ハンブルクの傘専門店
ここ2週間、雨ばかり降っている。季節の変わり目は大抵このような天気で、その雨が止むといきなり次の季節がやってくる。
大抵夜のうちに降り、昼間はしとしとと降ったり止んだりを繰り返す。
3月半ばまで暖かい日が続き、花が咲き始めていた。日本から持ってきた春のコートを羽織って、やっとこの季節になったと弾む気持ちになり、ダウンのコートをクリーニングに出そうか悩んでいるうちに、またこうして長雨となり、体感温度1度に逆戻り。寒くて着込むこととなる。
ドイツ人はこのくらいの雨では傘をささず、フードを被って平気で歩いている。
「何故傘をささないの?濡れると不快でしょう?」と質問したことがあるけれど、それが文化なのである、との返事だった。
日本の家に置いてきた、長い傘を思い出す。昔から傘が大好きだった。傘というもののフォルムが好きであるし、何といっても日本の傘は美しいものが多い。
日本の洋服や小物は美しいものが溢れていて、その中でも特に傘は素晴らしい。機能的でありつつ、骨組みは丈夫で、そして美しい柄があまた存在する。
傘を見る度、日本人の美意識の高さを思う。
私のお気に入りの傘は銀座三越でたまたま見つけ、あまりの美しさに感動して買わずにはいられなかった一品。
売り場の中でもいかにも高級な傘が集められている一角があり、『見るだけ』と思いつつ近づいてしまった。その中の一本は理想的で、選ぶのに3秒とかからなかったのだった。
4万円弱したので一瞬躊躇ったけれど、もう手から離す気にならず、スーツケースを引きながら、晴れた良いお天気の中、持ち帰ったのだった。
雨が降っても傘をささない人が多いドイツには、素敵な傘がない。人生において、傘に重きをおかないということがよくわかるがっかりな品揃えだ。
デパートの売り場に行ってみてもさほど種類はなく、あげると言われてもいらないようなものばかり。無地を買えばいいと思っても、色が嫌い、そしてやけに重い。またその全く気に入らない傘たちの値段は日本の3倍。絶対にいらない(~_~;)
重い傘は強度はあるのだろうけれど、持ち歩くのには結構負担になるような重さ。手ぶらの人も多いドイツの人たちは、出がけに余程降っている時以外、持ち歩かないに違いない。
『降ると心配だから念の為』とバックに入れておく日本的な発想はまず持たないに違いない。
一昨年、日本から持ってきた折り畳み傘の骨が傷んでしまい、バックに入れて持ち歩ける軽量の傘をずっと探していた。
必要に迫られ、結局ドラッグストアの入り口に置いてある、どうということのない無地の傘を嫌々買うことにした。
色は4種類、変な水色、変な紺、変な黒、そして濃いピンク。ピンクくらいしか選びようもない。(紺とか黒であっても、変な色というのが存在する)
重いけれど、ワンタッチで開くタイプなので、もうその機能だけあればいい!(T ^ T)と妥協する。
超軽量の傘はどこでも見つけられないままだったので、もうそのことは忘れることにしていた。
そして先日、小旅行で行ったハンブルクを歩いていた時、思いがけず傘の専門店を見つけた。
「傘のお店がある! ドイツなのに!」と思わず興奮して叫んでしまった。
ハンブルクは港の街である。物資が流通しやすいこの街は、私が住む街と比較して、同じドイツであっても物価はだいぶ安い。
移民が多い点は同じであっても、人の様子がだいぶ違って、賑やかな地域は浮浪者の数も多く、雑多な印象が強い。
また中央駅から少し離れた地域に、大きな歓楽街があるのも驚きだった。ドイツに来て初めて見る歓楽街、まだ売れていない時代のビートルズに纏わる広場がその真ん中にある。それを眺めに昼間通っただけなので、全て店は閉まっていたけれど、夜はかなり治安が悪そうな気配だった。
どうしてこんな場所にビートルズが、と口にすると、「リバプールに少し似ているからかなぁ‥」と夫。
こうした雑多な諸々が混在する街は、活気があって便利な点も多い。
だから傘の専門店もあるのだ!
ショーウィンドウを覗くと、優しい花柄の品が並ぶ。好みの物があるかどうか微妙な気もしたが、久しぶりの専門店、楽しみに眺めることにする。
マダムがにっこりと出迎えてくれて、先程外から眺めた傘を手に取らせてもらうことにする。
想像の3倍の重さ💦持ち手の部分がお洒落だと思ったがその部分がずっしり重い。他の優しい花柄の品を幾つか持たせてもらったが、とにかく重い‥
「マダム、重すぎます💦」と伝えると、
「じゃあこちらへ」と手招きされた。その一角には私が探し求めた超軽量の折り畳み傘が!✨✨
2年ぶりに見る超軽量傘☂️、感動した🥹
必要な物がない、ということに慣れたと思っていたけれど、やはり[必要な物が手に入る]ということは喜びだ。
問題は柄。ポップな色のストライプ、地味な黒、紺、おばあさんっぽい花柄、
『残念ながら、これは選びようがないかも🤔』と思ったその時、一本だけ他とは傾向の違う、雨粒色の葉っぱのような柄を見つけた。
私が選ぶ傾向の柄ではない。でも何故か既視感がある。
『何だっけ? どこで見たんだっけ?』
夫が「拡げて見たら?」と言うので、あまり期待せず開いて鏡で見ると、思いのほかレトロで可愛らしい。
何だかとても嬉しくなり、
「これをいただきます」と即決。
日本の超軽量折り畳み傘の価格よりは高いけれども、ドイツの価格としては安価なほうだ。値段より何より、とにかく存在してくれただけでありがたい。
犬のお散歩バックに入れても殆ど負担を感じない。散歩の時の雨の心配が解消できた。
降ったり止んだりの今の時期、何てありがたいのだろう🎶
翌日は小雨が降り始めていた。早速使うことにする。
ホテルを出る時になって、夫が傘を家に忘れてきていたことが判明し、
「良かった〜♪ 昨日買っておいてくれて」と。
持ってきていた重い濃いピンクの傘を快く貸す。夫は使えれば良いというタイプなので、色も何も気にしない(^◇^;)
新品の傘を拡げて、外にあった鏡に映った時、突然何十年か前の記憶が蘇った。
姉が大学生の時に着ていたブラウスの柄に似ている!
ハマトラスタイル。シャツブラウスに、ベルト部分に金色のビット飾りの付いた紺のボックスプリーツのスカートを合わせていた。ほっそりした姉はあのブラウスがとても似合っていた。
姉に傘の柄の写真を送ってみた。
「本当だ! 似てる〜♪ 懐かしい」
と、まもなく返信が来たのだった。
⭐︎追記
妥協してドラッグストアROSSMANNで買ったピンクの傘は336g、持ち手と骨の部分がずっしり重い。
ハンブルグの専門店で買った超軽量傘は154g。
次回は[ハンプルグ、ブレーメンの小旅行]相変わらずICEがトラブる旅話
