明るかったんじゃない。明るくなるしかなかった。
今は、
「明るいですね。」
とか、
「コミュニケーション得意そうですね。」
と言ってもらえることがある。
でも、
昔からそうだったわけじゃない。
小学生の頃の私は、
どちらかというと目立たない子だった。
友達の輪の中にはいたけれど、
率先して話すタイプではなかったし、
みんなが話しているのを、
端っこで笑いながら聞いていることの方が多かった。
ただ、勉強はなぜか好きな方で、
一人黙々と勉強していた。
100点が取れると、
自分も嬉しいし、
家族も喜んでくれる。
それが嬉しくて、
また頑張ろうと思えた。
漢字のミニテストで100点を取ると、
黒板の上に札が一枚増えていく。
その札が少しずつ積み重なって、
天井まで続いていく。
私は、その札を一つずつ増やしていくのも楽しみだった。
そんなある日。
クラスに転校生がやってきた。
他県から来た女の子で、
見た目も目立っていて、
あっという間にクラスの人気者になった。
私は、
「明るい子だな。」
そんなふうに思っていた。
友達のグループも違ったので、
普段はほとんど話すことはなかった。
ただ、
出席番号が前後だったこともあり、
行事で並ぶときなどに、
話しかけられれば話す。
それくらいの関係だった。
ある時から、
その子は、
「自分の札が一番がいい。」
とよく言うようになった。
私が100点を取ると、
その子も100点を取る。
私の札を追いかけるように、
100点を取り続けていた。
私はというと、
その子に勝ちたいわけではなかった。
100点を取ると、
自分も嬉しい。
家族も喜んでくれる。
だから100点を取りたい。
ただ、それだけだった。
ある日。
先生がその子を本読みに当てた。
その子は、
他県から来たこともあって、
本を読むときのイントネーションがきれいで、
先生によく褒められていた。
すると突然、
その子が私を指さして言った。
「りりぃは漢字テスト一位なんだから、
本読みも上手でしょ?
りりぃに読んでもらったらいいんじゃない?」
教室のみんなの視線が、
一気に私に集まった。
私は、
人前で話すのが得意じゃなかった。
大きな声を出すのも苦手。
ましてや、
その子みたいに、
きれいなイントネーションで読む自信なんてなかった。
言われるままに読み始めた。
でも、
イントネーションを気にすればするほど、
何が正しいのか分からなくなる。
震える自分の声が耳に入って、
余計に緊張した。
なんとか読み終えた。
それからというもの、
なるべくその子の近くに行かないようにしていた。
でも、
「出席番号順に並んで。」
そう言われるたびに、
その子の前に並ばなければいけない。
その時間だけは、
毎回少し緊張していたのを今でも覚えている。
今思えば、
子ども同士ではよくあることだったのかもしれない。
でも、
当時の私には、
すごく大きな出来事だった。
その時、
子どもながらに思った。
「このままの自分だとなめられる。」
このままじゃダメだ。
自分が変わらなきゃダメだ。
そう思った。
中学生になって、
私は決めた。
「私は明るい人間なんだ。」
そう自分に言い聞かせた。
明るく振る舞う。
自分から話しかける。
最初は正直、
かなり無理をしていた。
まるで、
自分じゃない誰かを演じているようだった。
「やっぱり無理かも。」
そう思うことも何度もあった。
でも、
「このままじゃダメだ。」
そう自分に言い聞かせた。
今思えば、
この方法が正しかったのかは分からない。
でも、
あの頃の私は必死だった。
気づかないうちに、
あの子の姿が、
ずっと頭の中に残っていた。
それでも、
続けているうちに、
少しずつできるようになっていった。
不思議と、
それ以降は、
あからさまに嫌な思いをすることも減っていった。
「えっ……
これだけで周りって変わるんだ……」
当時は本気でそう思った。
私は、
明るかったんじゃない。
明るくなるしかなかった。
あの頃は、
それしか考えていなかった。
今は、
「あの時の自分、よく頑張ったね。」
と少しだけ思える。
あの時の私が頑張ってくれたから、
今の私がいる。
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