政治に対する雑感16
高市内閣高支持率の出発
高市早苗が自民党総裁に選出されるも、公明党の政権離脱、玉木野党首班構想で総理の座がお預けとなった。結局、玉木野党首班構想が失敗に終わり、自民党と日本維新の会との閣外協力合意をするというすったもんだの挙句、高市は総理に選出された。こうした政局に対する倦怠感と安定感を求める声が大きかったのだろうか。高市内閣の初回内閣支持率は、各社世論調査で軒並み高く出た。(※1)高市自身の右派言動からか、-自称を含め?-左右の「イデオロジスト」がいろいろとSNS上を中心に発言をしている様子をよく目にする。
舛添要一は高市の右派路線をパフォーマンスを止めて組織票に頼ったためとしている。(※2)組織票に頼ること、小沢一郎、亀井静香、安倍晋三と政治姿勢がまったく異なる政治家を次々変えていくことで権力を得ていく姿勢を、政治の機を見るに敏とするか、理念よりもその時の勢力に迎合しているだけとみるかは、見方によって評価が分かれるところではある。
高市の政治スタンスがどういう理由に基づくものなのかは本人のみが知るところである。ただ、理由がどうであれ、進歩・左派の政党支持者の人たちが高市の政治スタンスに対して懸念をし、動向を注視したいという気持ちになっているだろうことはうかがい知ることができる。以上のような人々にとっては、三春充希が2025年10月30日 19:42にnoteに投稿をした「高市自民は選挙に強いか?」は、ある種の清涼剤なのかもしれない。ただ、三春の見解通りに物事が運ぶであろうか。三春の当該記事について思うところを述べたい。
野党勢力が高市に対抗できる力はあるのか
高市内閣は高支持率は無意味か
三春は、歴代支持率と比較をして、高市内閣支持率が高いことを語ることに意味がない理由として、田中内閣の回答率が80~90%、小泉内閣の回答率が60~70%、現在は40~50%前後であり、妥当な解釈ができないこと、現在の世論調査で導入されたスマートフォンによる調査が導入され始めた、2016年以降の菅義偉政権以降でなければ比較する意味がないとしている。(※3)その上で、発足時に内閣支持率の高い傾向が出るのは有権者が選ばれた首相や閣僚をあまり知らないからであり、時間の経過によって、首相、閣僚の政治状況を知ることにより支持率が逆転するのは、細川内閣を例外に一般的な傾向であり、内閣発足時に与党は勢いづき、政権末期には野党が勢いづくとしている。
ただ、比較検討可能な内閣支持率との関係でも、石破、岸田と比較した際に高いことが事実であることは否めない。その意味では、内閣支持率の傾向が高く出るのが有権者が首相、閣僚を知らないこと、即ち政治実績をきちんと見極めることができないからという理由が適切であるかは疑問である。
次に、NHKの世論調査によると、小泉内閣は2001年の発足時の圧倒的な高支持率後、当時の外務大臣田中真紀子罷免を機に2002年2月に内閣支持率が下落するも、基本的には支持率が不支持率を上回っている状態のときのほうが多く、2004年8月から政権末期の2006年9月までは支持率が不支持率を下回ってはいない。(※4)もちろん、政権末期に野党が倒閣、解散の好機と勢いづいたという話も聞かない。三春は半年、1年経過した時点で高い水準にある政権を「強い政権」としているが、小泉政権はその典型例と言えるだろう。小泉政権の経緯を考察すると、政権末期になると首相の勢いがなくなるというのは結果論の要素も強く、一概に内閣が退陣するのは首相の力が弱まったからとは言えない部分がある。
公明党の政権離脱は野党に有利と言えるか
三春は公明党の政権離脱によって、公明党、即ち創価学会による選挙運動の依存度が減ることのリスク、組織票の低下、自民党支持率が回復しているかが不確実であることから解散をすることは博打であるとしている。以上のリスク、参議院では過半数確保ができていない状況を高市も考慮をしたのか、現時点での早期解散はしない旨を表明している。(※5)
ただし、これは不意を衝く形での解散が行われないことを意味するものではない。党内での選挙準備が整い、政党支持率が発足時以上に上がり傾向に見えた場合には、党内基盤を確保する意味でも解散に踏み切る可能性がないとまでは言い切れない。三春の見解では、高市は自分の身の回りをイエスマンで固めているとしているが、政調会長に小林鷹之、外務大臣に茂木敏充、防衛大臣に小泉進次郎、総務大臣に林芳正というメンバーを入れていることからすると、むしろ高市自身の党内基盤が弱いがゆえに、過去の総裁選に出馬した候補者も含め、党内有力者とのバランスを考慮した人事であると考える。であるがゆえに、政党支持率、内閣支持率が回復基調であれば、タイミングを図って自身の政権基盤を強化するために解散で民意を問い、選挙に勝つことで政権の正当性を確立する選択肢は十分あり得る。
