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日記|クラロワの「浪人スサノオ」は文化盗用なのか?

みなさんはクラッシュ・ロワイヤルというゲームをご存じだろうか?

クラッシュ・ロワイヤル、通称クラロワは、フィンランドのSupercellという会社が配信している、タワーディフェンスゲームだ。簡単に言うと、いろんなキャラクターを使って1対1で戦い、相手の拠点を破壊できたら勝ち、というゲームである。
僕もたまに友達とやっている。やっている人にしか伝わらないと思うが、よく使うデッキは迫撃砲とスケラだ。

つい先日、クラロワに新しいキャラが追加された。僕がよく見るクラロワYouTuberがそのことについて紹介している動画をあげていた。
どれどれ。三度笠を目深に被り、剣士風の和装に身を包んでおり、2本の日本刀を両手に持っている。海外ゲームでよく見るザ・和風キャラという感じの風貌をしているキャラだ。
そこで、キャラの名前をチェックする。「浪人スサノオ」
うん?そこで違和感を抱いた。

スサノオって日本神話の神様だよな?でも浪人って、流れ者の剣士みたいな意味じゃなかったっけ?それってだいぶ解釈不一致じゃないか?

さらに次の日、クラロワ友達に会うと、彼はこんなことを言ってきた。
「クラロワの新キャラ見た?あれ、文化盗用だろ。日本神話に対するリスペクトを明らかに欠いていると思うね。」
なるほど、文化盗用か。たしかに言われてみれば、そんな気もしてくる。うーん、でも少し言い過ぎな気もするな。

そこで、クラロワの「浪人スサノオ」が本当に文化盗用にあたると言えるのかどうかを、日本神話から考えていこうと思う。

文化盗用ってなに?

ここで、前提として共有しておきたいのが、神話に登場する神をゲームなど創作物のモチーフにすること自体を文化盗用だ!と否定したいわけではない。大事なのは、その使い方にリスペクトがあるかどうかだ。

文化盗用とは、簡単に言うと、ある文化の大切な要素を、その背景や意味を十分に理解せず、自分たちの都合で使ってしまうことだ。つまり、異文化の要素を借りてくること自体ではなく、その利用方法に敬意があるかどうかが問題になってくるのだ。

例えば、アメリカ先住民が頭につけている羽根飾りを思い浮かべてほしい。彼らの羽根飾りには、部族内での地位や功績、儀礼的意味があると言われている。これを、アメリカ先住民のルーツを持たない者が、おしゃれのために着用すると、文化盗用にあたる可能性がある。

一方で、海外の観光客が京都や浅草で着物の試着体験をしている場面。ここで、着物という文化にある背景や正しい着付け、所作などに敬意を持って着ている場合、文化盗用ではない。

それでは、「浪人スサノオ」はどうだろうか?

「浪人スサノオ」は文化盗用なの?

「浪人スサノオ」が文化盗用なのかどうか、判断するにあたってまず、言葉の定義と背景を明確にしていこう。

浪人ってなに?

まずは、「浪人」という言葉の定義から確認しよう。コトバンクによると、以下の定義があるらしい。

古代、本籍地を離れ、他国を流浪している者。浮浪人。
(「牢人」とも書く)中世・近世、主家を自ら去ったり、あるいは失ったりした武士。江戸時代には幕府の大名取りつぶし政策などにより著しく増加し、政治・社会問題となった。浪士。
入学試験や入社試験に不合格となり、入学や就職ができないでいる人。また、職を失って、きまった職のない人。「一年浪人して志望校を目ざす」

今回の文脈でいう「浪人」は、「浪人スサノオ」の見た目的に、おそらく1つ目や2つ目の定義だろう。簡単にまとめると、職を失って放浪している剣士ということになる。
具体例を挙げるなら、『るろうに剣心』の緋村剣心だろう。笠をかぶり、刀を持ち、各地をさすらう孤独な剣客のイメージだ。公式にも剣心は「流浪人」だと説明されている。
つまり現代の創作における「浪人」とは、歴史上の身分としての浪人というより、「所属を持たず旅をする剣士」というロマン化された記号になっているのだ。

スサノオってどんな神なの?

