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我が人生にカレーあり|スパイスの効いたBGMを添えて【短編小説】

今日は伊豆までだな。ランチは修善寺の富士山が眺められるラーメン屋にするか。

オレはようやく慣れてきた4トントラックのハンドルを握りながら、ひとりつぶやいてにんまりした。

赤星ラーメンに寄るのはこれで三度目だ。国道沿いで駐車スペースが広いからトラックが多い。

トラックドライバー初心者としては駐めやすいのがなにより嬉しい。コツンと当ててしまったら大変だ。相手への対応はもちろん、警察への連絡、会社への報告などが必要となる。運送スケジュールが大幅に狂ってしまい、会社からは大目玉を食らって、下手したら給料をカットされかねない。だから無事故を願って安心な道を最優先で選ぶ。

ただ、オレがここを気に入ったのにはもう一つの理由がある。むしろそっちの方が勝ると言ってもいいだろう。

カウンター席とテーブル席あわせて100人ぐらいは入る店構えだ。黒光りする床や天井から昭和の貫禄を感じる。

昼時はドライバーを中心にサラリーマンの客がほとんどではないだろうか。

誰しも休憩時間にさっさと食事を済ませたいから、もくもくとラーメンをすすって帰るので回転が早い。


木製の重厚な引き戸を開けて入ると、流れに合せて券売機の前に立った。前に並ぶ人たちはみんな名物のラーメン餃子定食を押しているようだ。

オレは違う。速やかにカツカレー大盛りを選ぶ。

赤星ラーメンのカツカレーが有名だからというわけではない。

初めてこの店に来たとき、豚骨スープの香りに紛れて漂ってきたカレーの匂いを嗅ぎ分けた。

「これはうまいヤツやろ」

そう直感して食べてみたところドンピシャリ正解だった。それ以来ハマったというわけだ。


「お待たせしました~。カツカレー大盛りですね」

カウンターに座っていると、ほんの3分でおばちゃんが持ってきた。

オレは慌てすぎて口の中をやけどしないようにフーフーしながら落ち着いて食べた。

客の流れはせわしないが、カウンターでしかも一人で食べているからさほど気にならない。

味わいながらふと高校生時代を思い出した。思えばあの頃からしょっちゅうカレーを食べていたような気がする。


夏の砂浜

「あれ、山岸君。山岸十吾君じゃない。ここでバイトしてるんだ」

ずっと俯いて顔が見えないようにしたつもりだが、やっぱり気づかれた。

同じクラスの前田閏まえだうるう。こんなところで憧れのマドンナにバッタリ会いたくなかった。どうせならデートで待ち合わせておしゃれなカフェあたりで語り合うほうがロマンティックじゃないか。

「ああ、前田さん。こんなところで会うなんて奇遇だね」

「えっと、焼きそば2つください。いつまで?」

「あ、はい。焼きそば2つですね。すぐできます」

「もうっ、いつまでってのは、山岸君がいつまでバイトするかって聞いたのよ」

「あ、そっか。一応夏休みいっぱいやるつもりだけど」

「そうなんだ、じゃあまた会えるね。って、普段は学校で毎日顔合わせてるけどね」

オレがアルバイトしている海の家でのことだった。

前田さんはそれからもたびたび泳ぎに来ては海の家に顔を出してくれた。

高校で見るときと違い、水着姿の前田さんが目の前に立っている。正確にはTシャツを着ているが、制服に比べてとにかく露出が多い。

はじめこそ炭火の煤で顔を汚して汗だくになった姿を見せてくなかったが、眩しい水着姿を拝めるならばそれもいい。そう思えてきた。

「ねえ、山岸君。休憩時間とかあるの」

三回目に来たとき、彼女がそう尋ねた。

「ああ、前もって言えば1時間ぐらいは抜けられるよ」

これってデートの誘いだよな。オレは答えながらドキドキした。

「じゃあさ、カレー食べに行こうよ。ちょっと歩いたところに水着でも入れる素敵なカフェがあるの。そこのカレーが美味しいんだ」

「おう。いいよ。いいね。オレもカレー好き」

どぎまぎしながら答えた。

バイトリーダーに相談すると二日後の土曜日に午後から休みをもらえた。


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