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第566回、ピンク・ヘアーの少女2


「やあ、ようやく目覚めたのかい? いや、やっと眠ったというべきか‥」

気が付くと、その青年は、何もない不思議な空間の中にいた。

「ここは、一体どこだ? お前は、確か‥ 転校生の魔女人間っ!!」

「おいおい、こんな美少女に向かって、魔女人間はないだろう。
ここはせめて、魔法少女って、呼んで欲しいね」

両手を上にして、オーバー気味な表現をしながら、彼女は言葉を続けた。


「ここは、お前の夢の中さ。
転校して来た時に言ったろう。夢の中は、俺の領域だって。
お前の夢の中に入る事なんて、俺には造作もない事なのさ」

「俺がここに来た理由は、分かっているな?
俺はいじめをする奴は、容赦なくぶっ倒すと言った。
俺はこれから、お前をぶっ倒して、ボコボコにしてやるんだ」

「ま、待てよ。 俺はお前には、何もしてないぞ。
俺がいじめてたのは他の奴だ。お前には何も、関係がない事じゃないかっ」

「それこそ俺には、関係がないね。
俺は、自分のむかつく事は、自分に関係がなくても、放っておけないんだ」

「ふざけるなっ。 このまま、黙ってやられてたまるかよっ」

そう言って走り出す青年に、彼女は指を組んで、呪文を唱えるのだった。


「領域展開。 無量リングっ!!」

彼女がそう唱えると、二人の周囲に壁が現れて、巨大なリングが出現した。

「この領域の中に入ったら、もう逃げ場はないぜ。
さあこのリングの中で、思う存分、ボコり合おうじゃないかっ!!」

そう言って彼女は、手に持ったグローブを、青年に向けて放り投げた。

今一、状況が分からずにいる青年だったが、どうやら彼女が、ボクシングで自分をボコろうとしているらしい事を理解すると、勝負に応じるのだった。

得体の知れない魔法の力で、一方的にやられるよりは、ましだからだ。


どこからか、試合開始のゴングが鳴ると、彼女は勢いよく、青年に向かって突進をした。だが彼女の動きは、思いの外他の女性と変わりがなく、青年は彼女のパンチを受けても、さほどのダメージを受けなかった。

しばらくすると青年は、彼女の動きにも慣れて来て、反撃の攻勢に出た。
以外にも彼女は、青年の攻撃を全て受けて、ダメージを受けるのだった。

「お前‥ 俺の事をボコるとか言っておいて、全然弱いじゃないかっ
人の夢の中にまで入って来て、一体お前は、何がしたいんだっ!!」

青年がそう言うと、彼女は、よろめきながら答えた。


「俺の魔法は、他人の夢に入り、夢の中の空間を、自在に操る事だけだ。
別に俺自身が、めちゃくちゃ強くなるとか、言った覚えはないけどな‥」

「あえて言うなら、夢の中では、殴り合っても、実際にケガをしない事と、やり過ぎても、お互いに死ぬ事はない事くらいだな」


「だがそれが、お前にとって、何の特になると言うんだっ。
今もこうして、一方的に俺に、やられているだけじゃないかっ!!」

そう言う青年に、彼女は、息を切らしながら、答えるのだった。


「夢の世界の利点は、二つあるんだぜ。
一つは、自分の思う様に、物や空間を変えられる事。
そして、もう一つは、心の中の思いを、誰にも知られない事だ」

「なあ、お前も、人には知られたくない、心の悩みがあるんだろう?
だったら、いじめなんかで、他人に吐き出していないで、自分の心の中で、この俺に、心の中の叫びや苦しみを、ありったけ吐き出せばいい。
俺がお前の、その心の苦しみを、全部まとめて、ぶっ飛ばしてやるよっ」

彼女がそう言うと、青年は、激高をしながら、叫ぶのだった。


「わかった様な事を、言うんじゃねえっ。
お前なんかに、俺の心の苦しみが、分かられてたまるかっ!!」

そう叫んだ青年の拳のグローブは、みるみるうちに姿を変えて、ハンマーの形状になるのだった。

「なるほど‥ 夢の世界の利点は、自分の思う様に、物を変えられるか‥」

そう言って、彼女の方を睨んだ青年は、拳のハンマーを振り上げた。

「だが腐っても、ボクシングで勝負を挑んで来る相手に対して、ハンマーで攻撃をする程、俺の心は、落ちぶれてなんかはいねえっ!!」

青年が拳のハンマーを地面に叩きつけると、そのハンマーが砕け散った。


「なあ魔女さんよ。このままボクシングで、試合を続けようじゃないか。
どちらかの心が、完全にノックアウトをするまでよ」

「ああ、構わないぜ。俺はお前が、自分の心に打ち勝てる様になる日まで、何日でもお前の夢の中に現れて、お前の事を、ボッコボコにしてやるよ」

「よく言うぜ。 まだ一度も俺の事を、ダウンさせられていないくせに」

二人はその夜、目が覚めるまで、夢の中で、互いの拳を合わせるのだった。

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