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#ドキメキを記事にしよう「突然その時は来た」

「あんな急展開、初めてでした」

授業開始早々、

教室の自席に座っていた私は、

突然、

重大な場面を迎えていた。

あれは中学2年生の春の、

国語の授業の開始直前のことだった。

私の右隣だったM本さんという女の子が、

何やら落ち着かずに机やカバンの中を

何度も見返していた。

「え〜、教科書ない〜」

ため息まじりの小さな声。

私は少し彼女のことが心配になった。


チャイムが鳴ると同時に、

強面の国語の先生が教室に入ってきた。

起立の号令がかかる。

それでも必死にガサガサと音をたてながら

国語の本を探していたM本さんだったが、

教壇からその様子に気付いた先生に

「おい、M本、何をしとるんや」

と声をかけられた。

M本さんは戸惑いながら答えた。

「あ、あの、教科書がみつからなくて‥」

みんなの視線がM本さんに向かった。

全員が着席したと同時に、

「そしたら、隣のやつに見せてもらえ」

先生はそう言って黒板の方を向き、

白いチョークで板書を始めた。


私の2つ右隣にいて、

私とM本さんを挟む関係性のN田くんが、

M本さんをチラチラ見つつ、

背筋がピンと伸びていくのがわかった。

ここから私たちのドラマが始まった。

クラス全体が一瞬で

E本さんが、

左隣の私か、

右隣のN田くんか、

どちらを選ぶのかということに、

熱い視線を注ぎ出したのだ。

クラスの雰囲気が一気に緊迫しだした。

「ドキドキ、ドキドキ」

その雰囲気にのみ込まれた私は、

もう前方を見つめることしか出来なくなった。

一方、

N田くんも、

落ち着かない様子で、

教科書をペラペラとめくり出した。

もう授業がスタートする。

M本さんは、

私かN田さんのどちらかを

すぐに選ばないといけない。

そんな一瞬の出来事が、

私には少し長い時間のように感じた。

頭の中で、

「もし選ばれたら、

ヨイショッ、ヨイショッって言いながら

机をピッタリくっつけよう」

「片手で共に教科書を支え合うということは、

共に暮らし始めるということでもある」

「もしかして、

E本さんは私の初めての人なのかもしれない」

そんなことが頭をよぎると、

私の心がトキメキだし、

ますます緊張感が高まった。

もう、

ドキドキが止まらなくなった。

とうとう私は、

腹を決めた。


そんなことを考えていると、

隣で「ガガガッ」と音がしたことに気付き、

私は我に返ってハッとなった。


急いで右側をみると、

すでに

N田君と教科書を持って寄り添う、

E本さんの後ろ姿が見えた。

「ん…」

私は一瞬にして、

その戦いに敗れてしまっていたのだった。



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