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今を生きている父へ

父がリハビリ病院に転院して、1ヶ月が経った。

ある日、入院病棟に勤務している友達からLINEが届いた。

「お父さん、今日、自分でご飯食べられたよ〜
 嬉しかったからLINEしちゃった」

え…?
自分で、食べられた?

「すごい!ありがとう!」
思わず、すぐに返信した。

すくいにくいものは、少し介助が必要だけれど、
それでも、自分で食べられるようになったという。

生死をさまよっていた父が、
自分で食事をとれるようになった。

スタッフのみなさんのおかげ。
そして、何より――
お父さん、頑張ったね。

胸が、じんと熱くなった。

正直、リハビリがどこまで進むのかはわからない。
自分で起きたり、トイレに行ったりするのは、
きっと難しいだろう。

それでも、救ってもらった命。
少しでも、自分でできることが増えていけばいい。

それは、もしかしたら
私のエゴなのかもしれない。

父は、自分の過去がわからない。
けれど、今を生きているのは、確かなんだ。



面会に行った日。

相変わらず、父は私のことはわかっていない。
けれど、自分の名前は、何度も呼ばれるうちに
わかるようになったみたいだ。

「お父さん、自分でご飯食べられたんだって?
 すごいじゃん」

そう声をかけると、
父は、うれしそうにうなづいた。

失語のため、はっきりした言葉は聞き取れないけれど、
食事について文句を言いたそうな顔をしたり、
不満そうになったり、
時には、おどけた表情を見せながら、
一生懸命に話をしてくれた。

何を言っているのかは、よくわからなかった。
それでも私は、「うん、うん」とうなずく。

会話にはなっていない。
でも――

元気だった頃の父と、
たわいもない話をしていた記憶が、
ふっとよみがえった。

生きていてくれて、ありがとう。

今は、それだけで十分。

父シリーズを読んでくださり、いつもありがとうございます。

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