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【第ん号】What Am I T alking About? コニシ木の子&えむのマイトン編・感想

■【第ん号】なんのはなしですか What Am I T alking About? コニシ木の子&えむのマイトンこのZINEは、「初めまして」から始めるのがいい気がする。著者の二人とは面識はあるが、今日はその情報をいったん横に置き、感想を綴る。(※ネタバレ一部含みます)

・はじめに、そして。
だれだかわからない、誰かの人生を読む本。

路地裏の案内人と、路地裏を遊び続ける京大生に誘われ、わたしはページを捲ることにした。「人生」を描いたZINEだと言う。この二人は何者なのか。「なんのはなしですか」を切符に、わたしの旅が始まる。では、いってきます。

■第一章「日常の秘密」
・「私達は、誰かの日常になっている」ーコニシ木の子

知らないおじいさんの観察日記、なのだろうか。そのゴルフの素振りは、わたしの脳天に間違いなく衝撃を与える。視点の切り替えが凄まじい。言うなれば「おじいさん360度カメラ」である。しかも、この筆者、一人で何かと対峙している。「わぁ、この人むっちゃ葛藤しとる。ーーいや、葛藤してるのはわたしか」と、物語の内輪差にやられ、奇妙な語り口とリズムは単なる「日常の交換」だったことに気付く。思考の畳みかけと圧倒的に鮮烈な日常。ーーいつのまにか、没入していたわたしも共犯である。
沸点は、永久に低温だ。確信犯である。コニシ木の子の正体は不明だが、察するに「おじさん」か「ハッピー野郎」の二択か、もしくは両者か。

モスエリの学び:日常はドラマじゃない。だが、ドラマは日常からしか生まれない。

・「路地裏で遊ぼう。」ーーえむのマイトン
ゴルフクラブで殴られたような衝撃のあと、わたしは「京大博士」に助けを求めた。だが、度肝を抜く告白から物語は始まる。ずいぶんと早い玉砕である。しかし、読み進めるうちに、わたしはえむのマイトンという男の輪郭に、どうしようもない愛おしさを感じ始める。かつて「みんなと一緒がいい」と京大の門を叩き、エリート街道を目指した秀才。その彼が、挫折さえもさらりと書き流す。その素朴で飄々とした歩き方が、文面から匂い立つのだ。
だが一方で彼は、理知というレイアウトを使い、社会の奥行きを「大通り」と「裏道」に鮮やかに描き分ける。一人の人間が「道」を決める瞬間を目撃することになる。ネジは飛んだようだ。どうか永遠に見つからないで欲しいと願う。
「みんなと同じ」というビックリマンシールを自ら剥がし、役に立たない道を選ぶその剥き出しの誠実さに、裏道のカニもびっくりだろう。
「変態」への目覚めは、見なかったことにする。

モスエリの学び:大通りに正解はない。だが、裏道には「本当の自分」が歩いている。

■コニシ木の子と、えむのマイトンの対比が面白い。
コニシ木の子は、いわば「碇」のような人だ。文章のなかにどこか「待つ」姿勢がある。時間を追いかけるのではなく、その場に留まり、日常の可笑しさを拾い上げながらも、その眼差しは優しく誠実で、深い。

一方で、えむのマイトンは「帆」のような人だ。
背筋をピンと張り、やってくる風をすべて正面から受け止め、壮大な迷子を繰り広げる。誰よりもシャンと整っているように見えて、その内側は誰よりもとっ散らかっている。それが彼の人間味であり、知性の遊び場なのだ。

モスエリの学び:底に深く沈む「重すぎる碇」と、風を捉えてシャンと迷走する「帆」。この二人が揃えば、もう最高の航海は見えている。
たぶん。

■「路地裏のひだまり」ーー誰なんだよMAX
ちょいちょい挟まれるひだまりのコーナー。おじさん紹介の案内板である。一休みしたいのに、イマイチ休めない。

モスエリの学び:
さこう:軽薄は時に深い
みぞーち:パチンコ屋をマーク
persi:初期メンの口数の少なさ
げんちょん:攻めタギル男

■「五章構成」で解体しきれない妙。
最大の要因は「おじさん」は日常であること。

五章「も」ある。その「も」は、そもそも罠である。どのページを開いても必ず、説明のつかない「おじさん」が現れる。徐々に現れるおじさん像が次第に輪郭を帯びるが掴みきれない。だが、この人たちが、どうしようもなく好きになっている。癖になるとはこういうことだ。

