耳の後ろに現れる謎
「行くことにするね!」朝、愛犬に宣言する。
支度をする私を見ながら、もう既にワンコは困り顔で、お目々はうるうるし始める。玄関まで見送りに来た悲しげな姿に、後ろ髪を引かれるけれども、この1ヶ月ママはずっとお家にいたじゃない? 姿が見えなくなれば寝ているはずなので大丈夫、と自分に気合を入れる。
昨日は久しぶりにこうして一人で出かけてみた。美容院の予約があったので、『気をつけて出かければ大丈夫』と気合を入れて、行くことにしたのだった。
何しろ日本人美容師さんは、いつも予約が1〜2ヶ月先まで取れなかったりするので、これをキャンセルして機会を逃したくはなかった。
車での短時間の外出は何回かしていたものの、一人で歩き、バスや電車に乗るのは久しぶりのこと。
めまいが起きている時期は、下を向くとクラっとするので、長いエスカレーターが異常に怖い。だから大きい駅の地下鉄のホームに降りるのがとても苦手。
昔、ある疲れていた日、下りのエスカレーターに乗り、ふと足元を見た瞬間、ふわ〜っとめまいが起こり、気づいた時には転げ落ちていた。たまたま階の中間地点で、落ち始めた時点での高さがそれほどではなく、他の人がいなかった為に、誰も巻き込まなかったのが幸いであったけれど。
この時、手すりにはつかまっていなかった。
近くの知り合いの内科の病院に行って、ボロボロに皮が剥けて、流血した膝の手当てをしてもらった。医師は、
「あのさぁ、怪我はこの程度で済んだけど、何故落ちたか、それを考えなければいけないよ」
「‥‥は〜い😭先生」
いつも働きすぎだと注意されていた。
それ以降は、どんな時も手すりにつかまり、目線は上か横に向けている。
エスカレーターの手すりはステップと連動しているけれども、進む速さより、手すりのベルトの方が僅かに先行する。それは上りの場合は転倒防止に効果があるのはよくわかる。
しかし下りの場合も、手すりが先行するのは同じなので、うっかり何も考えずにつかまっていると、そのまま落ちる可能性がある😰
ドイツの駅全般、手すりの先行は日本のエスカレーターよりやや速いのだ。
なので、目線は上か横に向け、少し進む度に、手を置く場所を戻すようにしている。
そもそも手すりにつかまらないと不安な人は、できるだけエレベーターに乗るべきだし。
見ていると、それほど手すりにつかまっている人はいない。自分は大丈夫だとしても、いつ何時、上から誰かが転げ落ちてこないとも限らない。
『何があるかわからないので、念の為つかまっていた方がいいですよ』と全ての人に向けて、心の中で思っている。
またヨーロッパなので、ベタベタ抱き合って口づけを交わすカップルもよく見かける。案外年配のカップルも多い。
『あーた達! いくら好きでも、危険だからエスカレーターではやめなさい!』といつも思う。
さて、無事に美容院のある駅に到着した。歩いて数分、観光客で賑わう街の様子が久しぶりで新鮮だ。
とても久しぶりの美容室。この日の受付スタッフはドイツ人であったが、日本人が多いことで人気の美容室らしく、案内も日本風、ちゃんとロッカーも設置されているし、スタッフの物腰も柔らかく、とても丁寧。
ドイツの美容院はスタッフが大抵ラフだし、荷物置き場は適当だし、染める時の耳カバーはないし、ヘアマニキュアはないし、日本人の髪がわかってないし、シャギーの技術はなくて入れられないし‥‥言いたいことが一杯( ⌯᷄௰⌯᷅ )
(*尚、昨日行ったこの美容室にもヘアマニキュアはない。日本は選択肢があって羨ましい😭)
いつもの美容師さんが休養中の為、初めての美容師さんの予約を取ってあった。なので、以前に別のドイツ人のサロンにて強過ぎるパーマをかけられた経緯の説明、自分で試して失敗した前髪カット、姫カットの件も聞いてもらう。
⚫︎失敗談はこちら
そして髪型の説明の仕上げは、過去一気に入っていた時期の写真を見せ、それに近づけてもらうように頼んで説明終わり。
毎日、主婦は自分のことは自分でやり、家のこと全般をやり、お世話はしても、人にお世話をしてもらう、ということがほぼない。
その点美容院は座ったままで、人に全てをお任せできる。なんて楽なのだろう。
久しぶりに全く知らない日本人とお喋りして、髪をお任せする。しばらく寝込んでいたこともあり、夫と犬とばかり喋っていた身である。改めてこういう機会は貴重だと感じる。
そのお喋りの中で、8月の旅行中に気づいて、疑問に思っていたことを思い出した。若い美容師さんだけれど、きっと知っているに違いないと思い、質問してみた。
私は数年前から白髪が出るようになり、主に頭頂部にある。そこだけ染めているのであるけれど、旅行中、助手席の鏡を見た時、ふと耳のすぐ後ろ、髪の内側のところに、左右ともに数本ずつ白髪があることを思い出した。
内側なので目立たず、いつも忘れていたのだけれど、車に乗っている間暇だったので、念入りに調べてみた。助手席の明るさ具合は、白髪チェックに丁度良い。
すると久しぶりに眺めたその部位の白髪に異変が起きていた。途中まで真っ白だったのに、そこから新たに生えてきた部分が数センチ黒に戻っている。
左右の数本ずつの髪は、皆同じような位置から、全て黒に戻っているのだ。見つけにくい場所なので、そのまま放置していたから、何ヶ月か経つ間に長く伸びて、この現象を確認できたのだった。
私の浅い知識では、確か一旦白髪になると、その毛根の部分は髪を黒くする色素がなくなっている為、以後黒い髪は生えてこないはず!
