父のいない父の日
昨年の父の日は、一緒に鰻を食べた。
来年もまた、一緒にお祝いできると思っていた。
でも、父はもういない。
離婚したときは心配をかけてしまった。
そんな私に父は、
「頑張れよ」
と励ましてくれた。
親不孝をしたな。
これからは親孝行をしなきゃ。
そう思っていた矢先、父は病に倒れ、闘病の末、今年4月7日に亡くなった。
父の日がやってきた。
去年、嬉しそうに鰻を食べていた父の姿を思い出す。
父が亡くなってから、以前より実家へ行くことが増えた。
母は弟と暮らしている。
まだ寂しいはずなのに、
「まあまあね。毎日、お父さんに話しかけているよ」
と笑う。
9月に納骨を予定しているため、まだ父がそばにいるような気持ちがあるらしい。
そんな母を見ていると少し安心する。
77歳になる母は、70代とは思えないほど姿勢がよく若々しい。
「見て。最近、合う洗顔を見つけてね。なんだか肌の感じが良くて嬉しいの」
そう言って楽しそうに話してくれる。
毎朝1時間ストレッチをし、父が好きだった数独の本を買って解いているそうだ。
「もう少ししたら、洋裁もまたやろうと思ってるよ」
母も少しずつ前を向き、自分の時間を楽しめるようになってきた。
私も同じだ。
離婚してから、自分の時間を持つようになった。
新しいことに挑戦したり、自分の好きなことを見つけたり。
「私たち似てるね。自己満足だねー」
そう言って母と笑い合う。
ふと遺影を見る。
そんな私たちの話を、父が黙って聞いている気がした。
遺影の写真は、10年ほど前に母が父を誘って写真館で撮ったものだ。
ふっくらとしていて、優しそうで、少しかっこいい。
今ごろ何をしているのだろう。
今年の父の日は、何をあげようか。
そう考えて、父の好きだったものを買いに行った。
柿ピー。
殻付き落花生。
フライビーンズ。
そして、お酒。
そういえば油菓子も好きだったなと思い出した。
父の日。
実家へ行き、父の遺影の前に並べる。
「お父さん、好きなものを持ってきたよ」
そう声をかけた。
写真の父は、いつものように微笑んでいる。
「油菓子がなかなか見つからなかったよ。また見つけたら持ってくるね」
そう言いながら、しばらく父の前に座った。
お父さん。
今までずっとありがとう。
そして、これからも見守っていてね。
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