銀河戦士ギャラクシオン∞インフィニティR第8話 ― 風を止める者 ―
天竜川の河川敷は、朝の光に満ちていた。
広い空。
遠州の空っ風が、草を揺らしている。
カイトは一人、堤防の上に立っていた。
変身はしない。
ただ、立っている。
「……ここか」
空気が、わずかに重い。
川の流れは穏やかだが、
上空の一点だけ、風が回っていない。
止まっている。
ピコルが隣に現れる。
「分かるかい?
ここは“裂け目”が開く場所じゃない」
「じゃあ、何だ」
「風が、拒まれている」
その瞬間、堤防の向こうに人影が立った。
黒い外套。
だが前回よりはっきりしている。
顔は若い。
普通の人間に見える。
「また来たな、祈りの器」
カイトは静かに答える。
「器じゃない。俺は人間だ」
男は小さく笑った。
「人間だから問題なんだ」
風が、さらに止まる。
草が動かない。
川面が、わずかに歪む。
「世界は、非効率だ。
風は荒れ、心は揺れ、選択は不完全だ」
男は手をかざす。
空気が固定される。
「だから整える。
揺らぎを排除する。
祈りではなく、設計で」
ピコルが低く言う。
「彼は“整序側”だ。
均衡ではなく、管理を選んだ」
カイトは川を見る。
流れは止まっていない。
だが、空気が固い。
「風を止めるのか」
「止める。
乱れは誤差だ。
誤差は消すべきだ」
その言葉で、カイトは理解した。
裂け目は侵略ではない。
世界を“固定”するための接続点。
祈りは揺らぎ。
整序は固定。
思想の違いだ。
カイトは一歩、前に出る。
変身しない。
ただ、立つ。
風が、わずかに戻る。
男の目が細まる。
「なぜ変身しない」
「今は必要ない」
カイトは言う。
「世界は揺れていい。
揺れるから、人は選べる」
空っ風が、堤防を吹き抜ける。
男の周囲の固定が、わずかに崩れる。
「選択は無駄だ」
「無駄じゃない」
カイトは、静かに言った。
「ルーナが怖いまま立った。
それは無駄じゃない」
沈黙。
川の流れが音を取り戻す。
男はしばらく風を見つめ、
やがて手を下ろした。
「……今回は観測だ」
空気の固定が解ける。
風が一気に流れた。
草が揺れ、空が広がる。
「祈りは、不安定だ。
だが、面白い」
男は消えた。
裂け目は開かない。
ただ、空が残る。
ピコルが言う。
「世界は、二つの理屈で動いている。
揺らぐ側と、固定する側」
カイトは堤防に立ったまま、空を見上げた。
風は止まっていない。
それでいい。
フィクションの断り書き
本作はフィクションであり、登場人物・団体・出来事はすべて架空のものです。
©ChatGPT & 宇都宮幸宏
