日本で一番人口が少ない町に出来ること
山梨県には日本で一番人口が少ない町があります。
南巨摩郡早川町がそうです。
人口783人、世帯数500。平成の大合併でもどこの市町村とも合併せずに、独自の歩みをしてきました。
私が初めて早川町を訪れたのは三十数年前のことです。
「夏休み、家族旅行どこがいいかしら?」
「おんせん!」保育園児の娘は即答です。
「温泉?渋いわね。ほんとに温泉でいいの?」
「鄙びた温泉に行きたいね」と夫も賛成。
私たちが選んだのは、早川町の西山温泉 元湯蓬莱館(ほうらいかん)でした。かつての湯治場を今に伝える歴史ある温泉宿です。
部屋に案内されると、大人用浴衣に加えて男女の子ども用浴衣がありました。子ども用浴衣の上には手持ち花火と「楽しんでくださいね」と書かれた一筆箋。細やかな心遣いが嬉しかったです。
それから、しばらく早川町を訪れる機会はありませんでした。久しぶりに早川町の名前を出したのは、またしても長女でした。彼女は修士論文に取り組んでいました。都市計画を専攻する長女は、重要伝統的建造物群に選定されている赤沢宿を題材に過疎地域の存続を研究テーマにしていました。
取材のために、頻繁に帰省して赤沢宿を訪ねるとのこと。
「ちょっと待って。学生がいきなり訪ねて取材なんてできるの?」
「早川町にはね、日本上流文化圏研究所があって、学生の研究もサポートしてくれるんだよ。もう、何回かメールや電話で相談してるから、大丈夫だよ」
「上流圏文化研究所?」
「通称、上流研ね。学芸員が何人もいるんだよ。すごいよね」
初めて聞く情報でした。私は、ネットで情報を拾いました。
「山の暮らしの価値や魅力を後世に伝えるために、地域資源の掘り起こし、情報発信、住民や集落活動の支援、地域資源を生かしたビジネスモデル作りなど、様々なまちづくり活動を展開している」とのこと。
近年の過疎高齢化の影響で、多くの集落が限界集落になってきています。
そのような地域で、「山の暮らしを守る」をキーワードに、シンクタンク 兼 中間支援組織として、町の活性化のために様々な取り組みをしていることがわかりました。
そして、ある日娘から私たち夫婦は早川町に誘われました。
「早川町を取り上げて、論文書いた学生を集めて発表会があるの。私も発表するから、お父さんとお母さんにも来てほしい」
「どんな地域の学生が参加するの?」
「東大、筑波大、千葉大みたいに関東が多いけど、名古屋からも来るよ。あと、ほとんどが修士だけど、学部生もいるよ」
「私たちも行っていいの?」
「だから、誘ってるんだよ。関心のある町民も来るよ。大学院での発表には保護者は入れないから、いい機会だと思って」
久しぶりに早川町を訪れました。論文発表会には町長も来ていました。論文のテーマは多岐にわたっています。一般人が学生の論文発表を聞く機会は滅多にありません。
人口が1,000人にも満たない過疎の町、早川町。日本一人口が少ない町でもこんなことができるんだということに感動しました。
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