見出し画像

小説  🕊浦島真奈美の事件簿 第1章 第1話


 

第1話 静かな朝

カーテンの隙間から、やわらかな光が差していた。
浦島真奈美は湯をわかし、カップに注ぎ込む。
一日の始まり――刑事にとっては、いつも不意にやってくる。

警察無線が鳴った。
「浜松南警察署より、河川敷で倒れている女性を発見との通報」

真奈美は静かにカップを置き、上着を羽織った。
署の玄関を出ると、朝の空気は湿っていた。
天竜川の流れが、遠くで低く唸っている。


現場には、制服警官が二人。
規制線の向こうに、ブルーシートが敷かれていた。
その脇で、ひとりの男が肩を落として座っている。

「第一発見者です」
若い警官が小声で言った。

浦島は頷き、男の前にしゃがんだ。
「通報してくれてありがとう。名前を聞かせてもらえる?」

「田嶋……浩介です」
「どうしてここに?」
「ジョギングです。毎朝走ってて……」

声は落ち着いている。
けれど、どこか練習したような響きがあった。

「走っていたコース、いつも同じ?」
「はい。川沿いを回ってます」

浦島は男の足元を見た。
靴底の泥が、川の砂とは少し違う色をしていた。


河川敷の草の上には、一枚の紙片。
水に濡れ、文字がかすれている。
「……香水の匂い」
浦島はつぶやいた。

現場の空気がわずかに甘い。
朝の冷気の中に、人工的な香りが残っていた。

その瞬間、風が吹いた。
ブルーシートの端が、はらりと揺れる。
真奈美は顔を上げた。
――静かな朝は、もう終わった。


※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
物語の中で描かれる警察活動や手順は、あくまで創作上の表現です。

©ChatGPT & 宇都宮幸宏


いいなと思ったら応援しよう!