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食品スーパーのM&Aが成功しにくい理由

スーパー大手のブルーゾーンホールディングス(旧ヤオコー)は2025年10月1日、文化堂(東京・品川)とデライトホールディングス(愛知県豊橋市:店名クックマート)をそれぞれ買収すると発表し、流通業界に衝撃が走りました。

クックマートは「DELIGHT!(楽しむ、楽しませる!)」という経営理念のもと、20年連続増収を達成している極めて勢いのあるローカルスーパーです。

食品スーパー業界では、今後も競争の激化、消費者の低価格志向の継続、人件費や原材料費の高騰といった厳しい経営環境が続くと見られます。これらの課題に対応するため、M&Aによる業界再編はさらに加速する見込みです。

ブルーゾーンの川野澄人社長自身が、クックマート(デライトホールディングス)について、「小型の繁盛店づくりを学びたい」と公言しています。ヤオコーはもともと「個店経営」を重視し、現場に裁量を与える社風です。買収後もクックマートの個性を残す方針を掲げており、互いの店長やスタッフが店舗を視察し合うことで、現場レベルでのノウハウの逆輸入や刺激を求めています。

ブルーゾーンはこれまでも「エイヴイ」などの買収先から、自社にはない強みを積極的に取り入れようとしているようです。エイヴイのノウハウを活用して埼玉県を中心に展開するディスカウント業態の新会社「フーコット」を設立し運営しています。新業態「フーコット」は約18億円の純損失(赤字)を計上、未だ成功とまでは言えないですが、今回のクックマートとの交流も、「教える」のではなく「共に学び合う」姿勢が、クックマートの従業員のモチベーションを上げ、シナジー効果を発揮しそうです。

一方で、経営難に陥った地方スーパー(サンマリや本間物産など)を次々と買収し続けた伏見屋グループは、計46店舗をドラッグストア大手「クスリのアオキ」への事業譲渡が行い、スーパーマーケット事業から事実上撤退しました。これまで、伏見屋グループは、M&Aの覇者として知られていましたが、近年は原材料費の高騰や光熱費の増大、物流コストの上昇により、シナジー効果を生まないM&Aでは地方スーパーの再建は困難なことが証明されたのです。

同様に大黒流通チェーン(現・富岡管理)は、人件費の上昇や競合他社との激しい価格競争により、長らく収益が悪化していました。2019年に静岡のタカラ・エムシーが救済する形で買収しましたが、当時の負債総額はグループで約55億円にのぼり、経営を圧迫し続けました。

最終的に、タカラ・エムシー傘下でも抜本的な立て直しが困難と判断され、事実上の「M&Aのやり直し」が行われました。大黒流通チェーンは債務整理のため、2020年に特別清算を開始。2024年〜2025年にかけて、一部事業が株式会社オザムへさらに移管されました。

このように、大黒流通チェーンの事例は、経営難の企業をM&Aで引き受けたものの、「負債の整理」と「現場の収益改善」のスピードが追いつかなかった典型的なケースと言えます。

M&Aにより、①採用と教育、会計処理など管理コストの削減、②IT・物流システムの統合によりバックヤード作業の削減、➂PB導入による収益改善を誰もが期待します。

ところが、企業理念と採用と教育方針が異なる企業同士が無理やり間接業務を一本化すると、売り手(譲渡企業)の従業員は不安になり、モチベーションが低下します。自動発注の採用により、自分で仕入れて自分で売り切る個店主義の楽しみと喜びを失う従業員もいるでしょう。「指示されたことだけやればいい」といったチェーンストアスタイルを押し通そうとすると反発してモチベーションを低下させる従業員も多いのです。

食品スーパーのM&A成功のカギは目先の効率化より売り手(譲渡企業)の従業員のモチベーションアップにあるのです。

シナジー効果とは、単なる効率化ではなく、現場レベルでのノウハウの逆輸入や刺激にあるのです。買い手(譲受企業)が驕り高ぶり、進駐軍のように売り手(譲渡企業)を植民地化するのは最悪です。互いの個性や立場を尊重し、 相手との違いを認め、謙虚にお互いに学び合うこと、それが刺激となって、「何かやれることはないか」「何か真似できることはないか」寝ても覚めても新しい試みに取り組むことでモチベーションが高まるのです。

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