《竹とんぼに》木下牧子×岸田衿子 ― 「花のかず」に込められた、飛び立つ心と見送る心
作曲:木下牧子/作詞:岸田衿子
はじめに
《花のかず》は、木下牧子さんが詩人・岸田衿子さんの詩に作曲した全10曲ほどからなる歌曲集で、
現在ではソロ歌唱だけでなく、**合唱版(女声・混声)**としても愛されています。
中でも《竹とんぼに》は、その透明な詩と音楽が印象的で、
ソロリサイタルでも合唱ステージでも人気の高い一曲です。
✦ 詩の世界
なるべく 高く なるべく 遠くって いいきかせたけれど もし ほんとに 行ってしまったら どうしよう
この短いフレーズの中に、「行きたい」気持ちと「行ってほしくない」気持ちが同時に存在していますね。
それが、この曲の大きな魅力だと思います。
竹とんぼは、飛び立つときの希望と、飛び去ってしまう寂しさをどちらも象徴しているのでしょう。
私は最初、自分が挑戦するときの心の揺れ――
「行きたい」「でも怖い」「もう戻れないかもしれない」――そんな気持ちを重ねていました。
けれど、よく考えるとこれは“送り出す側”の視点でも歌える曲。
たとえば、親が子を見送るように。
教師が教え子を見守るように。
「行っておいで。でも、ここを忘れないでね」と。
聴く人の立場によって、感じ方が変化する曲だと思われます。
音楽的な たけとんぼの美しさ
前奏のピアノから、竹とんぼが風を受けてくるくる回りながら空へ舞い上がる姿が浮かびます。
ほんの数小節で、空の広がりと上昇感を描く木下牧子さんの天才的なこと!!!
軽やかな中にも、どこか切ない空気が漂うのも沁みます。
私が感じる「たけとんぼ」
歌うたびに、心の中で“誰か”が浮かぶのです。
過去の自分、これから旅立つ人、希望に満ちている人の横顔。
飛び立つことも、見送ることも、どちらも勇気がいりますね。
おわりに
この歌を聴くと、飛んで、離れていきそうなたけとんぼと共に、たしかにある“つながり”をも感じます。
飛び立っても、離れても、心はちゃんと残っている。
だからこそ――「ここを忘れないで」。
故郷を思う自分の気持ちとも重なります。

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