公明党の政権離脱についても、自民党自身が選挙の際に動員できる人員が皆無になったわけではない。都道府県議会をはじめとした地方議会の自民党議員、自民党を支持する参議院比例区選出の職能団体などによる動員は、立憲民主党、国民民主党が基盤としている旧総評系組合、旧同盟系組合をしのいでいると言っていいだろう。また、公明党の政権離脱が立憲民主党、日本共産党などへの公明党支持者の支持、立憲民主党、日本共産党などへの選挙運動も含めた選挙協力につながるという保証があるわけではない。加えて、自治体レベルでは自民党、公明党が共闘関係にあることが多いことからしても公明党支持者が自民党候補への投票を止めるとは限らない。(※6)
野党は支持されていないことの本質的な意味を理解すべき
高市政権の高支持率に進歩・左派の野党を支持する人たちはイラついていることだろう。だが、「地方政治に対する雑感」でも触れた通り、そもそも野党は政治の基本である地方政治において保守勢力と本気で対峙をする姿勢が見られないのである。また、地域の会合などでも保守系の地方政治家はよく目にするが、野党系の地方政治家を目にすることはまずない。労働組合に頼っていればいいと考えていることや、地域と対話する手法がわからないという、そもそも根本的なことができていないのである。中央政治で政権を取ることで地方政治も何とかしようというのであれば、それは地方政治への侮辱以外の何物でもない。
足もとの政治を疎かにする野党勢力という現実。(※7)それが自民党と対峙する勢力としての支持なし層が多いことの一要因なのではないかと考えずにはいられない。

私、宴は終わったがは、皆様の叱咤激励なくしてコラム・エッセーはないと考えています。どうかよろしくご支援のほどお願い申し上げます。
脚注
(※1)
高市内閣の支持率68% 2001年以降3番目の高さ 朝日世論調査 [高市早苗首相 自民党総裁]:朝日新聞
高市内閣の支持率71%、歴代5位の高さ…読売世論調査 : 読売新聞
高市内閣支持64%、共同調査 萩生田氏の要職不適切70%:東京新聞デジタル
(※2)
高市早苗氏が“右寄り”になった理由「若い時はこんなに保守的じゃなかった」舛添要一氏が私見
(※3) 時事通信は個別面接方式による調査法を続けているが、その調査方法では歴代2位の記録となっている。
高市内閣支持63.8% 小泉内閣に次ぐ発足時2位―時事世論調査:時事ドットコム
(※4)
(※5)
高市首相、衆院解散「考えている暇はない」-政策前に進めること重要 - Bloomberg
(※6) 三春は、2024年の総選挙における公明党票の動向を踏まえた選挙結果のシュミレーションを「公明、離脱――「99年体制」崩壊後の自民党落選危険度シミュレーション」、「公明、離脱――公明票の量・離脱度・行き先を考慮した議席シミュレーション」で行っている。
ただ、2024年総選挙時の自民党得票数は、小選挙区で2086万7762票と2021年総選挙の同2762万6157票、2017年総選挙の同2650万722票、2014年総選挙の同2546万1448票,、2012年総選挙の同2564万3309票と比較した際に、圧倒的に少ない票数である。以上を考えると、シミュレーションを行うのであれば、少なくとも2012年総選挙以降の自民党の得票数を踏まえてのものでなければ、意味がないと考える。
また、本文との関連で言えば、引用をした三春充希のnote記事の内容は、公明党支持者の投票は、系列化された管理組織を通じて動員されることで投票をする層を主体としたもの、とする社会動員論と言える。だが、2020年の大阪都構想における住民投票において、公明党は都構想に賛成の立場を表明しているが、出口調査では公明党支持者の賛否は拮抗をしていることを考えると、そんなに単純な話ではないこともうかがい知ることができる。
大阪都構想 公明支持層で賛否伯仲 無党派層は6割「反対」 出口調査 | 毎日新聞
「大阪都構想」自民支持層は賛成41%、公明は賛否拮抗…無党派層は反対60% : 読売新聞
(※7) 三春充希は、「【特集】第26回参院選(2022年)れいわ新選組――政権交代に必要なこと」で
投票率に関する最も駄目な部類の議論として、選挙に行かない人たち全てが政治に失望した層なのではない、選挙に行かない人たちは現状追認である、とするものが挙げられます。けれどこれは、そうした人々が変わり得るという視点が欠落したものなのです。今の日本の崩れつつある状況を少し見つめてみるならば、そうした人たちが変わりうる余地はあり、そのために何が足りないのかと考えることになるはずです。人々が変わり得るという期待があるからこそ、政治を変えようとする取り組みは続けられる
と述べている。少なくとも現状の地方政治においては、地方自治体における投票率が国政選挙よりも低い傾向にあり、地方政治においても既存の野党勢力は低迷し、新興勢力である参政党が勢力を拡大している状況にある。既存の野党勢力は、棄権をする有権者や、既存の政治に対する不満を持つ層からの支持を獲得するべく、与党に代わる新たなオルタナティブを形成したり、働きかけをしていないとみなされていることの表れと言えるだろう。
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