(ショートショート)五月の空色と、可憐な君への成功祈願
「ほんとにいたんだって!」
私は、隣で土をいじっている友達に向かって声を張った。
「ハイハイ、わかったから。それよりこっちの苗、手伝ってよ」
友達は、私の「視える」体質について深く追求することもなく、いつものように軽く受け流して話題を変えた。
大学を卒業して社会人になり、節目の年齢を迎えてもなお、私の日常には時折、招かれざる「客」が紛れ込む。
そんな私を「変わっている子」として遠ざける人も多いけれど、彼女だけは、私の異質さを日常の一部として当たり前に受け入れてくれていた。
私はお気に入りの長靴を履き直し、花壇の作業に取り掛かった。
目の前には、去年の十月に種をまいたネモフィラが、空を映したような澄んだ青色で咲き誇っている。
四月中旬から五月の連休にかけて見頃を迎えるこの花は、今の季節、最も眩しい生命力を放っている。
「……あ」
可憐な青い絨毯に見とれていた私の視界の隅に、土から突き出した白い骨のようなものが映り、心臓が跳ねた。
(もしこれが人間のものだったら)と、最悪の想像をして焦る私に、友達はひょいとそれを覗き込んで笑った。
「落ち着きなよ。あれはただの魚の骨だよ。誰かが肥料代わりにでも埋めたんじゃない?」
その一言で、私の過剰な警戒心はふっと解けていった。
幽霊が見えるからといって、足元のすべてが恐ろしいものであるはずがない。
私たちは、五月の柔らかな日差しの中で和気あいあいとした時間を過ごした。
視界の端で揺れるネモフィラの花びらを見ながら、私は心の中で感謝を捧げる。
ネモフィラの花の花言葉は、「可憐」「どこでも成功」、そして「あなたを許す」。
私の「変わっている」部分を否定せず、いつも可憐な笑顔で許してくれる友達。
そんな大切な友達が、この先の人生のどんな場所へ行っても、大きな成功を収められるように。
私は青い花々に、静かな祈りを込めた。
Fin。
※この小説はフィクションです。
登場するモノや人物は存在しません。
↑この企画に参加しました。
ありがとうございました。