モスエリの学び:日常は、だいたいおじさんの形で現れる。なんのはなしですか

■わたしが推したいこの一編

・第四章「変態道」ーー「内側に秘めた色」えむのマイトン
彼の妄想が軽やかに暴走するこの章は、やはり秀逸だ。なかでも「内側に秘めた色」は、彼の変態道がもっとも鮮やかに花開いた一編だと思う。
驚くべきは、その変態性のど真ん中にある、妙なほどの誠実さだ。純粋な興味が理知と結びついた瞬間、物語は真骨頂を迎える。あの「帆」のように軽やかな文体のおかげで危うさは一見和らいで見えるが、比喩の角度は絶妙にズレていて、どうにも万人受けを拒んでいる。そこがまた彼らしい。彼は、かなり真顔で書いている。たぶん、ものすごく真剣に。
相手を安易に決めつけず、誠実に向き合おうとした結果、自分で自分の罠にかかっていくその不器用な姿に、どうしようもない愛おしさを感じてしまう。彼が持つ発色の良さが、この一編には凝縮されている。
道理はスマートに組み立てられているはずなのに、読後感にはふっと肩の力が抜けるような風通しの良さがある。それは彼が「正しさ」よりも「面白さ」を先に見ているからだろう。人の重荷をそっと外してくれるような優しさは、特にショートショートで際立つ。不思議と心がほどけていくが、散りばめられた理知は隠しきれない。インナーカラーの女たちが脳裏に張り付く。罪深い男だ。
ページのレイアウトを一目見ればわかる。彼は確実に人の視界を広げ、このZINEをいい意味で引っ掻き回すエッジの効いた存在だ。その柔軟さがあるからこそ、この物語はどこまでも自由に広がっていく。これぞ、知性の無駄遣いによる最高に贅沢な寄り道体験だった。

■第五章「それでも、生きる」
「探せない過去最高」ーーコニシ木の子
十七歳のコニシ木の子の「記憶」を「現在」に引き継ぐはなしである。大好きである。読みながら、「わわ‼︎もーこの二人なんなん」と、笑い転げている自分をぜひお見せしたい。
全力の無能、無能の限界、そして有能な可笑しさ。その全部がぎゅーーっと詰め込まれている。あの時だからできたことを、今の物差しで語る。それが、もう最高なのだ。ここまでリアルに記憶を引き継ぐことができるのかと、思わず唸り、自分もこの中にいるような感覚に陥る。
そして何より、タカポンとコニシ木の子の関係性がいい。良すぎる。滑稽と呼ぶには硬く、アホと呼ぶには、わたしはまだ浅い。タカポンとの関係性がないことに嫉妬する始末だ。そこにあるのは、ただひたすらに愛おしさである。軽妙な会話が転がり、笑いが湧き、また揺れ、真面目なタカポンの、ちょっと潤んだ瞳まで目に浮かんでくる。ダメだ、これを書きながらもう笑ってる。
どうしようもなく日常的な場所。どうしようもない二人の葛藤。明日を気にしながら、今を真剣に生きる二人。
破天荒な文学。その破壊力に、腹が捩れるほど笑ってしまうのだ。終始、何言ってんだろう、この人たち。

ーーいや。めちゃくちゃ、かっこよくない?

もはや、虜である。タカポンの絶望の先にコニシ木の子がいたことを、心より安堵する。そして、のちに語られる二人の振り返りもまたいい。これぞ、「なんのはなしですか」である。その概念はとうに知っている。
コニシ木の子の文章の特徴は、その過剰すぎる観察眼だ。可笑しさを、さも普通のことのように、淡々と語るその距離感がたまらない。そして記憶は、放っておけば静かに薄れ、記録しなければ消えていくものだ。だからこそ、コニシ木の子は「書く」ことに心を燃やしているのかもしれない。
「はじめに」の言葉はここで蘇る。「書けるから生きている」。書きたいからでは、なく。書けるから。
本当は、こうやって生きたいと思いながら、どこかで諦めた人がいるのかもしれない。
ーーそんなふうにすら思えてくる。
この一編には、ふんだんに人生が詰められている。日常とは、ただの時間の積み重ねではない。「なんのはなしですか」は本当のこと、私自身のことを描くこと。そして、生きていることに価値を見出すことなのだ。こんなに笑って、心が動かされる。この瞬間に触れられる喜びをただ、噛み締める。
この作品に出会えたことは、間違いなく、わたしの生涯の宝物である。試しに、水鉄砲でも買ってみようか。どこに狙いを定めるかは、秘密である。

■おわりに
この二人が出会った奇跡。ーー旅はまた、ここから始まる。

コニシ木の子と、えむのマイトンの奇跡の初対面に、わたしはウッカリと立ち会ってしまった。当時の二人の言葉をここに置き、結びにしようと思う。

コニシ木の子
ずっと「#なんのはなしですか」を一人で使ってきた。面白いって確信がある。このタグは面白い。みんなで、何かやりたい。ティッシュとか作りたいし。面白くない?遠回りしながらが、俺に合ってる。タグを使って欲しい。そしてどうか、書き続けて欲しい。それが、願い。

えむのマイトン
まだまだ、広がっていくと思うんですよ。キッカケとかで変わる。まずは、チャレンジだと思ってます。こうして会えたことで何か変わる気がする。

 のちに、コニシ木の子はこう語る。

あの時、言葉にしたことが、全て叶っている。

2024年11月12日、ヨコハマ。
ここから、この二人の旅は始まるのだ。
一見すると真逆の二人が、ガチリと噛み合った。正解の地図なんて、もういらない。この碇があれば自分を見失うことはないし、この帆があれば、どこまでだって面白がれる。

あの日、わたしは、三人目のおじさんになれたのだろうか。いや、突き進む波の中で迷った時、「ただいま」と言える仲間になれた、それで十分だ。

大好きな場所を作ってくれて、ありがとう。
最高の航海は見えている。たぶん。
あー、おもしろかった♡♡

#なんのはなしですか

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