修験の道を行く ー大峯奥駈道 吉野から五番関ー
大峯奥駆道。奈良から和歌山に連なる大峰山脈の稜線を繋いだ、約170キロの道のり。関西ハイカーにはおなじみの役行者が開いた山岳修行のための修験道だ。
とはいえ関西圏以外のハイカーさん達にとっては、役行者と聞いてもピンとこないかもしれない。
山伏といえば、何となく姿が思い浮かぶだろうか。丸いボンボンを首に下げて、手にはほら貝を持ち、頭に小さな黒い帽子的なものを乗せている。いかにも山奥の崖やら滝やらで修行をしてそうだ。
その山伏たちが行っている山での修行、つまり修験道を開いた人こそが役行者。そう、とてもすごい人なのだ!(語彙力の敗北)。本拠地(?)は大峰や葛城山系だけど、関西では結構至るところの山で役行者の痕跡を見かけることがあって、「えっ? ここにも来てたの!?」ってことがよくある。
そんな偉大な役行者が開いた大峯奥駆道。すべてを歩くと通常6泊程度が必要になるし、道中に営業小屋は一軒だけ。水場の少なさ。山深く、簡単にエスケープが出来ない……などなど、まったく気軽に歩けるような道ではない。なんといっても、修行の場なのだ。
そこで、今回は吉野から五番関までの1区間を1泊2日で歩いてみた。日々、煩悩にまみれて生きているのに、修験の道を歩くなんておこがましいんじゃないかと思いつつ、だからこそ無性に歩きたくなるのかもしれない。

6月下旬の金曜日。平日、しかも天気は下り坂ということもあって、朝の吉野駅には誰もいない。駅前のお土産屋さんも当然のように閉まっている。
「まだ8時だしなぁ……」。もちろん、お土産が欲しい訳じゃない。(今からお土産を買ったら、ザックが重くなるだけだ)
「柿の葉寿司……開いてるお店、あるかなぁ……」
柿の葉寿司は保存食なので、炎天下の中、ザックに入れて持ち運ぶ行動食として優秀だ。そして何より、葉っぱでくるまれている外見がすごく旅情を盛り上げてくれる。コンビニのおにぎりとは一線を画す風情だ。(あっ、コンビニおにぎりの名誉のために書いておくけど、近所の山に行くときはコンビニおにぎりが最高の行動食だよー)
吉野は桜の時期になると、山一面に薄桃色の花が咲き乱れる、千本桜で有名だ。観光客もたくさん訪れるから、奥千本と呼ばれる金峯神社周辺までは舗装路になっている。観光客向けのお土産屋さんや茶屋、修験者向けの白装束や小物なんかを扱うお店が立ち並ぶ。そして、そこには柿の葉寿司の店もたくさんある。ただ、どの店も扉は堅く閉ざされていた。
「もう柿の葉寿司は手に入れられないかもしれない……」
そんな絶望感に苛まれながら、吉野の奥へ奥へと歩みを進める。すると……

ん? あ、あ、開いてるー--!
やっと開いているお店を見つけて、念願の柿の葉寿司を手に入れることが出来た。よかった、これで歩く気力が持ちそうだ。

無事に保存食を手に入れて、ほっとしてまた歩き出す。奥千本までようやく半分弱くらい。前方に見上げるくらい大きな寺院の屋根が見えた。吸い寄せられるように参拝をする。修験道の総本山、金峯山寺だ。時の流れを感じさせる褪せた木材。この重厚さは時を重ねないと生まれない。そしてここから、和歌山の熊野本宮大社まで、長く険しい道が続いているのだと思うと胸が熱くなる。1000年以上の間に、いったいどれだけの人がその道を歩んだのだろう。
歩き始めて2時間が過ぎたころ。ようやく上千本あたりまでやって来た。舗装路の終点、奥千本まではもう一息か……。ここまで来ると、じょじょに店も少なくなり、勾配が急な坂も出てくる。今シーズン初、久しぶりのテン泊装備がずしっとくる。きつい。だいたい一泊二日なのに、ザックの重さが17キロになってるのがおかしいだろ。いや、でも酒と水は減らせないから仕方ないよ……とか、脳内会議が繰り広げられる。結局、結論はいつも出ないけど。
広場があったから、ザックを下ろして柿の葉寿司を食べてみた。食べごろは今日の夜か明日の朝って言われたけど、優しい酸味が疲れた身体にしみこむ。あぁ、おいしい。柿の葉寿司、買えてほんとに良かったー。なかったら、ここで撤退してたかもしれない。まじで。

吉野駅をスタートして約4時間。ようやく金峯神社がある奥千本についた。目の前にはなかなかキツそうな坂道が続き、その入口には鳥居がある。そこには「修行門」と書かれている。なるほど。どうやらここから修行だぞ! 心して歩けよってことみたいだ……。(えっ、今までもじゅうぶん修行並みにきつかったよ?)。
こうして私は修行の門をくぐり、山の奥深くへと歩みを進めていくのだった。
っと、今回は一話で終わるはずだったけど、想定外に長くなっちゃったので、次回に続きまーす((*ΦωΦ)੭ꠥ⁾⁾ もっとコンパクトに書けるようになりたい……_| ̄|○

