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《深堀り》(後編)米国安保 vs 中国製ASIC:ビットコインマイニングが「電力兵器」と化す日、Canaan (CAN) の生存戦略

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Bitmainを北米で利用していると考えられる企業のリストアップ、その影響の範囲について

北米(アメリカ・カナダ)のビットコインマイニング業界において、中国のハードウェア大手Bitmain(ビットメイン) 製のASIC(Antminerシリーズ)は、依然として圧倒的な市場シェアを占めています。多くの主要上場企業が、採掘効率(J/TH)を追求するために最新の「S21」シリーズや「T21」シリーズを大量に導入しています。

以下に、Bitmain製機器を大規模に利用している主要な上場企業、その契約規模、および顕在化しうるリスクについて詳細をまとめます。

1. Bitmain製機器を主要機材とする北米マイニング企業リスト

これら企業は、保有フリート(機器群)の大部分または重要な拡張部分をBitmain製品に依存しており、Bitmainの供給能力や価格設定の影響を直接的に受けます。

各社の依存度や特徴を以下の図にまとめました。

Riot Platforms (RIOT) について:かつてはS19シリーズを使用していましたが、テキサス州Corsicana新拠点向けに競合のMicroBT社(WhatsMiner)と大規模契約を結んでいるため、相対的にBitmainへの新規依存度は低下しています。

2. 具体的な契約規模と導入事例(2023年〜2024年の動向)

各社が公開しているプレスリリースおよびSECへの提出書類(Form 8-K/10-Q)に基づく、検証可能な主要契約データです。


① CleanSpark (CLSK) の「S21」大量導入

CleanSparkは、半減期を見据えて最も攻撃的にBitmain製品を購入しました。

  • 契約時期: 2024年1月および8月

  • 規模: 最大160,000台のAntminer S21購入枠を確保。

  • 詳細:

    • ベース契約: 60,000台(約1億9320万ドル、単価 約$16.10/TH)。

    • コールオプション: 追加100,000台を固定価格で購入できる権利を行使し、急速な拡張を実現。

    • 最新動向 (2024年8月): さらに26,000台の「S21 XP Immersion(液浸冷却モデル)」を約1億6770万ドルで購入。これは業界で最も早いS21 XPの導入事例の一つです。


② Cipher Mining (CIFR) の「T21」大量発注とアップグレード

Cipherは、強気相場入り前の安値で機材を確保しつつ、柔軟に契約を変更する戦略を取りました。

  • 契約時期: 2023年12月(その後2024年に修正)

  • 初期契約: 37,396台のAntminer T21を単価 $14.00/TH という非常に有利な価格で契約。

  • 変更契約 (2024年): 新規サイト「Black Pearl」向けの一部オプションを行使する際、T21よりも効率の高いS21 XP(空冷)へアップグレードする契約修正を実施しました(単価は約$21.4/THへ上昇しますが、効率性を優先)。


③ Bitfarms (BITF) と Iris Energy (IREN) の「T21不具合」への対応

Bitmain依存のリスク(品質管理)が顕在化した重要な事例です。

  • 事象: 2024年夏頃、納入された「Antminer T21」の一部バッチにおいて、期待通りのハッシュレートが出ない、または過熱する不具合が報告されました。

  • Bitfarmsの対応: 2024年11月、未納入分のT21注文(約1万9000台)を、より高性能なS21 ProへアップグレードすることでBitmainと合意しました(差額約3,320万ドルを追加支払い)。

  • Iris Energyの対応: 同様にT21の「バッチ生産問題」の影響を受けましたが、Bitmain側が欠陥ユニットを交換する対応を取りました。その後、Irisは信頼を取り戻すかのように2024年8月にS21 XPを大量発注(10.5 EH/s分)しています。


④ Core Scientific (CORZ) とBitmainの資本提携

他社とは異なり、サプライヤー以上の「資本関係」が存在します。

  • 経緯: 2023年9月、Core Scientificの破産再建中に契約締結。

  • 内容: Bitmainが5,390万ドル相当の株式を引き受ける代わりに、27,000台のAntminer S19j XPを供給。

  • 意義: この契約は、Bitmainにとっても北米の主要顧客を失わないための戦略的な救済措置であり、両社の結びつきの強さを示しています。

3. Bitmain依存による地政学的・規制リスクとその影響範囲

北米企業が中国企業であるBitmainに深く依存している現状は、「単一障害点(Single Point of Failure)」になり得るリスクを孕んでいます。

A. 米国の関税政策(Tariff Risk)

  • シナリオ: トランプ次期政権等が、対中関税を現在の25%からさらに引き上げる(60%〜100%など)措置を取った場合。

  • 影響:

    • マイニング機器の調達コストが激増し、ROI(投資対効果)が悪化します。

    • CleanSparkのように「固定価格オプション」を持っている企業でも、関税分は購入者負担となる契約が一般的であるため、財務計画が狂う可能性があります。

B. サプライチェーンの分断(Supply Chain Disruption)

  • 構造: Bitmainのチップは台湾のTSMCで製造され、中国本土または東南アジアで組み立てられます。

  • シナリオ: 台湾有事や米中間の半導体輸出規制の厳格化により、TSMCからBitmainへのチップ供給が停止した場合。

  • 影響:

    • 新規機材の供給が完全にストップします。

    • S21などの最新機種への更新が不可能になり、旧世代機を使い続ける北米勢は、国際的なハッシュレート競争で劣後することになります。

C. ファームウェアとセキュリティ懸念

  • 懸念: マイニング機器のファームウェアに、遠隔操作可能なバックドアが含まれている可能性が長年議論されています。

  • 影響: 極端なシナリオでは、国家間の対立が激化した際、特定の地域のマイナーが一斉にオフラインにされたり、ハッシュレートが攻撃に利用されたりする懸念(理論上)があります。これにより、米国政府が「中国製マイニング機器の重要インフラへの接続禁止」を打ち出す規制リスクもゼロではありません。

結論:業界への影響のまとめ

調査の結果、CleanSpark、Cipher Mining、Core Scientific を筆頭に、北米の大手マイニング企業の競争力は、現時点では「いかにBitmainから最新鋭機(S21等)を安く、大量に調達できるか」 に依存しています。

Bitmain製品は性能面(J/TH)でMicroBT社などの競合をリードしていますが、この「Bitmain一強」の状態は、米中対立という地政学リスクに対して業界全体を脆弱にしています。もし関税強化やサプライチェーン寸断が発生した場合、これらの企業の拡張計画は即座に凍結され、株価およびビットコインネットワークのハッシュレート分布に多大な影響を与えることになります。


(注:本記事は企業分析および地政学的リスクの解説を目的としており、特定の有価証券の売買を推奨するものではありません。)

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