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#秋の創作活動 ウーリー①「整理する毎日」【ウーリーと黒い獣たち】



「お気に入りの清楚時計の音も、

 いつしか低音になってしもたな〜」


勇者に選ばれてからの私は、

毎日の眠りが浅くなっている。

まだ、

あのメウボーシを口いっぱいに

いれられた時にできた、

口角の傷も治りきっていないままだ。

何より、

朝から聴こえるデカい喋り声が、

さらに私の眠りの質を悪くするのだ。

最近は全く清楚さが欠けてしまっている

会話の内容や喋り声。

そう、

妻のカイサーと、

雑貨屋のボーチャの喋り声だ。

「勇者やのに行きたくないとか言うて

 ゴリラらしくないよな!」

「て言うたら、誰がゴリラやねんとか

 言うに決まってるわ!ガハハハハ〜」

だとか、

「最近、私の話に傾きの角度が少ないねんっ

 こんなに清楚にしたってんのに」

だとか、

「乙女座はな、整理したがって

 なかなか行動せえへんって言うしな〜」

だとか。

もっと清らかな会話ができないだろうか。

もっと言えば、

私の話をわざわざ家の前でしないでほしい。

聴こえないとでも思っているのだろうか。



「そうじゃないんですよ〜」と

ポツリと独り言をいいながら、

重たい体をゆっくりと起こし、

テーブルに用意されていた

カイサーから薦められて

いつも飲まされている「なんとか水」を

1人飲み干す。



昔は違った。

育ての親であるラブ子母さんに

会ってほしい人がいると言われて、

初めてカイサーに出会ったとき、

遠くの方から汗をキラキラさせながら

ランニングしてきた姿が

今でも忘れられないでいる。

いきなりの

「ごっつあんですっ!」

の挨拶には正直驚いたが、

その後、

会話をしながら、

体の火照りを取るかのように

手をうちわ代わりにパタパタさせる姿を見て、

少々ぎこちなさを感じながらも

その清楚ぶりに、

キュンとしたことを覚えている。

それから、

カイサーが毎日私の家の前を通り、

話しかけてくれるのが嬉しかった。

その後も、

初めての人には人見知りをするところや、

私にだけは、ラブ子母さんの話や

ボーチャから聴いたことなど、

たくさん話してくれるのも嬉しかった。

私も興奮してツッコみ、

とびきり傾いた。

話を聴き過ぎて眠れない夜もあった。

「もしかして‥、俺のこと‥」

そう思うようになったら、

どんどん私の心がヒートアップしていった。

結婚したいと思ったのは、

私の方からだった。

決め手は、

笑うカイサーの表情はもちろん、

笑顔と共にたまに見える、

歯に付いた青のりの存在だった。

カイサーは

「やだアタピ、

 お昼に食べたパスタのパセリ、

 恥ずかしい〜〜〜い」

と言っていたが、

あれは間違いなく、

ボーチャの店のたこ焼きの青のりだと思った。

それでもよかった。

清楚のイメージとのギャップに

完全に心を奪われてしまったのだった。


そしてめでたく

恋愛結婚をはたし、

裕福ではないが楽しい結婚生活が始まった。

しばらくしたある日のこと。

朝起きたら、

カイサーが嬉しそうに

赤ちゃんを抱いていた。

突然だったが、

「あんた、リトルソウがうまれたで〜〜」

と、笑顔で言ってきた。

いきなりすぎて戸惑いがあったが、

「コーノトーリが運んできたんやで」

という清楚な言葉を信じた。

こんなチェリーな私でも、

父親になれて自信になった。



それからは精力的に

日雇いの仕事をこなし、

生活もさらに忙しくなっていったが、

それでも毎日が清楚だった。

たまに、

ラブ子母さんとカイサーの不可解な会話や、

カイサーが隠し持っている

「ビリー・セイソ・キャンプ」

というDVDの存在、

謎の壺の請求書など、

見つけては、

不思議に感じることはあったが、

自分の中で整理を繰り返し、

そして何より

時々見せるカイサーの清楚な笑顔を見るたびに、

全てを受け止めることができたのだった。



ええねん。

誰もわかってくれなくてもええねん。

勇者になることが怖いんやないねん。

私が1番心配してるのは、

カイサーやリトル・ソウと離れることや。

壺のローンが大金だなんてことは

もうどうでもええねん。

カイサーやリトル・ソウが

とにかく笑顔で過ごしてほしいし、

そんな笑顔を毎日見ていたいんや。

私が家をしばらく空ければ、

ターリキー語を話せないリトルソウが、

膝カックンできる相手がおらんようになる。

代わりの人がおったとしても、

かなり膝がやられてしまうから。

何より、

カックンの度合いがすごいときの笑顔。

リトル・ソウのその愛くるしい笑顔をみると、

痛み止めのボールタレンが

必要なレベルの膝の痛みなんかよりも

嬉しさの方がかってしまうんや。

私が1度旅に出ると、

しばらくは戻ってこられないだろう。

だから、

あまりにもみんなが、 

「ゴーゴーゴリラっ!」

と背中を押しまくってくるのが、

ほんまにつらいんや。

私が1番大切なのは、

家族なんや。




明日はカイサーが勝手に予約をすすめた

日雇いサービスの連中がくる日。

いよいよ旅に出ることになる。

これから、

私の心の栄養を

何から得ることができるのだろうか。


「セイソー、セイソー、セイソー」

清楚時計が

また低い音をたてた。


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