#秋の創作活動 ウーリー②「ヒヤトラーズとの出会い」【ウーリーと黒い獣たち】
「セイソー、セイソー、セイソー」
目を開けなくても、
清楚時計ではなく、
カイサーの声だということはわかる。
今日はいよいよ勇者としての
旅立ちの日。
寝不足ではあったが、
カイサーの声で起こされたことに
いつもよりもムッとしなかった。
私が洗面所で顔を洗うタイミングで
いつも膝カックンを狙ってくる
リトル・ソウにも
膝裏を捧げる気持ちでいた。
いつものように朝食を済ませ、
準備されていた服に着替えた。
着替えてみて思ったのだが、
今ターリキィ王国で流行っている
人気バンドのZ´Bのイバナのような
短いジーンズ生地のズボンだったのに
少々違和感を感じたが、
これが勇者の出立ちなのだなと
受け止めた。
思ったより自分は、
勇者としての使命感を感じているようだ。
待ち合わせの時間に近づいていたため、
長屋の前に出てみた。
日雇いの方々と待ち合わせには少々時間がある。
しばらく家を空けるため、
一応世話になっているボーチャに挨拶しようと
雑貨屋の方へ歩いて行こうとした瞬間、
雑貨屋の中から
大きな荷物を持ったボーチャが
勢いよく現れた。
「おっ、勇者のお出ましやなっ‥
アッハッハ〜ッ、あんた何そのズボン!
イタッ、ちょっとあんた笑いすぎて、
ドアに膝をぶつけてもうたやんかっ」。
私が喋り返す隙間もないくらい、
続けて喋りを続けてくるボーチャ。
「まあそんなんどうでもいいわ、
ちょっとウーリーはん、
これ全部持っていきっ」。
大きな袋の中には、
疲れが飛ぶグミや波動が整う波DO水、
なんでも入れれる便利な壺と、
歩くの楽々ポンピングシューズ。
困った時のたこ焼き器パーティグッズや
公共料金がお得になるチェリーバッチ。
人生に迷っても道には迷わない地図等が
入っている。
「大丈夫大丈夫。
お金はとりあえずええから。
はよ持ってき」
とボーチャは言った。
長旅になるかもしれないのに、
この大荷物をどうやって持っていくんだと
少しオロオロしていると、
遠くの方から
真っ黒の制服らしきものを身に纏った男が
こちらの方に歩いてくるのが目に入った。
大荷物を引きずるように持ちながら、
待ち合わせの家の前まで歩み寄った。
「おはようございます〜、シーホです〜」
少し驚いた表情に見えたが、
その男が話す言葉は
流暢なターリキィ語だった。
「おはようございます、ウーリーです」
私は深く頭を下げた。
その声を聞いて家の中から
カイサーとリトル・ソウも玄関先に出てきた。
「ご、ごっっつつあんでえすっ!」
初めての人には、
やたら大きい声で挨拶をするカイサーに
苦笑いしながらも、
「あ、はい、
ごっつあんです言うんですかね〜」
とシーホという男は柔軟に対応していた。
話によると、
ターリキィ日雇い紹介所ヒヤトラーから来る
労働者は3人。
待ち合わせの時間からは
5分を過ぎようとしていた。
すると遠くの方から駆け足で
こちらの方に向かって来る
2人のモフモフ黒装束の男達が
接近する姿が見えた。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ、
す、すんません、ハァッ、
ゲホッ、ゲホッ、ンハァッ」
2人は全速力で駆け寄ってきたため
言葉にならない様子だった。
先に来ていたブラックシーホが言った。
「お前たち、同じ日雇いで働く者として
お金をキチンと頂くわけやのに、
さすがに遅刻はあかんやろ〜」
経験値の高さを感じる。
ハァハァ言いながら、
2人の男のうちの1人が話し出した。
「ハァッ、ハァッ、す、すいません、
私、ブラックゼリと、あ申します。
どうしてもカレーが食べたくなってですね、
お宅にお電話を差し上げたんですが、
つながらなくて‥、迷ったんですけど
ダッシュで食べてから来ましてんっ」
理由に思わずズコッけてしまう。
するともう1人の男も話し出した。
「ハァッ、ハァッ、あ、あの〜、
私はブラックオネタといいます。
5分前には近所についてたんですが、
まだ時間ある思って、5分間チャレンジ
いうものをしてたんです。そしたら
珍しく5分間いけてしまいまして‥」
「なんのはなしですか?」
と思わず言いそうになったが、
これまたズッコケた。
なんだか先が思いやられそうだが、
この出会いに、
不思議と少し楽しい気持ちも感じていた。
これがのちに、
黒い獣たちと呼ばれた
ヒヤトラーズとの
初めての出会いだった。
<あなたも一緒に、創作っちゃおう!笑>
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