次に、スサノオという神について説明する。
國學院大學「古典文化学」事業によると、正式名称は「建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと)」。国生み・神生みに関わる伊邪那岐神(イザナギ)の子であり、最も尊い神々である「三貴子」のうちの一柱である。
つまり、めちゃくちゃ偉い神なのだ。

また、スサノオはかの有名な八俣遠呂智(やまたのおろち)を倒したとして有名でもある。頭が8つある大蛇を酒で酔わせて倒し、その尾の中から三種の神器の一つ「草那芸之大刀(くさなぎのたち)」を見つけた、という逸話は有名である。

ここで、重要になってくる背景が、スサノオが神々の国から追放された神だという神話だ。國學院大學「古典文化学」事業によると、以下の通りである。

伊耶那岐神からは海原の統治を命じられたが、国を一向に治めず、母のいる根之堅州国へ行くことを願って泣きわめき、災いを引き起こしたため、伊耶那岐神の怒りに触れて追放された。

https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/shinmei/takehayasusanoonomikoto/

この、父神に追放され、神々の世界を離れるという背景には、たしかに「浪人」的な流浪の要素を見出せなくもない。
たしかに、「追放された存在」としてのスサノオの解釈は成立する。だからこそ、問題なのは「浪人」のうちの「流浪」の要素ではなく、「侍」の要素だと思う。実際には神なのに、ただの侍、つまりは人間として扱っているのが、スサノオという存在を矮小化しているように感じるのだ。

「浪人スサノオ」はどういうキャラ?

最後に改めて「浪人スサノオ」というキャラを見ていこう。「浪人スサノオ」について、公式サイトでは以下のように説明されている。

Ronin is a Legendary swordsman who likes to keep things up close and personal. Every few seconds, he reflects a melee attack back at his opponent, dealing more damage than he would've taken.

Melee enemies got nothing on him.

https://supercell.com/en/games/clashroyale/blog/release-notes/new-season-honor-and-exile/

A forest wanderer whose swordsmanship is unmatched.

https://supercell.com/en/games/clashroyale/blog/release-notes/merge-tactics-season-10/

何点か気になったところを指摘する。
まず、名前が「Ronin」であること。日本語版では「浪人スサノオ」になっているのにたいして、英語版では完全にただの「浪人剣士」として扱っているようだ。
次に、「Legendary swordsman」という説明。直訳すると「伝説の剣士」である。スサノオは剣を使って戦うし、剣士なのだろうか?少なくとも、神であるという情報がすっかり抜け落ちているように思える。
もっとも気になったのが「A forest wanderer whose swordsmanship is unmatched.」という部分。「森をさまよう者。その剣技に並ぶものはいない。」という意味であるが、ここでもやはり「神」ではなく「剣士」であることが強調されている。何より、森をさまよっているという設定はどこから出てきたんだ?僕が探した限りだと、元となったエピソードは見当たらなかった

さらに細かい点を言えば、スサノオと剣を結びつけるなら、本来まず想起されるべきは、八俣遠呂智の尾から現れた草那芸之大刀だろう。にもかかわらず、浪人スサノオが持っているのは、いかにも時代劇的な二本の日本刀である。ここにも、神話上のスサノオというより、「和風の二刀流剣士」として処理されている印象を受ける。

まとめ

ここまでしっかり調べると、「浪人」と「スサノオ」には、追放の神話というわずかな共通点は見られるものの、「浪人スサノオ」というキャラは、日本神話の神をただの流浪の剣士に矮小化して落とし込んでいるものだといえる。
公式説明やゲーム内でのキャラ設定などを見ても、スサノオが日本神話の三貴子の一柱であり、高天原追放・八俣遠呂智退治・草那芸之大刀献上などの神話的文脈を持つ存在であることを理解しているようには思えない。もし単に「日本っぽい名前」「刀を持った強キャラ」程度の認識で使っているなら、文脈理解はかなり浅いと思った。

正直、僕はクラロワというゲーム自体は好きなため、このようなオリエンタリズム的な浅い考えで日本神話の神を消費したSupercellに対しては少し残念な思いがある。
神話というものはその文化を生きる人々にとって特に重要になる要素である上、仮にもゲームという形で商業利用するのである以上、より慎重な文脈理解と敬意を持って扱うべきだったのではないかと思う。

追放された神としてのスサノオではなく、海外向けにわかりやすい“和風の流浪剣士”として消費されたスサノオ。そこに僕は、文化盗用とまでは言い切れないとしても、少なくとも日本神話への敬意の薄さを感じてしまうのだ。

参照したサイト

追記
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