どうしてこんな風になるのだろうと、しばらく夫に説明し続けたものの、そんな現象を見たことがない夫からは、当然のように解は得られない。
まあ、黒く戻ったのは良いことだと話して終わりにしたのだった。
長くて抜きやすかったので、ついでに全部抜いて片付けた。
(*白髪を抜くと、毛根を傷めるので抜いてはいけません。気になる場合は根元でカットしましょう💇♀️)
その話を、美容師さんに質問してみた。考える間もなく、すぐ彼女は答えてくれた。
「耳の後ろが白髪になるのは、原因はストレスだと言われているんですよね」と。
「強いストレスがかかると、その日からその部分に生えてくる髪に白髪が出現するらしいですよ。それで、そのストレスがなくなると、何故か他の部分と違って、また黒に戻るんですって」
この人、知ってた!!!!
私は大喜びで話を聞いた。いつもの美容師さんが休みと聞いてがっかりしたものの、この人に頼んで良かった、と感動する。
「で、黒く戻った部分はどのくらいありましたか?」と聞くので、
「6センチくらいですね」と答えると、
「1ヶ月に1センチは伸びるから、半年前に、何かストレスの原因が消えたんじゃないですか? 心当たりありますか?」
「あります!!! 」元気に答えた。
ありすぎるほどある! 私を何かと悩ませた苦手な人が、数ヶ月前に帰国したのだ。
大変なストレスを人に与えるタイプ、世の中にはいろいろな人がいるけれども、日本人でありながら日本語が通じない、常識が通じない、立場をわきまえず人に対して失礼なことをする、更に大嘘つき‥‥etc
その人に関して、言いたい事は山ほどあるけれども、狭い日本人社会の中、我慢を強いられた。夫の仕事に何か影響してはいけないからだ。
帰国してホッとしたものの、嫌だった事は胸の中に燻り続けた。
しかしその人がいなくなってからの数ヶ月、現実的には髪が黒く戻るほど、ストレスは軽減していたようだ。
また最近になって、その嫌だった事の諸々を、日本の知り合いに吐き出したところ、随分すっきりとした。腹が立ちすぎて、永遠に忘れられないかも、と思っていた記憶が薄れたのだった。
カウンセリングの効果とはこういうことかと感激した次第。やはり我慢のしすぎは、本当に身体に良くない。
そして、信頼して打ち明けられる人の存在はありがたいと心から感謝したのだった。
美容師さんにも簡単にそんな話をして、共感をしてもらう。我慢っていけないですよねぇ、嫌な事をする人には近寄りたくないですよねぇ、と若い彼女は頷く。
そう、共感してもらう、これもとても大事な事。髪と共に心が軽くなる。
ダメージケアにかなり効果的だというトリートメントをしてもらって、カットを終え、終了。
楽しかったし、気持ち良かったし、美容院ってありがたい😭✨✨
久しぶりに指通り滑らか、サラサラ、ツルツル。
いつもは巻き髪にしているけれども、トリートメントをした後なので、熱を加えない方が望ましいとのこと。またトリートメント代の中には、週一自宅で4回継続して使用する、ほぼ同じ効果のセットも付いてきた。
もっと早くトリートメントすれば良かった。何故しなかったかというと、スタッフは日本人だけれど、使う製品は日本製ではないので、信用していなかったから(^◇^;)
日本の3倍支払って、効果がないのでは馬鹿らしいからだ。以前、アレルギーがある為、相談してヘナで染めたものの、白髪は全く染まらなかった経験がある。染まらなかったからといって、普通の白髪染めではかぶれしてしまう為、やり直してもらうことも避けるしかなく。
やはり日本のヘアマニキュア以外は無理だということらしい。
(*ところが、ドラッグストアの製品には大丈夫なものがあるので、頭頂部はそれで何とかなっている)
ドイツでの初めての美容院でのがっかりのおかげで、いろいろ信頼を失ったドイツの製品は、ここのトリートメントのおかげで評価を取り戻す(^-^)
久しぶりに完全なストレートの髪で街を歩く。「どこから来たの? 」と声をかけられた。へへっ
こちらにも黒髪の人は多いけれど、
「日本人の真っ直ぐな長い黒髪というのは特別だ」とドイツ人から聞いたことがある。
髪がサラサラだと、気持ちも軽くなる。途中のマルクトで、季節の果物を数種類買い求める。
もう二度と美容師の言いつけに背いて、強いパーマをかけたりしない、と改めて思う。そして、耳の後ろの髪が白くならないような生き方をしたいものだ。
そんなことを思いながら、しっかりエスカレーターの手すりにつかまって、地下鉄のホームに向かったのだった。
—了—
