イラストから空想した世界を書いて下さい。(ショートショート)春を探しにきた鬼
春の柔らかな日差しが、僕の大きな角を優しく撫でる。
冬の眠りから覚めた山々は、今まさに薄紅色の衣を纏おうとしていた。
一歩踏み出すたびに、足元の枯れ葉の下から小さな春が顔を出している。
僕は、咲き誇る桜に彩られた山々を、大股で歩いていた。
「なんて気持ちいいんだ」
独り言が、澄み渡る空気に溶けていく。
春を探そうと目を凝らせば凝らすほど、芽吹いたばかりの若草色や、道端に揺れる野花の黄色など、色とりどりの景色が僕の瞳を奪っていく。
鬼である僕にとっても、春は特別な、心躍る季節だ。
何しろ、この美しい景色の中で「お花見」ができるのだから。
「さて、お花見では何を食べようかな?」
三色団子に、桜餅。
それとも、とっておきの酒を酌み交わそうか。
想像が膨らむにつれて、強面なはずの僕の口元からは、我慢できずにワクワクとした笑みがこぼれてしまう。
今はまだ、風の中に冬の名残が少しだけ混じっているけれど。
「早く、本格的な春が来ないかなぁ」
僕は鼻歌を口ずさみながら、次の桜の木を目指して、軽やかな足取りで山道を下っていった。

Fin。
※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
