犯罪者に人権はあるかと聞いた投稿の話
#知恵袋ストーリー #犯罪者の人権 #被害者遺族 #相談 #人権問題
ある日、知恵袋にこんな投稿があった。
「犯罪者に人権は必要ですか? 本気で聞いています」
投稿者は40代の女性。数年前、娘が通り魔に襲われた。命は助かったが、後遺症が残った。
犯人は逮捕され、裁判が始まった。
その裁判の中で、弁護士がこう言ったという。
「被告人にも人権があります。更生の可能性を考慮してください」
その瞬間、手が震えた、と書いてあった。
傍聴席に座っていた。娘はリハビリ中で来られなかった。自分だけがそこにいた。
加害者は、黙秘権を使った。名前は報道で伏せられた。弁護士が何人もついた。
一方、娘の名前と顔写真は事件直後にニュースで流れた。学校名も出た。近所の人にインタビューまでされた。
守られているのは、どちらなのか。
投稿にはこう続いていた。
「娘の人権は誰が守ってくれたんですか」
ベストアンサーに選ばれた回答は、法律の専門家と思われる人のものだった。
「お気持ちはわかります。しかし、被疑者・被告人の権利は、冤罪を防ぐために必要なものです。歴史的に、国家権力による不当な拘束や拷問があったため、憲法でこれらの権利が保障されています」
続けてこう書いてあった。
「加害者の人権と被害者の人権は、対立するものではなく、どちらも守られるべきものです」
正しい回答だった。法律的には、おそらく何の間違いもない。
でも投稿者の返信はこうだった。
「頭ではわかります。でも娘は今も夜中に叫んで起きます。それでも『あの人にも人権がある』と思えるようになる日は来ますか」
ベストアンサーの人は、もう返信していなかった。
この投稿を読んだあと、憲法を開いてみた。
日本の憲法には、犯罪の被疑者・被告人の権利に関する条文が10か条ある。被害者の権利に関する条文はゼロ。犯罪被害者等基本法ができたのは2005年。つまり2005年まで、被害者は法的に「保護の対象」として明確に位置づけられていなかった。
加害者の権利が憲法で保障されてから、被害者の権利が法律に明文化されるまで、58年かかっている。
58年。
投稿者の娘が生まれるよりずっと前から、加害者は守られていた。娘が傷ついた後も、制度が追いついていなかった。
別の投稿も見つけた。
「加害者が出所してきました。近所に住んでいるようです。怖くて外に出られません。どこに相談すればいいですか」
30代の男性。数年前に暴行を受けた。犯人は服役し、出所した。再犯率のデータでは、出所者の5年以内再入率は34%。3人に1人が再び罪を犯す。
「引っ越したほうがいいですか」と書いてあった。
加害者が「社会復帰」する。それは制度として正しいのかもしれない。しかし、被害者が「社会から逃げる」ことになっている。
この構図は、おかしくないだろうか。
最初の投稿に戻る。
投稿者の女性は、最後にこう書いていた。
「犯罪者の人権が必要な理由は調べました。冤罪のこと、国家権力の暴走を防ぐこと、わかります。でも、それを被害者の前で言える人がどれだけいますか。言えないことを制度にしているのが、今の日本だと思います」
この投稿には87件の回答がついていた。賛否は割れていた。「感情論だ」と切り捨てる回答もあった。「法治国家として当然」という回答もあった。
でも、もっとも「そう思う」が多かった回答は、こうだった。
「私も被害者の家族です。あなたの気持ちはわかります。答えは出ません。でも、この問いを投げかけたことに意味があると思います」
答えが出ない問いだった。
あの母親は、今も娘のリハビリに付き添っている。
あの男性は、引っ越したかもしれない。
「犯罪者に人権は必要ですか」という問い。
あなたなら、どう答えますか。
