車エンジンや部品の再生、製作を原点とする加工メーカーで、2027年には創業80周年を迎える。
「未来に向けて、常に時代を担う開発創造型の企業でありたい。」というポリシーの下で事業領域を拡大している。
湯浅博文社長にものづくりへのこだわり、人材育成の方針などを聞いた。

――ユアサ工機の歴史、概要を教えてください。

自動車エンジンや部品の再生、製作を手掛ける「東洋自動車工業㈱」として1947年に創業した。
1961年には、三菱重工業㈱三原製作所の協力会社による全国初の集団化組合(協)岡山鉄工センターが設立され、当社もセンター内に久米工場を建設し、1970年には岡山市北区厚生町から本社工場を移転した。

グループ企業で重機の修理・販売の東洋重機工業㈱があったことから、建設機械の油圧シリンダーを自社で製作するようになり、続いてクランクシャフトの加工を始めた。
その後、精密加工と油圧の技術を使った自社製品として、伸縮ポールシステムを開発した。
先端部にアンテナや監視カメラ、照明器具などを取り付け、地上でコントロールして昇降させるシステムで、全国の放送局の中継車や通信会社の災害基地局車などに採用されている。
岡山以外では愛知県新城市とタイにも生産拠点があり、一貫して「加工」にこだわっているメーカーだ。

――「至誠 努力 人和」という社是を掲げています。

創業当時に定めたもので、「至誠」とは誠実に仕事に向き合うということ。
「うそをつかない」と言い換えてもいいかもしれない。
不具合が発生して、うそをついてしまうと余計に大変なことになってしまい、顧客からの信頼も失う。
ミスはほめられたことではないが、ミスそのものよりも、その後の対応の方が大切ではないか。

不可欠な価値観

努力は「技術を磨き続ける」ということ。
ものづくりの基本であり、日ごろから口酸っぱく話している。
「人和」とは文字通り人の和を大切にし、周囲の人と協力できる人ということ。
クランクシャフト加工を例にとると、材料の手配から旋盤、穴開け、熱処理、表面処理、研磨…と約20工程の連係プレーが求められる、決して一人ではできない作業で、「和」は仕事をする上で欠かすことのできない価値観だと思っている。

――技術の向上のため、どのように取り組んでいるのですか。

自主的に取り組むまじめな社員が多いのだが、会社としては一つの機械だけではなく、いろんな機械を扱うことのできる多能工化を進めている。
一口に加工と言っても工程ごとに難易度には差があり、先輩が指導役になり、マスターできたものは「技術マップ」に落とし込んでいる。

私は仕事のことを好きなサッカーにたとえることがあるが、サッカーは「いかに相手チームよりミスを少なくするか」の戦いであり、それは仕事でも同じこと。
ミスをゼロにはできないが、少なくすることはできるはず。
「ミスが少ない人=技術力の高い人」ということだろうし、「自分たちは優秀」という意識が強くなると進歩は止まってしまうので、ミスは起こることを前提に、みんなでミスをなくしていく姿勢を目指している。

価値基準を共有する

人和については、先代の社長がよく「価値基準を共有する」と話していたのだが、毎年の仕事始めで私が1年の目標を発表し、全員のベクトルを揃えるように努めている。
また、自分たちの作ったクランクシャフトや油圧シリンダーがどのような製品に使われているのかを社員に紹介し、モチベーションを高めるようにしている。
新入社員歓迎を兼ねた花見やビアガーデンパーティー、3年に一度の海外旅行など社内行事も数多く、このような機会を通じて「人和」をより高めていきたいと思っている。
忘年会は通常工場ごとに実施しているのだが、来年の80周年では海外を含む全拠点の社員に参加を呼び掛けて盛大に開く予定だ。

――現状の課題についてはどのようにとらえていますか。

働き方改革への対応が最大の課題。
おかげさまでユアサ工機の技術力、必ず納期を守るという姿勢を評価していただき、コロナ禍でも事業に影響はなかった。
クランクシャフトは自動車以外にも取引を拡大しており、大手自動車メーカーの開発品加工、レース用車両への搭載用加工など、高度な加工技術を必要とする仕事も受注できるようになった。
しかし、品質を維持するのはもちろんのこと、厳しくても納期を守れなければ、いつまで受注が続くか保証はない現実もある。
残業や育児休業などの社会的規制は年々厳しくなっており、企業が生き残るためには1日8時間の就業時間で生産性を高める工夫が欠かせない。

また、少子高齢化が進む国内市場は今後縮小が避けられず、これまで以上に利益率を重視しなければならないし、自社製品の比率を高める必要がある。
あとは熟年技術者から若手への技能伝承、DXやAIの導入、海外事業の強化など、「全方位作戦」で押していきたい。

――どのようなタイプの人材を求めていますか。

「加工が好き」ということは絶対に譲ることのできない条件で、採用する前に必ずはっきりと伝えるようにしている。
あとはまじめな性格であれば、仮に採用面接では緊張して一言もしゃべれなくても、入社後にきちんと教育するので問題ない。
全員を平等に扱い、厳しいと思われても、せっかく加工メーカーに入社したからには高い技術を持ち、世界に誇れる加工技術者に育てるのが自分の責務と考えている。

外部の人から「事業転換しませんか」と声を掛けられることもあるのだが、当社はあくまで加工メーカー。
加工という業務が世界中でなくなるまで、最後の1社になるまで加工にこだわり続けるつもり。
繰り返しになるが、そのためには技術力を磨き続けないといけないし、安定して利益を出して社員に還元するのが私の目標だ。

ユアサ工機株式会社

1947年創業。業務内容はクランクシャフト加工、油圧シリンダー開発・設計・製作、伸縮ポールシステム設計・製作・販売など。サッカーやモータースポーツに対するCSR活動も積極的に展開している。従業員184人。売上高57億円(2025・9期)。

ユアサ工機HP http://www.yuasakk.co.jp