AIをしのぐ智慧の創造③ バブルの崩壊を見抜き、莫大な利益を出したソロスの「再帰性の理論」とトレード法
〇 まえおき
・前回は、「AIバブルは幻の世界である」という話をしました。
・今回は、リーマン・ショックの直前に、市場がバブルであることを警告し、その原因を『再帰性の理論』で説明したジョージ・ソロスの『ソロスは警告する』を紹介します。
1 現在のAIバブルとまったく同じ状況だったリーマンショック前の市場
・「ソロスは警告する」の序の部分の抜粋を紹介します。
現在の世界は、アメリカの住宅バブルの崩壊に端を発した、深刻な金融危機のさ中にある。この危機はバブルの崩壊以上のものである。1929年の大恐慌以来の最悪の状態が訪れ、ドルを国債基軸通貨とした信用膨張の時代が終焉を迎えようとしているのだ。
・ソロスは、「2008年のリーマンショックで信用膨張の時代が終焉する」と予言しました。
・実際には、その信用膨張はさらに拡大しています。
・2020年のコロナショックと2023年からの生成AIバブルでさらに大きくなっていき、現在は、2008年当時とは比べようもないほど大きな膨張をしています。
(「今回こそほんとうの終焉である」というのが私の考えです。)
・ソロスはバブルの原因を次のように説明しています。
私の分析では、この超バブルには他のすべてのバブルと同じく、人びとが誤った投資行動を続ける原因となった「支配的トレンド」と「支配的な誤謬」とが存在した。
・「支配的トレンド」とは信用膨張のことで、「支配的な誤謬」とは、間違った市場原理のことです。
・間違った市場原理には以下のようなものがあります。
A 金融市場のさまざまな変数は均衡値に向かって収れんする。
(この経済学の理論が現実的でないのは、経済学者が株で利益を出せることは少ないという経験則からわかります。)
B 市場参加者は完全な情報を持って経済活動をすることができる。
(「AIトレードで勝てる」という感覚です。これが勘違いであるとソロス入っています。)
C 理性に対する誤解
(学問は性善説が前提で成り立っていますが、現実の世界は魑魅魍魎の世界です。法律すれすれの悪行がたくさんあることもみんなが暗黙の了解です。)
2 ソロスのトレード法
・ソロスの投資法については次のように書かれています。
私は、均衡点から遠い市場を見つけ出しては、その後の動きを予測して儲けることに特化し、大きな利益を上げていた。
・バブルというのは均衡的から遠い市場です。
・ソロスは、そこで勝負をし、莫大な利益をあげていました。
・ソロスはバブルの原因を「再帰性の理論」で説明しています。
3 再帰性の理論
・「再帰性の理論」は難しいので、一般的な理論と対比して説明します。
[一般的な考え方]
・世の中にモノとか現象(=対象)があり、人間がそれを観察して、いろいろな判断をします。
・科学の世界では客観的な対象があり、正確に観察すれば、それが真実である。
・人間の社会では、正確に観察することと(純粋理性)と、それに対して「何をするか」(実践理性)の両方で善悪が決まる。
・つまり、「世の中には客観的な対象があり、それを判断する主観的な心がある」という考え方です。
[再帰性の理論]
・人間は完全な知識を持つことができないので、正しい観察はできない。
・正しい観察ができないので、間違った情報をもとに判断を下す。
・この間違った判断が世の中の歪みを大きくする。
・株式市場の場合、株価は常に高すぎるか安すぎるのかの歪みを持っている。
・経済学で説かれるような取引が行われれば株価は適正価格に収れんするはずである。
・しかし、歪んでいる株価に対して、間違った情報を受け取って、間違った判断をすると歪みが大きくなる。
・そして、ドルが基軸通貨となった20世紀の後半からは、「歪みを大きくすることが経済発展につながる」とする当局や市場関係者が資産バブル(=信用の膨張=負債の膨張)をつくっている。
4 信用の創造と信用の膨張
[一般的な考え方]
・「歪みを大きくする」というのは、「キャッシュフローを大きくする」ことです。
・不況の時に財政投資や金融緩和でキャッシュフローを大きくして景気回復をはかるのが通常の経済政策です。
・リーマンショックもコロナショックもこれで不況から脱しています。
・経済界を信用している人は、これを「信用の創造」の結果と考えます。
[現実に起きていること]
・しかし、リーマンショック後の中国や、日本のアベノミクスやコロナショックのあとの世界経済で起きたことは、財政政策と金融緩和による「信用の創造」ではなく、「信用の膨張(借金の膨張)」です。
・人間の体にたとえれば、病気が治って健康になったのではなく、輸血や麻薬の力で元気に見せているだけです。
[再帰性の理論]
・そして、今回のAIバブルは人間の間違えというよりは、生成AIの力による確信犯なのです。
・別の記事で、経済学的な説明はしようと思いますが、ここではたとえ話で説明します。
〇 現在のバブルをアメリカのゴールドラッシュで説明する
・現在のAIバブルを、アメリカのゴールドラッシュの例で説明します。
・アメリカのゴールドラッシュのときに一番儲かったのは、「ツルハシを売った人である」という話があります。
・AIバブルのツルハシは「半導体」です。
・そして、今、株価が高騰している日本の企業やエヌビディアが売っているのは、ツルハシ(半導体)をつくるための工場(データセンター)をつくるための道具(これも半導体)です。
・ツルハシ自体が利益を生んでいないどころか、利益を生むツルハシをつくるところに何百兆円の投資をしているのです。
(赤沢大臣がトランプさんと約束した80兆円の投資とか、孫さんがぶちあげている百兆円以上の投資計画がこれです。この件に関してましては、別の記事で具体的数字を示して説明します。あぶくのようなお金が日本の国家予算やGDPを超えているのです。)

